レビュー

死の運命を回避した「4分間のマリーゴールド」最終回 ドラマが意図せずして伝えた“幸福の裏側”(1/2 ページ)

「彼女は幸運でしたね」。

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 福士蒼汰、菜々緒主演の「4分間のマリーゴールド」。人の「死の運命」が見える救急救命士・みこと(福士蒼汰)と、余命1年とされていた義姉・沙羅(菜々緒)との禁断の愛を描く物語が最終回を迎えた。

 結論から言うと、沙羅は助かった。余命1年とされていた死の運命を回避することができた。多くの人が亡くなったドラマだが、なぜ沙羅だけは助かったのか? 沙羅が助かったことにどんな意味があったのか? そんなことを考えてみたい。

沙羅(菜々緒)とみこと(福士蒼汰)、義理の弟と姉の恋愛は美しく成就した イラスト/まつもとりえこ

花巻さんは愛されていらっしゃるんですね

 9話のラストで、みことと沙羅が乗っている車にダンプカーが突っ込んできた。軽傷だったみことは蘇生を試みるが、沙羅は急性硬膜外血腫で意識不明の重体に陥ってしまう。

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 しかし、昏睡状態の沙羅を支える輪は強固だ。沙羅を最も身近で支えるのは、もちろんみこと。みことを兄弟の廉(桐谷健太)と藍(横浜流星)が支えている。廉はみことをバイクで連れ出して励まし、藍は美味しい料理を作り続けた。母親の理津(麻生祐未)も帰ってきたし、居候の広洋(佐藤隆太)もみことをバックアップする。

 廉が落ち込めば同僚の原田(橋本じゅん)が支え、藍は恋人の琴(鈴木ゆうか)が支えた。橋本じゅんの「廉ちゃん廉ちゃん廉ちゃーん」が聞けなくなるのはちょっと寂しい。

 「花巻さんは愛されていらっしゃるんですね。いろんな方が見舞いに来て」

 沙羅を診察する医師(小市慢太郎)はこう声をかける。横で聞いていたみことは、それを力強く肯定する。

自殺志願の男・林田

 そんな折、救命士の職場に復帰していたみことは、睡眠薬を大量に飲んで自殺を図った林田(薬丸翔)という男を助ける。しかし、マンションの屋上から飛び降りようとする林田をみことが説得する。

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 「理由なんかなくてもいい。生きてください。逃げてもいい。全部捨ててもいいから、ただ生きてください! 自分から命を捨てるなんて、しないでください」

 「死なせてくれよ!」と暴れる林田を取り押さえて、「なんでわかんないんだよ! 生きたいのに死ぬかもしれない命だってあるんだぞ!」と叱責するみこと。

 「命を捨てないでください。生きてください。どうか、生きてください」

 沙羅と林田の境遇は対照的だ。みことをはじめ、家族の深い愛情に支えられている沙羅。一方、林田は都会で孤独に苛まれてきた。彼の部屋にはコンビニの袋が散乱していたが、仕事に疲れた彼は、何度この部屋で味気ない食事をひとりで食べ続けたのだろう? 辛うじて彼の命を救ったのは、心配した母親の一本の電話だった。

なぜ沙羅の命は助かったのか?

 余命1年とされていた誕生日に沙羅は目を覚ます。医師はこう語った。

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 「傷病者が助かる確率は、呼吸が止まってから、どれだけ早く心肺蘇生を始められたかで決まります。彼女は幸運でしたね。あなたが側にいたから」

 「4分間のマリーゴールド」というドラマは、煎じ詰めれば「まわりの人の深い愛情」と「正しい救命処置」さえあれば、死の運命は変えることができる、というお話だった。

 極端な物言いになるが、その人を深く愛する人がまわりにいるほど、人の命は助かる確率は高まる。たとえば、心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な病気を発症しても、家族や配偶者などの愛する人が側にいれば、救命に通報したり、救命処置をしたりことができる。倒れる前に異変に気づくこともあるだろうし、普段から食生活に配慮して予防することもできるだろう。しかし、誰も気が付かなければ、そのまま死ぬ確率が高い。

 無論、愛する人がいても突然死したり事故死したりすることはある。ドラマにも深く愛する者がいるにもかかわらず死んでしまった花嫁や小さな子どもがいた。だが、愛する人と一緒に暮らしている人と孤独に暮らす人を比べれば、前者のほうが助かる確率は明らかに高いはずだ。「4分間」の間に正しい救命処置を行うことができれば、なおのこと確率は上がる。

 沙羅の命が助かったのは、何も主人公だからという理由だけではない。ドラマの中で沙羅は何度も「幸せ」だと繰り返していた。「幸せ」は人の命を助ける(こともある)ということだ。と同時に(ドラマの製作者側は意図していないだろうが)「不幸」は人の命を縮めることもわかってしまった。

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 花巻家の人たちは沙羅のみことの結婚式で幸せの絶頂を味わう。だが、その間にも日本のどこかで不幸な人が死んでいく。真面目な話、毎回ドラマの最後に福士蒼汰による救命講座をつけておいたほうが良かったんじゃないだろうか。

運命の誕生日に沙羅は目を覚ました イラスト/まつもとりえこ
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