福士蒼汰主演の金曜ドラマ「4分間のマリーゴールド」(TBS・夜10時〜)。人の「死の運命」が見える救急救命士と、余命1年の義姉との禁断の愛を描く。
「みこと、お前、沙羅が好きか?」
「……好きだよ」
「そうか。だったら俺は、お前の家族をやめる」
先週放送された第4話の視聴率は6.2%。やっぱり横浜流星くんをもっと出したほうが……。
恋愛をとるか? 家族をとるか?
全体のストーリーの要とも言える第4話の実質的な主人公は、花巻家の長兄・廉(桐谷健太)だった。
すっかりいい雰囲気になったみこと(福士蒼汰)と沙羅(菜々緒)。家の中でも「16時、灯台」と中学生みたいなメールを送ってデートにいそしんでいる。一方の廉は10年間、彼女がいないままだった。
「しょうがねぇじゃん、出会いがねぇもん。しかも、俺、あれじゃん。家長じゃん。あいつらの面倒見ないと」
廉にはかつて千冬(磯山さやか)という恋人がいたが、あまりにも弟妹たちのことを気にしてばかりだった廉に愛想を尽かされて別れてしまっていた。
そんな兄の気持ちなど知るよしもない幸せ絶頂のみことと沙羅は、お祭りデートでついにキス! しかし、廉はそれを目撃してしまう! これは修羅場になるぞ……。
2人のデート現場に踏み込んだ廉は、みことに冒頭の言葉を突きつける。家族の一員として幼少の頃から面倒を見続けていた異母弟に「家族をやめる」と告げたのだ。
廉は自分に隠れて付き合っていた2人に腹を立ててこんなことを言っているわけではない。血がつながっていないのだから恋愛してもおかしくはないと説く親友の広洋(佐藤隆太)に次のように言う。
「もし2人が別れることになったらどうする? お互い傷つけ合って、最悪の終わり方でもしたらどうなる? また元通り、姉ちゃんと弟に戻りましょう、ってなると思うか? 家族に戻れるか? 俺はそうは思えないな」
廉が2人の恋愛を認めないのは、自分、沙羅、みこと、藍(横浜流星)の4人の家族を維持するためだった。「恋愛は日常に対して垂直に立っている」とは中島らもの名言だが、家族であると同時に恋人であり続けることは成り立たない。少なくとも廉はそう考えている。
ぶっきらぼうで男っぽい廉は、2人に別れてほしいと心から願っているが、「別れろ」とは決して言わない。みことの気持ちを確認した廉は「出ていけ」と突き放す。だが、みことは廉にすがって、ついにあのことを言ってしまう。
「来年の9月23日、誕生日、沙羅は死ぬ」
廉がちょっとかわいそう。
現代のホームドラマと「家長」という存在
「俺には責任があるんだよ、家長としての」
責任感のかたまりのような廉が繰り返し言うのが「家長」という言葉だ。もうすっかり耳にすることも少なくなった言葉で、「カチョー」と耳にしても「課長」しか思い浮かばない視聴者も多いと思う。「家長」でググっても、出てくるのはサッカーの家長(いえなが)選手ばかりである。
家長とは、古代ローマからあった「家父長制」の中で、家を取り仕切る存在のこと。「父」とあるように、家長とは男性が務めるものだった。日本では明治時代に法律として制定されたが、戦後に廃止されている。近年では女性を抑圧し、性差別を助長するものとして批判されてきた。宮沢賢治の「家長制度」という詩では、皿を落とした妻を殴る夫(家長)の姿が描かれている。
ウィキペディアで「家父長制」の項目を見ると、「父親が小さな子供のために、よかれと思って子供の意向をあまり聞かずに意思決定すること」とも記されている。まさに廉のことだ。
廉にも迷いはある。先輩警備員の原田(橋本じゅん)に「下のやつらからしたら、押し付けられるのもうっとうしいっていうか」とこぼし、原田は「押し付けりゃいいんだよ、お前、家長だろ?」とザックリしたアドバイスを送る。原田は昭和の男の生き残りだ。
「4分間のマリーゴールド」は「ホームドラマ」としての側面を打ち出していると以前、書いた。昭和の時代のホームドラマには、こうした家長が必ず食卓の真ん中にいた。「サザエさん」の波平さんを想像すればわかりやすい。
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