「自分はゴジラから離れられない運命」 ファンを代表してゴジラに弔辞を読んだ男が語る、“好きでい続けること”の幸せ:オタクの幸せ(3/3 ページ)
ゴジラファンとしての道を切り開いた粕谷さんに“ひとつのことを好きでい続けることの幸せ”についてお話を伺いました。
ゴジラとゴジラファンが歩んだ60年
今回の取材に際して、当初は「2019年で還暦を迎えることから、これまで収集してきたグッズも生前整理として若いファンに譲渡し始めています。これまではなるべくご協力してきたのですが、メディアへの露出も極力お断りしているんです」と話していた粕谷さん。ゴジラファンでもある筆者にとって人生で初めて見た“熱烈なファン”が「ゴジラに対して弔辞を読む粕谷さん」であったことからどうしても取材させていただきたい旨をお話したところ、「これが人生で最後の取材になりそうですね」と快く引き受けてくださいました。
そんな粕谷さんにあらためて、「なぜゴジラは日本人にここまで受け入れられたのか」を聞いてみたところ、あくまでも個人の見解と前置きをしたうえで「海外では“怪獣”というより、単なる『クリーチャー』『巨大生物』として怪獣が扱われることが多いのですが、日本では『大自然の化身』として受け入れてきたことがあると思います。古来より自然万物に神が宿ると考え、それを畏怖し崇拝してきた日本人の性質が“怪獣”への親しみやすさを生んでいるのかもしれませんね」と話してくれました。
また、ファンの間でよく話題にあがる「作品によってゴジラの性格や容姿が異なる」という点について粕谷さんは「65年も時代の荒波を乗り越えて生き続けたキャラクターなのですから、いろいろなゴジラがいて当然です」と語ります。
「『脱皮しない蛇は死ぬ!』といわれるように、良きところは継承して常に進化して生き続けることが大切です。ファンのなかでそれぞれ好き嫌いがあるのはむしろ当然のことです。互いに排他的にならず、最初に出会ったゴジラ、自分の好きなゴジラを大切にできたらいいなと思います」と話し、「過去作として歴史の1ページに埋もれていくよりも姿を変え、進化し続けることははるかに素晴らしいことです。新作が出来るということは、あらためて過去作にもふれてもらえる機会を生み出す重要な手段でもあるのです」と語りました。
また「ゴジラを好きになって良かったことは?」という問いには、「元来引っ込み思案だった私が、公私ともに何百人を前にして司会や講演できるようになったのは、ゴジラ関連のイベントで人前に出たり、テレビの取材を受けた経験があったからだと思っています」と粕谷さん。ゴジラは単なる趣味というだけでなく、仕事にもパワーを与えてくれるような存在だったようです。
現在は30年以上務めた会社から退職し、「大ゴジラ特撮展」等のイベントにもボランティアで協力。10年前から始まったファンメイドの映画上映イベント「ゴジラ誕生祭」(関連記事)や雑誌等にも資料協力していることに加えて、川北監督が設立した会社ドリーム・プラネット・ジャパンではゴジラ関連グッズの企画協力を行っており、最近では粕谷さんが企画した「ティッシュケース」(ゴジラの口からティッシュが取り出せる仕様)と、「スノードーム」(モスラの鱗粉が輝くデザイン)が発売されたばかりです。
ゴジラファンとしての道を振り返った粕谷さんは「川北監督から晩年にゴジライベントのお手伝いの話をいただいたことをきっかけに、『ゴジラに恩返しがしたい』と考えるようになりました。現在はファンの方に喜んでもらえそうな商品企画のお手伝いなどをさせていただいていますが、人生の後半もゴジラに関われて本当に幸せなことだと思っております」とコメント。
また「近年『ちびゴジラ』に人気が出てきたように、ゴジラにはいろいろな未来があると思います」と話し、極論として「えー!? これがゴジラなの!?」と驚くものが登場することも歓迎だといい、「これからどんなゴジラが登場してくるのか、個人的にも楽しみにしていますし、私として一番うれしいのは、将来ゴジラのファンになってくれるような子どもが増えることです。小さい子が『あっ! ゴジラだ!』と言ってくれるのが一番うれしいんです」と語りました。
また取材の最後には、昔は「恋人のような存在」だと思っていたゴジラは、今は「人生の伴侶」といった存在だと話し、「時代や環境は変わりましたが、まずは真剣に好きになること。そして常識を踏まえたうえで『好きだ』と発信することで夢に近づけるのかもしれません」とこの取材一番の笑顔で締めくくりました。
連載:オタクの幸せ
この記事は、ねとらぼとYahoo!ニュースによる共同企画記事です。何が自分の幸せか、何をして喜ぶのか。幸せにはさまざまな形があり、周囲と同じものになるとは限りません。人生に悩む人も多い現代社会で、他人とはちょっと違うところに没頭し、我が道を行く「オタク」な人々に話を聞き、豊かな人生の歩き方を探ります。
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(Kikka)
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