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「スター☆トゥインクルプリキュア」が“最高の子ども向けアニメ”である理由サラリーマン、プリキュアを語る(2/2 ページ)

いやだ! スタプリ、終わらないで!! なんでもするから!

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絶対という価値観を使わない

 また、「スター☆トゥインクルプリキュア」のシリーズ構成、村山功氏は雑誌インタビューの中で「スター☆トゥインクルプリキュア」では「絶対」という言葉を使わないようにした、とも語っています。

初代の「プリキュア」の頃から多様性は一つのテーマでした。「絶対」はテーマと相反するのではないかと。特に今回は「相対」という形での多様性を描くと、明確に方針として打ち出しています。そのため、「絶対」という言葉は使わないようにしようと。「まほプリ」の時には、「あらためて『プリキュア』という作品を、小さな子にも分かるように描いてくれ」という命題があったので、プリキュアの決めゼリフにもよく使われる「絶対」は封じませんでしたが、今回は満を持してという感じです。
(引用:『アニメージュ』2020年1月号増刊「スター☆トゥインクルプリキュア」特別増刊号(徳間書店)P29)

 言われてみればスタプリの作中「絶対」という単語はほぼ聞いたことがありません(※第2話でララが「データは絶対ルン」と言っているとTwitterのフォロワーさんに教えてもらいましたが、これは「絶対」を否定するためのカウンターですね)。

 「絶対」ではなく「相対」を描いたこと、正解は1つじゃない。世界は善と悪の二元論ではない。これもスタプリが子どもに伝えたかった大切なことなのだと思います。

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第8話、ケンネル星では価値観の異なる異星人が描かれた

「想いを1つに」ではなく「想いを重ねる」

 また「個々人の尊重」は、プリキュアの決め技にも表れています。

 プリキュア5人と妖精フワの最大の決め技「プリキュア・スタートゥインクル・イマジネーション」を放つ際、妖精フワは「皆の想い!重ねるフワ~!」と言います。

 「想いを1つに」ではなく「想いを重ねる」。


(中央上)ユニコーン形態となったフワ

 個々人の想いを1つにする、といういわば全体主義的な考えではなくて、個々人を尊重し、その「個々人の想いの集合体がスタプリ最大の決め技」になっているという点も、個人的には「スター☆トゥインクルプリキュア」の大好きな点でもあります。

 皆が同じ方向を向くのじゃなくて、それぞれ違う方向を向いている一つ一つの星が集まって、手をつなぎ星座になる。そんな個々人の集合体こそが「スター☆トゥインクルプリキュア」だったのだと思います。

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子ども向けアニメとして最高だった理由

 「スター☆トゥインクルプリキュア」は、とにかく子ども向けアニメーションとして本当に真摯(しんし)に作られた作品だったと思います(もちろん大人にも最高でしたけどね!)。

 主人公の一人、星奈ひかるは、第1話で自分の部屋から望遠鏡をのぞき星空を見上げ空想にふけります。いわば自分の部屋が「世界の全て」でした。やがて羽衣ララと出会い、世界が広大な宇宙へと広がっていきます。自分の部屋が世界の全てだった女の子が宇宙を旅して、たくさんの価値観の異なる宇宙人と出会い、それと同時に、自分のできること、できないことを知り挫折しながらも、それでも大切な友達のために、自分のために想像力を働かせる。


羽衣ララと出会い、星奈ひかるの世界は広がる

 これはいわば、「スター☆トゥインクルプリキュア」を見ている子どもたちへの鮮烈なメッセージになっているのだと思います。

 小さな子どもたちは、生まれて数年は「家庭」という閉ざされた空間で母親、父親などの家族に庇護(ひご)される「無敵の存在」です。やがて保育園、幼稚園など世界が広がり、友達ができ、そこで初めて他人との違いに触れ自分の弱さを知り、自分が「無敵の存在」ではないことを知るのです。

 そんなとき、どうするの?

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 「スター☆トゥインクルプリキュア」はそれをぐう話的に子どもたちに示唆していたのだと思います。

 まずは、友達になろう。相手のことを理解してみよう。自分のことを伝えてみよう。

 あいさつからはじめよう。

 言葉なんか通じなくたって大丈夫。相手が自分と異なる姿でも大丈夫。

 指と触覚のタッチだけで星奈ひかると羽衣ララは最高の友達になれたでしょ?

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 肌の色の違いなんて気にしないで。天宮えれなみたいに誰にでも笑顔であいさつしてみようよ。だから、肌の色の違う子とも関係なく友達になろうよ。

 幼稚園になじめない? 大丈夫。ユニは1人でも楽しくしていたよ。1人も楽しいよね。それも良いよね。だから、うまく周りになじめないお友達も大切なお友達だよ。


前期エンディング「パペピプ☆ロマンティック」から

 やがて子どもたちの直面する現実が、少しでも良いものになるように。

 イマジネーションにあふれる世界は悪いものじゃない。

 イマジネーションがあるから、未来を想像することができる。

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 「見えない壁を作らないで」

 「想像力から始まる」

 第1話からそれをずっと歌い続けた「スター☆トゥインクルプリキュア」。


前期エンディング「パペピプ☆ロマンティック」から

 子どもたちの幼年期の終わりに、想像力こそが世界を構築しているのだと伝えること。

 世界は誰かが作るものではなく、自分の中にあるイマジネーションでできていること。

 「描こう!ワタシだけのイマジネーション」

 それは未来へ進む子どもたちへの最大級の祝福なのです。

 そのような意味でも「スター☆トゥインクルプリキュア」は最高の子ども向け番組だったのだと僕は思います。

 もう。本当にこんなすっごいアニメを作っていただいたことに感謝です。

 イベントやおもちゃ売り場で楽しそうにしている子どもたちを何人も、何人も見ました。

 映画館やショーで一生懸命プリキュアを応援している子どもたちを何人も、何人も見ました。

 そこにはたっくさんのイマジネーションがあふれていました。

 「スター☆トゥインクルプリキュア」。

 すてきすぎる「キラやば~☆」な作品を、ありがとうございます。

「スター☆トゥインクルプリキュア」
毎週日曜8時30分より
ABC・テレビ朝日系列にて放送中
(C)ABC-A・東映アニメーション

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