インタビュー

「自分の生活に身近なものとして捉えてくれたら」 入江悠監督、オリジナル脚本で挑んだ“日常の延長線上”にある「AI崩壊」(2/2 ページ)

「2020年に制作するにふさわしい題材だと思いました」と入江監督。

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――確かにあの2人の存在は見ている側にとってありがたかったです。ただ、人工知能という題材自体はこれまでも扱われてきたものだと思います。なぜ今、日本で人工知能を題材とした作品を撮られたのでしょうか?

入江監督 多分、人工知能というのは前後10年ぐらいで1番インパクトがある技術的な発展だと思うんですよね。その技術が急速に進歩している今、2020年に向けて制作するのにふさわしい題材だと思いました。

――監督が加えたオリジナリティーはどこですか?

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入江監督 ひとつよかったなと思うのは、子どものころに見ていたハリウッド映画のマネをすると絶対に失敗すると思っていたので、人工知能がターミネーターのような姿をしているわけではなく、僕らの生活の“日常の延長線上”にある身近なものとして描いたことです。そこの日常性みたいなところは、意外とハリウッド映画はあまり描いていないんです。

 近未来ものというと、遠くの世界の話として観客が捉えてしまいがちですが、「AI崩壊」は、僕らの生きている世界のほんの少し先に起こり得ることなんだと実感してもらえると思います。それがオリジナリティーもあって満足しています。


(C)2019映画「AI崩壊」製作委員会

――確かに、人工知能はすでに私たちの生活の一部となっているものもありますし、そう遠くない未来ですよね。ラストシーンでは、「AIは人を幸せにするか。それは……」と続くせりふがありますが、この言葉は撮影直前まで悩まれていたそうですね?

入江監督 どの言葉が桐生として正しいのか、観客に一番届く言葉はなんだろう、と考え続けていたのですが、直前まで結論が出せませんでした。そこで、大沢さんに相談したところ、「編集の時に見えてくることもあると思いますし、その時に選んでいただければいいので、監督が思いつくものを全てやりましょう」と言ってくださって、3パターン撮影しました。

 結果、最後に撮影したせりふを起用したのですが、大沢さんがそのせりふを言ったときに、そこにいた娘役の心ちゃんやスタッフの反応が一番よかったんです。それが桐生の言葉としてスッと心に響く言葉だったんだろうなと思いますね。ただ、人工知能というものは今まさにどんどん進歩しています。人によって捉え方や答え、ビジョンが違うと思うので、いろいろな解釈があっていいと思います。

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(C)2019映画「AI崩壊」製作委員会

――実際、AIはどのように人を幸せにすると思いますか?

入江監督 桐生が開発したのは医療AIなんですが、医療や介護はこれから僕らの社会で課題になってくるので、医療の分野で人を助けてくれるんじゃないですかね。

――人工知能と共存するために、私たち人間はどう寄り添っていくべきでしょうか?

入江監督 この映画を作ったきっかけが、人工知能とはどういうものなのかを知ってもらうきっかけになったらいいなと思ったからなんです。もう少し、自分の生活に身近なものとして捉えてくれたら、人工知能の持つポテンシャルや逆にその怖さを知ってもらえるんじゃないかと。

 使うのは最終的に人間なので、人間がどう人工知能と向き合うかだと思うんです。知らないところで勝手に起きているものではなく、自分ごととして捉えていただけたらいいですね。

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――ありがとうございます。最後に見どころを教えてください。

入江監督 人工知能やAIというのが前面に出てくる作品はありますが、その対比として生身の俳優さんの演技や温かさが映画から伝わるように演出しました。大沢さんが娘の手を握ったように、人のぬくもりというものが映画を通して伝わってくれたらうれしいなと思います。そこで、人って何なのか、家族とは、というところまで観客の皆さんに届いたらうれしいです。


(C)2019映画「AI崩壊」製作委員会

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