連載

意味がわかると怖い話:「親切な老人」(2/2 ページ)

白いキノコには……。

advertisement
前のページへ |       

「親切な老人」解説

 キノコに少し詳しい人であれば、「オイオイ、待てよ」と言いたくなるかもしれませんね。老人が教えてくれた「ユキヨダケ」なんてキノコは存在していません。語り手が持ち帰ったのは、白く卵のような傘(かさ)を持つ特徴から、ドクツルタケやシロタマゴテングタケの類だと思われます。似通った外見を持ち、いずれも致死性の猛毒を持つ株で、「素人は白いキノコには手を出すな」という言葉まであるそうです。彼は信じるべき相手を間違えたようです。

 老人が途中まで語っていた「スギヒラタケは近年毒性が見つかった」「ベニテングダケは毒キノコだが、味はうまいらしい」といった知識は確かなものでした。そんな人が「白いキノコには気をつけろ」という基本的なことを間違え、ありもしないキノコの名前を教えるでしょうか。彼が何者で、何のためにこんなことをしているのかは分かりませんが、語り手をだまそうとしていると考えるのが普通でしょう。「最初は本当のことを話して信頼させる」というのは、詐欺師の初歩のテクニックなのだそうです。

 さて、語り手の写真も加わることになった老人のアルバム。語り手以外の人たちは、いまごろどうなっているのでしょうか……?

advertisement

 最後にキノコの雑学をば。「スーパーマリオ」シリーズに登場する「パワーアップキノコ」のモチーフのひとつは、『不思議の国のアリス』のかじると体が伸び縮みするキノコだと言われています。ルイス・キャロルは、ベニテングダケ中毒のひとつとして報告されていた幻覚症状に着想を得たのだそうで、ベニテングダケの「赤色に白い斑点を持つ傘」というビジュアルは、パワーアップキノコにもよく似ています。もしかすると、「キノコを取って大きくなったマリオがダメージを受けると小さくなる」のは、「キノコを食べて自分が大きくなった幻覚を見ていたのが、痛みで目を覚ました」のかも知れません。

白樺香澄

ライター・編集者。在学中は推理小説研究会「ワセダミステリ・クラブ」に所属。怖がりだけど怖い話は好き。Twitter:@kasumishirakaba

前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

記事ランキング

  1. ハードオフに1650円で売られていた“まさかの掘り出し物”→修理すると…… 見事な復活劇に「相場が上がってしまうw」
  2. 北海道の用水路で“巨大な外来魚”を捕獲→さばいてみると…… 中から出てきた“ヤバすぎる物体”に大興奮「ずっと釘付け」
  3. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら……3年半後、目を疑う結果に大反響 2024年に読まれた植物、家庭菜園記事トップ5
  4. 幼稚園の「名札」を社会人が大量購入→その理由は……斜め上のキュートな活用術に大反響 2024年に読まれた面白記事トップ5
  5. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  6. 【編み物】10年前祖母が教えてくれた編み物、まさかの作品を生み出して…… 二度見必至の完成品に「信じられない」
  7. アレン様、りゅうちぇるさんの“暴露”が「中居正広のことでは?」という説に言及
  8. 「昔はモテた」と話す母→全然信じていない息子だったが…… 当時の“異彩を放つ姿”に驚き「わぁ!」「とても魅力的」【海外】
  9. 目からウロコな“ビニール袋のたたみ方”が100万再生 超便利な“裏技”に「こっちの方が絶対いい」
  10. 「目がバグる」 どこからどう見ても“平面”にしか見えない千葉のビルが話題 投稿者にその後を聞いた