ダウナーに生きる人のためのコスメレビュー ADHDとうつを抱える私の「よりよいコスメの選び方」
たまに楽しくて、たまに負担になる。そんなメイクをどうにかやっていくための方法って?
楽しい営みであり、同時に負担でもある。メイクの意味は人それぞれ異なる現実として存在しています。特に女性は社会的にメイクを要請される場面が少なくありませんが、そこに難しいものを感じている人は少なくないでしょう。
ライターの呉樹直己さんは、ADHDとうつの当事者であり、メイクを趣味として楽しんでいる生活者でもあります。今回ねとらぼでは、呉樹さんのコスメを選ぶ基準や、おすすめのコスメについて寄稿していただきました。生活上の困難とメイクへの関心を併せ持つすべての人が、よりよい落としどころを見つけられますように。
ライター:呉樹直己
20代のADHD。おおむねマジョリティ、ときどきマイノリティ。よりよい生存を目指して試行錯誤している道中。
Twitter:@GJOshpink
ブログ:敏感肌ADHDが生活を試みる
ADHDの私が、コスメを選ぶ基準
こんにちは。呉樹直己と申します。しがないインターネットユーザーで、発達障害の一種であるADHD(注意欠陥・多動性障害)の当事者です。二次障害として鬱(うつ)の症状も持っており、人生をダウナーにサバイブしています。この記事では、そんなわたしが愛用しているアイメイクコスメを一つご紹介したいと思います。
その前に、わたしがコスメを選ぶときの基準を共有しておきます。一口にADHDといっても症状は人それぞれ違うのですが、わたしの場合は、メイクをするときの、ほんのちょっとの手間にも耐えられずに投げ出してしまいたくなるのが困りごとです。ほんのちょっとの手間とは、容器の蓋(ふた)をくるくる回して開けるとか、そういうレベルの話ですね。精神状態が悪いときは、そんな些細なタスクすらこなせなくなってしまうのです。
そこでわたしは、コスメを選ぶとき、自分にとって使いやすい容器・形状であることを最優先して購入するようにしています。いくつか具体例を挙げましょう。
日焼け止め
ポンプ容器の製品を選ぶ。片手ワンプッシュで一定量を取り出すことができるから。
リキッドファンデーション
ポンプ容器またはチューブ容器の製品を選ぶ。蓋を回して開けてスパチュラで取る必要があるジャー容器は苦痛なので選ばない。
フェイスパウダー
固形のプレストパウダーを選ぶ。ルースパウダーは粉が舞い飛んで手指が汚れるので選ばない。
こんな調子で、すべてのコスメを、容器の使いやすさを最重要視して取捨選択しています。色味や成分よりも容器が優先。
ストレスにならないアイメイクアイテム
アイメイクに用いるアイシャドウも同様です。
アイシャドウといえば、粉体を固形に押し固めた形状のものがオーソドックスでしょう。しかし、パウダーのアイシャドウは、チップで取る必要があるのと、粉が多少舞い飛ぶのとで、精神的余裕がないときは使うのが難しい。
そこでわたしは、スティックアイシャドウを愛用しています。スティックアイシャドウは、クリーム状の基材をペン型に固めた形状のコスメで、まぶたに直接線を引くようにして使います。パウダーアイシャドウと比べたときのメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット
- 粉が舞い飛ばない→手指やポーチを汚しにくい
- キャップを外して即片手で塗ることができる→時短になる
- 直感的に描くことができる→不器用でも大丈夫
- スリムで省スペース→朝寝坊しても雑にポーチに詰め込んで家を飛び出すことが可能
デメリット
- パウダーアイシャドウに比べて種類が少ない
- 目のキワだけに細く塗るなど、細部の描き込みには不向きなことがある
- 強く描きすぎると芯が折れる。力加減は慎重に
- 減りが早く、コスパが悪い
パウダーもスティックも一長一短あります。
それでは、ドラッグストアで安価に手に入るスティックアイシャドウを一つご紹介します。
ロレアルパリの、カラーリッシュ ルスティロスモーキー。全長11.5センチ、1600円(税別)。カラーバリエーションは全8色。画像は、104番のトープレディです。
使い方は簡単。まぶたに直接塗りつけるだけです。ぼかさずに太めのアイラインのように線描することも、ぼかしてシャドウとして使うこともできます。写真左がぼかさない状態、右がぼかした状態です。
特長は、本体のお尻の部分にブラシが内蔵されていることです。このブラシを使ってぼかしてもいいし、指のほうが小回りが利くと感じるなら指を使うのもいいでしょう。
なお、メイクをするときは、ウェットティッシュを近くに置いておくと便利です。指が汚れてもいちいち洗いに立たなくていいように、最初からセッティングしておきましょう。卓上でメイクする派なら、乾いたティッシュとウェットティッシュをセットで常備しておくことをおすすめします。もちろん、洗面台でメイクする派で、ワンステップで水道にアクセスできる方は不要ですね。
「自由にメイクする」とは何を意味するのか
この記事を読まれているあなたは、メイクはしますか。お好きですか。
メイクを社会的に推奨されない立場で、個人的にも興味がない方。
メイクを社会的に推奨されない立場で、むしろ偏見の目で見られたりするけれど、チャレンジされている方。
メイクに対する興味と苦手意識が相半ばしている方。
メイクに興味はないけれど、同調圧力に逆らうコストのほうが惜しいから無難にマスターしてしのいでいる方。
さまざまな愛、憎、トラウマ、コンプレックス、無関心。
いろんな方がいらっしゃることでしょう。メイクは、特に女性として生きている人にとっては、抑圧の一形態です。半面、セルフケアの手段として老若男女に拓かれている営みでもあります。わたしたちには、この2つの真理の間を揺れ動きながら、気分次第で楽しんだり、負担に思ったりする権利があります。
わたしも、メイクはおおむね趣味だと思って愛好していますが、抑鬱が酷いときは、外出するにもメイクどころか顔を洗うのがやっとです。ADHDでも鬱でもない人であっても、とても疲れていてなにもかもがおっくうな日はあることでしょう。
困難な作業を、無理にやって心身を壊すという選択肢と、まったくやらないという選択肢。両者の間には、無限のグラデーションがあります。人生、大抵のことはこのグラデーションの間でなんとかもがかなきゃいけない。であれば、自分にとって少しでも楽な位置を見つけ出すスキルが必要です。アイシャドウといえばパウダーというイメージが強いですが、固定観念に囚われず、自分にとってハードルの低いほうを選べばいい。「自由にメイクする」とは、そういうことだとわたしは思います。派手な色や奇抜な色をまとうだけが自由ではないのです。
メイクを行うすべての人が、より快適なメイクライフを送れますように。ほかならぬ自分自身にとって、心地よいと感じる選択肢を選べますように。以上、ロレアルパリのスティックアイシャドウ、ルスティロスモーキーのご紹介でした。
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