3歳児も楽しめたアニメ映画「羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)」 子どもに見てほしい理由を全力で解説する(3/3 ページ)
なぜ子どもに見てほしいのか、全力で解説。
今回の日本語吹き替え版の公開に際して、「ぼくが選ぶ未来」というサブタイトルがつけられたことも、この「子どもの未来への選択」という物語を、作品を届ける側が大切にしているからだろう。エンターテインメントとして楽しめること以上に、子どもにこそ見てほしいと思える最大の理由が、そこにある。
5:素晴らしい日本語吹き替え版
日本語吹き替え版には、シャオヘイ役の花澤香菜、ムゲン役の宮野真守、フーシー役の櫻井孝宏を筆頭に、日本最高峰の人気と実力を併せ持つ豪華声優陣が勢ぞろいしている。それぞれの役へのハマりぶり、そして激しい怒りや複雑な心境を示す演技は、文句のつけようがない。
さらに脇を固めるキャラクターも、松岡禎丞、斉藤壮馬、杉田智和、水瀬いのり、豊崎愛生、大塚芳忠など、それぞれが“主役級”の声優ばかり。本作は少しだけ登場するキャラにも、細かい説明がなくても「きっとこうなんだろうなあ」とその背景にさまざまな想像が及ぶのだが、こうした魅力を声優たちがさらに押し上げてくれている。作中ではアナウンサーの宇垣美里もゲスト出演しており、正直他の声優陣と比べると浮いた印象を受けたが、そのことも人間社会の中で生活している“花の妖精”というキャラには合っていた。
繰り返し伝えてきたように、本作は瞬きするのも惜しいハイスピードアクションが詰め込まれているので、日本語吹き替え版は「字幕を気にせずに集中して見られる」というメリットも大きい。シャオヘイとムゲンという主人公2人のやりとりの尊さも格段に増している。何より、この「子どもが考える物語」を、日本語吹き替え版という選択肢を持って、子どもに見られる機会が生まれたというのは、なんとうれしいことだろうか。
ちなみに、日本で昨年公開された原語版は、字幕に送り仮名の間違いが目立つなど、翻訳そのものに荒削りなところがあった。だがこの日本語吹き替え版はセリフの1つ1つに至るまで違和感がまったくなく、細かいところまで精査されていることがうかがえる。海外アニメ映画史上でも、トップクラスのクオリティーの吹き替えであったと断言しよう。
6:大迫力の音響と、映画館で見てほしい理由
この日本語吹き替え版は音響の素晴らしさも特筆に値する。海上での冒険では水音や風の音などが繊細に聞こえ、バトルシーンでの効果音は大迫力で、それでいてキャラクターのセリフははっきりとしていて聞き取りやすい。それらのさまざまな音に対しての、“静寂”の演出は映画館でこそ強く印象に残る。
その音響監督を手掛けたのは、「ガールズ&パンツァー 劇場版」「スパイダーマン:スパイダーバース」などの岩浪美和。一部の劇場では“絶対領界音域”と銘打たれた、岩浪氏が直接スクリーンに赴き自ら音響を調節した特別音響上映も実施されているので、そちらで見てみるのも良いだろう。
素晴らしい音響も相まって、本作が映画館のスクリーンで堪能するべき作品であるという気持ちはさらに強まる。「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」で映画館の音響、暗い場所で集中して見るという状況を、初めて体験したという子どもはきっと多いことだろう。そんな彼ら彼女らに、最優先で見てほしいのは、やはり「羅小黒戦記」なのだ。
7:「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」と共通すること
繰り返し語ってきたように、「羅小黒戦記」は子どもにこそ見てほしいと願いたくなる要素があまりに多い。また、くしくも「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」と共通する要素もたくさんある。
異なる価値観を持つ者たちの対立、自らの行動の正しさを信じ抜こうとするキャラクターたち、はたまた列車(地下鉄)を舞台にしたアクションシーンもあり、それこそ少年ジャンプ作品らしいアツさまでもが、両者にはあるのだから。
「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」ももちろん素晴らしい作品であり、公開からわずか24日間で観客動員数1500万人、興行収入204億8000万円を超えるという歴史的超大ヒットも心の底から喜ばしい。しかし、だからといって同時期に公開されている「羅小黒戦記」が埋もれてしまうのは、あまりにもったいない。
何より、子どもたちには、映画を見る感動と喜びを、さらに知ってほしいのだ。「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」に続いて「羅小黒戦記」を選べば、それは間違いなく最高の体験になることだろう。11月13日からは座席の揺れなどさまざまな演出が楽しめる4D上映もスタートしている。映画の未来のためにも、ぜひ家族で本作を、映画館でご覧になってほしい。
(ヒナタカ)
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