こんなレア車両があるのか……! 都営地下鉄を走る「赤い電気機関車」の謎(1/2 ページ)
見かけたらこれもラッキー。
新幹線の「ドクターイエロー」や京急の「黄色いデト(電動貨車)」など、日本には、乗れないけれど「見かけたらラッキー」「幸せを運ぶ」などと言われ、人気がある裏方車両がいろいろあります。都営地下鉄にも「赤い電気機関車」があります。
あれ? 普段の浅草線や大江戸線には機関車で引っ張るような客車列車、貨物列車は走っていません。なぜ地下鉄なのに機関車があるのでしょう。
型式はE5000形。2両1組の機関車で2組(4両)が作られ、主に都営浅草線と大江戸線を走っています。車籍のない車両基地内での入換用機関車などを除くと、本線上を走る日本の地下鉄史上初の機関車とのことです。
なぜ地下鉄なのに機関車があるの?
E5000形は何のためにあるのでしょう。答えは「大江戸線の車両」を運ぶためです。
大江戸線の車両基地である木場車両検修場には、車両解体を伴う大規模な点検修理(重要部検査や全般検査)を行う設備がありません(関連記事)。そのため検査のときには汐留付近の連絡線を使って浅草線に入り、浅草線の車両基地・馬込車両検修場まで、E5000形でけん引して運びます。
「でも電車なんだから機関車がなくても自走して行けばいいのでは?」
実はそうもいきません。大江戸線はリニアモーターで走る車両(リニア地下鉄、そういえば!)。線路にリニアモーター駆動のための金属板(リアクションプレート)が敷かれていないと走れません。架空線方式で通常の回転式電気モーター駆動で走る浅草線は、線路幅こそ同じですが大江戸線の車両が自走できるようにはなっていません。
「それならば浅草線の車両で大江戸線まで迎えに行けばいいじゃない」
ところがこれもできません。大江戸線に乗ると「何だかいつもの電車より狭い?」と感じますよね。大江戸線は、ミニ地下鉄というトンネルの断面(建設断面)を小さくしてコストを抑える考え方で作られた路線。“普通サイズ”の浅草線の車両は大江戸線に入れないのです。
「線路はつながっているけれど、どっちの車両も入れない・走れない」。こんな浅草線と大江戸線を行き来できる車両がE5000形というわけです。大江戸線サイズだけれど大江戸線用と浅草線用それぞれのパンタグラフを搭載し、浅草線の回転式電気モーター駆動で走れる仕様。この機関車で大江戸線の車両を浅草線の車両基地まで運びます。
E5000形は「検査に行く大江戸線の車両を馬込まで送り迎えする」のが仕事。見かける頻度は低く、見かけたらかなりラッキーな車両ですね。地下鉄を走る機関車自体が珍しく、回送以外ならば「浅草線を走る大江戸線」のレアな姿もセットで見られるので二重にビックリしそうです。
ちなみにE5000形も検査は浅草線の車両基地で行うのかなと思いきや、実は浅草線と直通している京急線を通り、遠く離れた久里浜の工場で行うそうです。地上を走るのか……!
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