【座談会】Flashは滅びぬ! 何度でもよみがえるさ―― あのころ、僕らが夢中になった「Flashの時代」を振り返る(後編)(2/4 ページ)
前編に続いて、「Flash黄金期」に活躍した職人たちと、Flashについて語る座談会を行いました。
オンライン/オフラインのイベントで広がる、Flashの世界
次にFlashイベントの話に移ります。年の暮れにインターネット上で開催された「紅白FLASH合戦」が一番注目を集めていたかなって思います。
僕、「紅白」がそろそろ始まるぞ、っていうタイミングで「キ8ンディキ8ンディ」をアップしたんですが、後日、主催のFLASH50さんに「イベントの邪魔してた」って怒られたんですよねぇ……。当時は「紅白」のこと、全然知らなかったんです。
切ない裏話!
み~やさんとは第3回紅白FLASH合戦(2004年の年末)で白組と紅組に別れて戦った敵同士なんですよ(笑)。
紅白の時、み~やさんがすごい煽ってたのを覚えてますよ。自分のサイトのトップページに「白組を全員倒す!」みたいな事を書かれていて。
それはプロレス的なノリのやつでしょ!
お祭りは盛り上げないとね。
もちろんわかっている上で(笑)。僕は作るだけだったから、「ああ、こうやって盛り上げてる人がいるんだなー」って。ああいうお祭りの雰囲気もまた、Flashムーブメントの楽しかった思い出です。
「紅白」が盛り上がって、「オフラインでみんなで見たいよね」って2chスレッドで盛り上がったんですよね。それが新宿ロフトプラスワンで「2ちゃんねるナイト」を開催することにつながって。チケットが瞬殺されたりと好評で、途中から「FLASH★BOMB」って名前に変わって続きました。運営を手伝っていたwosaさんの目から見て、イベントの表舞台や裏側はどう見えていたんでしょうか?
最初のうちは、完全に主催側の好みで上映作品を選んでいました。「あれも見たい、これも見たい」って要望を全部かなえることはできず、色んな人たちの思いがありましたね……出たかったけど出られなかった職人さんとか。
選ばれなかった職人さんはショックですよね。
選ばれた人も、舞台に出すからにはクオリティーを担保しないといけないってプレッシャーが強かったり。
悲喜こもごもだったんだ……。
塚原さんとみ~やさんは、締め切りを守ってくれた印象があったんだけど。
そんなことないですよ。結構ぶっちしますけど、ちゃんと連絡は取るようにしてました。
「ウシガエル」は、公開前日に完成した記憶があります。
(笑)。
当日ギリギリに持ってきて、超怒られてた子はいましたね。「flash★bomb'05 -THE THIRD IMPACT-」のとき、世田谷区民会館にディスク持ってきて「すいませんでしたー!」って。
さっきタカヒロウさんが締め切りちゃんと守っていた話からの、みんなが守らなかったエピソードがボロボロ出てくる(笑)。
さすがにポエ山さんは納品がスピーディでした。オープニング映像を頼んでいたのですが優良進行だったのを覚えています。
話が前後しちゃいますけど、世田谷区民会館のときにso-shi(衣谷ソーシ/@so_shi_gp)さんがものすごい美少女で、自分の作品を解説するために壇上に上がったとき、僕が酔っぱらったままめちゃくちゃ興奮して「かわいー!」って吠えまくってたの唐突に思い出した……。
かーず最低だな!(笑) 言ってた! 司会のDJ急行さんに「かーず興奮するな」って何度もたしなめられてて。
今からでも本人に謝罪したい……。あと、ぴろぴと(@PiroPito)さんの作品(※注意、グロテスク描写、恐怖描写が多分に含まれます)が強烈に僕の心にくさびを打ち込んでいて……ガロ系というか、おどろおどろしい作風を、イベントの大スクリーンで大人数で見るっていうのも貴重な経験でした。
ぴろぴとさん、作品によっては今考えるととんでもねえなって感じのもあったんですけど(笑)、唯一無二のセンスと実力で、記憶に残るクリエイターですよね。
大阪でも「FLASH EXPO(閃光動画万国博覧会)」(通称「フラ博」)ってオフラインイベントがあったよね。
ありました! 関東ばかりでオフラインやってて、関西方面の人たちは集まりづらいという意見があったので、「flash★bomb'04~演ッチマイナー!~」では東京と大阪の両方で開催したんですよ。
コミュニケーションが充実すると、作品が完成しなくなる説
オフラインで作者同士が交流するのはすごく新鮮でした。
職人さんたちはコミュニケーションを求めてやってた部分も大きいんじゃないかと思います。出会い厨って意味じゃなくて、作品を通して「自分を見てほしい」とか、他人の作品に「素晴らしかった、感動した」って感想を一言言いたいとか。もちろん、それが全てじゃなくいろんなシーンがあったとは思いますけど。
相手の作品にリスペクトを感じているからこそ、直接会って交流する機会がオフラインイベントで芽生えたってことでしょうか。
昔、ICQとかMSNメッセンジャーってチャットツールがあったじゃないですか。職人同士で、製作途中のやりとりをチャットツールで会話してたことが多かった気がする。
やってました!
やってましたねー。
で、メッセンジャーやりすぎると作品が完成しなくなるともいわれていて……要はメッセでコミュニケーション欲が果たされると満足してしまって、作品が進まなくなる(笑)。だから「あまりメッセにご執心になっちゃダメ」とかなんとかって話も当時出ていたような。もちろん連絡事項のみで黙々と作るタイプの職人さんもいましたし、人それぞれですけどね。
それでいうと僕のコミュニケーションツールはmixiがメインでした。「flash★bomb'04」きっかけで誘われて初めてソーシャル文化に触れたんですけど、みんなFlash作品の進捗をたまに上げていて刺激を受けましたね。
オフラインイベントをきっかけに、Flashを取り巻く環境が変わったのを感じます。それこそ「紅白Flash合戦」が起点となって、イベントが細分化されていく流れがあった。毎月のように一つのテーマに絞ったFlashイベントがネット上で開催されていました。たけはらみのるさんの「こしあん堂」の作品をテーマにした「こしあん祭り」とか、青池良輔さんの「CATMAN」シリーズをテーマにした祭りとか。
「num1000」のリミックス作品を職人たちが一斉に公開したり。
そういうイベントをターゲットに作る人が増えてきて、2ちゃんねるにアップされる作品が激減したのを覚えています。
そうでした。Flashを紹介する立場としては、2chのスレッドを巡回して、気まぐれに投下される作品を見つけるのは宝物を発見したみたいで楽しかった。ブラクラ(ブラウザクラッシュ)におびえながらだけど(笑)。
今日の話を聞いて、結局Flashとはコミュニケーションの手段なのかなって感じました。作品を通して自分の思いを伝えたり、それに影響を受けて作り始める人も出てきて。やがてイベントで交流が生まれたり、全て人と人のつながりの上に成り立っている。Flashは人との交流を生み出すツールなんじゃないのかなって。
「Flashは滅びぬ! 何度でもよみがえるさ! ……Animateとして」
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