インタビュー

とにかく俳優の良い芝居が見たい―― 佐藤二朗が語る、映画監督をする理由と第2作「はるヲうるひと」を経て強固になった思い(2/2 ページ)

打ち合わせ中だという3作目についてもお話を聞きました。

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“佐藤二朗にしか撮れない表現”を目指して


佐藤二朗さん。舞台では、映画で山田孝之さんが演じる得太を演じていました

―― 舞台から映画に落とし込む際に苦労したことや、逆に映画だからこそできたことはありますか?

佐藤 舞台は先ほど申し上げたように、女郎部屋という1つの場所でやっていたんですけど、映画ではいろんなところに場面が移るわけで、そういうところから生まれたシーンもあります。

 ただまあ、僕は自分のやりたい、自分だからこの表現になるというものが本当に世の中にあるかどうかも分からないし、「あります」と断言するのは非常におこがましいんだけど、でも僕だからこの表現になるというものが存在すると信じられているうちは、今後も監督を続けようと思っています。その僕の表現に到達するためにはやっぱり脚本を自分で書いて、監督もして、出演もしなきゃというふうに今は思っているんだけど、2作目の「はるヲうるひと」を撮ったことで、その思いは強くなっていて、3作目もそうしたいというふうに考えています。

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 今、3作目も実はちょっと打ち合わせをしているんです。詳しくはまだ言えないんだけど。だから僕がやりたい表現というものをやるには脚本を書いて、監督をして、出演まで全部トータルで世の中に佐藤二朗がやりたい表現はこれですというか、僕だからこの表現ができると思うというものを提示したんだけど、ごめん、全く質問を忘れちゃった。どんな質問だっけ?

―― 映画化で苦労したことや、映画だからこそ表現できたことなどを……。

佐藤 そうそうそう。ごめんごめん、思い出した、ありがとう。

 要は、今言った脚本も書いて、監督もして、出演もして、僕のやりたい表現はこれですというのを提示することは頭にあれど、舞台だからとか、映画だからというのは実はあんまり考えていないです。もちろん媒体が違うというのはあるけど、僕は自分がやりたい表現をやっていくだけです。

―― 江陵国際映画祭、ワルシャワ国際映画祭にも選出されましたが、海外の反響はいかがでしたか?

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佐藤 韓国の江陵国際映画祭は、コロナ禍だったので全員ビデオレターだったんですよ。だから直で向こうの声を聞くこともなかった。

 ワルシャワは行きましたね。行って、僕が驚いたのは「はるヲうるひと」は基本的にはコメディーではないんですけど、ただまあちょっと笑いをちりばめているんです。海を越えたら、笑いこそが一番感覚が違ってくると思っていて、ワルシャワではシーンとするんだろうなと思っていたら本当にビックリして。

 満員のお客さんでしたけど、本当に僕が書いているとき、あるいは監督しているときに、ここは日本のお客さんだったら笑ってくださるかな、笑わなくてもクスッとなるかなと思う、まさにそういうシーンに全てワルシャワの方たちも笑っていたんですよ。だから笑いは海を越えるかと思って、ちょっとビックリしましたね。

監督としての成長、そして気になる次回作について

―― 2作目となった今作で、監督として成長を感じた部分はありますか?

佐藤 短い時間で語り尽くせるかな。「memo」のときもすごく良いチームで、「はるヲうるひと」以上に短い期間で撮ったんですけど、「佐藤監督は初監督だから、絵コンテ通りに撮ってあげよう」というのがチームで一致団結していたんです。でも実はそこが一番の反省点でした。要は僕が描いた絵コンテ通りの作品になってしまって、現場で何か新しいものが生まれなかったんです。

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 今回は、スタッフも現場のプロデューサーに調整を任せて、ほとんど初めましてなスタッフたちで撮影しました。売春宿ということで、色味などにとてもこだわっていて、これまでも一緒に仕事をしたことのあるカメラマンの神田さんから「今回はどうしても画質をこだわりたいんだ」と相談されて、照明部と話し合いをしたこともありました。

 僕は、脚本にはそれなりの作家性があると思っているんだけど、監督としては、そこまでの作家性はまだないというふうに思っています。なので、もちろん取捨選択するのは僕だけれども、いろんなスタッフの意見を聞けたのは良かったなと思います。

―― 先ほど次回作の話も出ましたが、どういうことに挑戦していきたいですか?

佐藤 まだ詳しくは言えませんが、「memo」や「はるヲうるひと」は間口がそんなに広くないといいますか、要は、家族で見られるような作品ではないわけです。「はるヲうるひと」はR-15ですしね。家族で見て幸せになれる映画が撮りたくて撮っているわけだけれども、実は3作目はちょっと間口が広い映画になりそうです。

 だけど僕、Wikipediaに俳優、脚本家、ここまではギリ許せても、映画監督となっているんですね。俳優、脚本家、映画監督になっている。映画監督と入れるのがもう、入っているのが嫌でしょうがないというか、恥ずかしくてしょうがなかったんです。でも「はるヲうるひと」をきっかけに、やっぱり監督を続けたいと本当に思うようになりました。多分、共同脚本になると思うんですけど、やる以上は、そういう間口の広い作品でも自分の色をそこに出していこうと今は思っています。

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スタイリング:鬼塚美代子(アンジュ)

ヘアメイク:今野亜季(エイエムラボ)

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(C)2020「はるヲうるひと」製作委員会
配給:AMGエンタテインメント

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