映画「モータルコンバット」レビュー R15+指定だけど中学2年生の心が燃え上がるゲーム原作映画の理想系(1/2 ページ)
「グロいのが大丈夫な、中学2年生の心を持つ大人」は絶対に映画館で見てほしい。
2021年6月18日より映画「モータルコンバット」が公開される。
結論から申し上げると、本作は「グロいのが大丈夫な、中学2年生の心を持つ大人」は絶対に映画館で見たほうがいい。これは断言する。ふさぎ込みがちなコロナ禍で、最高に見たいものを最高レベルで見せてくれる、新たなゲーム原作映画の理想系だったのだ。
しかも、本作は全米でコロナ禍での上映に加え配信同時リリースという形態にもかかわらず、同日公開の「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」および4週目の「ゴジラvsコング」を打ち破り、全米の週末興行収入ランキングで1位を獲得。2250万ドルのオープニング記録は、コロナウイルスのパンデミック後に公開されたR指定作品では堂々の第1位である。
満を持して日本公開となった、この「モータルコンバット」のさらなる魅力を、以下でたっぷりと記していこう。
ゲームの残虐な「フェイタリティ」を完全再現!
本作はゲーム「モータルコンバット」の実写映画化作品だ。世界的に人気の高いシリーズではあるが、近作は日本ではリリースされておらず、プレイするためには海外版の購入が必要となる。なぜ日本未発売なのかと言えば、文字通りに血で血を洗う激しいバトルに加え、相手にトドメを刺す(盛大に殺害する)時の「フェイタリティ」の残虐さが理由だ。
どれだけ残虐かと言えば、人類がおよそ考えつく限界値、良い意味で悪趣味なギャグと化した、具体的に文章で書くのもはばかられるほどのグロ・オブ・グロである。だが、そのフェイタリティは「モータルコンバット」の代名詞的な存在でもあり、ファンから大いに受け入れられているのはもちろん、フェイタリティをまとめたYouTubeの動画はすさまじい再生回数をたたき出している。
そして、今回の映画「モータルコンバット」は堂々のR15+指定。世界中のファンもグロさを期待していたためか、過激なアクションシーンのあるレッドバンド版予告の視聴回数は、初週だけで1億1600万回再生を記録した。
実際の映画本編では、残虐シーンの数そのものは決して多くはない。だが、存分に格闘をし終えた後、「待ってました!」なタイミングでフェイタリティが、しかも「規制? 何それ?」な感じで大写しになるのがたまらない。ゲームのファンにとっては拍手喝采ものだろうし、何も知らない観客も「こんなすごいグロをよくも思い付いて、しかも再現したな!」と褒めたたえてしまうことうけあいだ。
少年ジャンプ的な興奮が待っていた!
これまでR15+指定も大納得のグロさについて紹介してきたが、それだけを取り沙汰すのはもったいない。特に、本作に出てくるファイターたちがとにかくカッコよく、心の中の中学2年生が踊りまくってしまうことはお伝えしておかねばならないだろう。
氷を操る最強の刺客「サブ・ゼロ」、雷を操る守護者「ライデン」、特殊部隊出身の女性戦士「ソニア・ブレイド」などなど、全員が個性的で、その武器や長所を最大限に駆使し、戦いの限りを尽くす。
しかも、一部のファイターには「修行」「それにより必殺技を身につける」という少年ジャンプ的なカタルシスのある展開まで用意されているのだ。バラエティー豊かな格闘シーンはそれぞれが激しく大迫力。それが実現できたのは、経験豊富な武道の達人も含むキャストたちの奮闘のたまものだ。
細かいことを抜きにしても、特にサブ・ゼロは(敵だが)その青を基調とした甲冑姿だけでもほれぼれとなるし、「血を凍らせて武器にする」シーンでは中2心が完全覚醒した。逆にR15+指定であるためリアル中学2年生が見られないことを残念に思うくらいだ。
大人でも「あの頃にカッコいいと思っていたものが今でもカッコいいと再認識できる」絶好の機会である。原作ファンも「ゲームそのまま」なサブ・ゼロが実写再現されていて感動必至だろう。
そして、クライマックスのバトルは邪気眼系の中二病が加速すること必至。こればっかりはネタバレになるので具体的には書かないが、涙するほどに(実際に筆者は泣いた)「これが見たかったんだ」な戦いが待っていた。
真田広之と浅野忠信が大活躍!
「モータルコンバット」は原作ゲームがアジアの文化をフィーチャーしており、だからこそ「笠を被った守護者」のようなキャラクターが登場する。さらにうれしいのは、真田広之と浅野忠信という日本人俳優が、「主演」級の大活躍をしていることだろう。
特に、真田広之はオープニングからすごい見せ場が用意されている。このシーンは公式映像が解禁されているが、できれば映画館で最初に目撃して欲しい。真田広之の「いぶし銀」な演技力はもちろん、次々に敵をスマートかつダイナミックに殺戮(さつりく)していく姿には、他の映画では決して味わえない感動があった。
思えば、真田広之はハリウッドの大作映画に出演することがあっても、ファンとしては不満を抱くこともあった。具体的なタイトルは作品の名誉のために書かないが、爪が鋭いおじさんが日本で大暴れするあの映画とか、アッセンブルしてエンドしたあの映画とか、最近配信されたゾンビinラスベガスな映画とか、真田広之は「もうひと推し見せてほしい役どころ」が多かった。しかし、今回の「モータルコンバット」はまさに面目躍如、「史上最高にカッコいい真田広之」だったのだ。
なお、浅野忠信は格闘シーンはほぼないものの、「アベンジャーズ」の司令官であるニック・フューリーのようなメンター的な役割を担っている。「常に目が光っている浅野忠信」というレア属性も有しており、過去の出演作「バトルシップ」に匹敵する存在感を期待しても、裏切られることはないだろう。
良い意味で一昔前のB級アクション映画のようなストーリー
では、今回の「モータルコンバット」のストーリーはどうか? というと、完全に良い意味での「純粋培養した一昔前のB級アクション映画」のような趣だ。
「魔界の戦士たちは人間界に9連勝している、あと1回負けると人間界が支配される」という、ノートの裏に書いたラノベのような設定(褒めている)の元、「七人の侍」的に仲間集めをし、結託して危機に立ち向かうという、シンプルを絵に描いたような内容なのだ。
よくできているのは、ゲームには登場していない、妻子持ちの負け続けの格闘家「コール・ヤング」を映画オリジナルキャラクターとして創造し、しかも主人公にしていること。冴えない男が選ばれし戦士になるのは「マトリックス」的でもあるし、「愛する妻と娘を守るため」という心から感情移入できる行動原理も生まれている。良くも悪くもアクの強いファイターが多いだけに、この主人公の「普通さ」が一種の清涼剤としての役割も果たしていた。
ちなみに、主人公コール・ヤングを演じたルイス・タンはシンガポール系イギリス人でアクション監督&スタントコーディネーターとして知られるフィリップ・タンの息子である。ルイスは父の撮影現場でキャリアをスタートし、アクションのスキルなどを着実に習得していったそうだ。激しい格闘アクションが要求され、またアジアのルーツがあるファイターには、存分にマッチしたキャスティングであるだろう。
ファンタジー感が増し増しの舞台や、思い通りの場所にワープしまくる便利能力など、見る人によっては物語のツメの甘さやツッコミどころ、その「B級感」をマイナスに捉える方もいるかもしれない。
だが、「すっごく強い戦士が戦いまくる」ことこそが重要なアクション映画としては、むしろ「これはこのくらいでいい」と思えるあんばいであると、筆者は肯定したい。少なくとも、「他の誰がどう言おうが俺はこの感じこそが大好きだ!」と支持をする大人は、間違いなくいるはずだ。
この映像美はぜひIMAXで!
1つ称賛しわすれたことがあった。それは、ひとえに映像美。冒頭の森の中に日本家屋が佇む風景、氷を操る最強の刺客とのバトル、転じて炎にまみれた乱闘など、その1つ1つが一時停止してうっとりと堪能したいほどに洗練されている。ストーリーがB級であっても、そのこだわりは間違いなく超A級だ。
筆者はIMAX版の環境でこそ映画「モータルコンバット」は真価を発揮すると断言する。美しい映像の細部が大画面でくっきりと見え、ぶつかり合う金属音の迫力を大いに堪能できるのだから。加えて、本作には前述した「大写しになるグロ」というサービスがあるのだ。特に、「あるもの」がきれいに引き裂かれて「バァ☆」とご開帳するシーンでは、「こんなに美しいグロをIMAXで合法的に見ていいんですか?」と本気で思うことだろう。
「パシフィック・リム」や「ゼロ・グラビティ」や「TENET テネット」など、IMAXで見るべき映画はこれまでもたくさんあったが、その中でも「モータルコンバット」は最上クラス。ぜひ、いい大人が「わーい!」とグロやカッコいいバトルにはしゃげる体験を、最も適した環境で堪能していただきたい。
1995年版もおすすめ!
最後に、「モータルコンバット」は1995年にも実写映画化がされていた(その続編も1997年に公開されている)。そちらを事前に見ておくのもおすすめだ。
1995年版は「バイオハザード」や「モンスターハンター」など、数々のゲーム実写映画化作品で知られるポール・W・S・アンダーソンが監督を手掛けており、「とにかくバラエティ豊かな格闘シーンを入れまくる!」という気概に満ち満ちた、今回以上に「B級」に振り切った楽しい内容だ。CGは今見るとチープだが、それもまた味わい深い。
ただ、この1995年版は「氷漬けになった身体がバラバラになる」「骸骨となった頭を切断する」など際どいシーンはあるものの、過度のグロ表現は避けられていた。前述したように残虐なフェイタリティは原作ゲームの代名詞でもあったため、不満に思ったファンもいたことだろう。26年もの時を超え、今回の映画で「グロを大解禁!」となったのも感慨深いものがある。
何より、1995年版と2021年版ではファイターたちそれぞれの描写がかなり異なっており、「ほほう、こうアレンジしたんだ」と感心も面白みにつながっていたし、「単なるリメイクにはしない」という作り手の矜持も感じられた。ぜひ、見比べてみて欲しい。
(C)2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved/IMAXはIMAX社の登録商標です IMAX is a registered trademark of IMAX Corporation.
(ヒナタカ)
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