「PUI PUI モルカー」大ヒットの今こそ知るべき「ストップモーションアニメ」の世界 傑作8選+2本を紹介(1/3 ページ)

「PUI PUI モルカー」の大ヒットに合わせ、知る人ぞ知るストップモーションアニメの傑作8選を紹介する。

» 2021年01月19日 12時00分 公開
[ヒナタカねとらぼ]
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 アニメ「PUI PUI モルカー」が空前の大ヒットをしている。まだ3話までしか公開されていないにもかかわらず、公式Twitterのフォロワー数は20万人を超え、SNSでは毎日のように多数のファンアートが投稿され、世界観や設定についての議論・考察も盛んになっている。

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 その魅力は枚挙にいとまがない。モルモットがかわいいクルマになるという子どもが楽しめるコンセプトでありつつも、物語では人間の身勝手さの痛烈な風刺も垣間見える。1話につきわずか2分40秒という短さながら何度見ても新しい発見がある作り込みがされていて、映画「ワイルドスピード」に影響を受けたという迫力のカーアクションも展開する。ネタ的な興味や話題が先行しがちであるが、その高いクオリティーこそが支持を集めた大きな理由といえるだろう。


 この「PUIPUIモルカー」が「ストップモーションアニメ」であることにも注目してほしい。ストップモーションアニメとは、人形や小物を撮影して、それをちょっとだけ動かして撮影して、またちょっとだけ動かして撮影して……という、気の遠くなる作業を経てやっと完成する手法だ。見里朝希監督によると、1日をかけて作ることができるのは良くて4秒から5秒、難しいカットの時は1秒いくかいかないか程度しか作れないのだという。その制作期間は、およそ1年半だそうだ。

「PUI PUI モルカー」PV

 ストップモーションアニメの魅力を一言で表現するのは難しいが、まずはその「実在感」がポイントだろう。特に本作における“モルカー“はフェルトでできており、柔らかくも温かみのある質感は、CGでは決して再現ができないもの。モルカーが柔らかいために、手で軽く抑えることでその豊かな表情を作れるという制作上のメリットもあったそうだ。

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 そして、この「PUI PUI モルカー」ほど、日本でストップモーションアニメが注目された例はほとんどないだろう。一定数の評価を獲得していたとしても、子どもから大人まで認知されている作品はごくごくわずかであり、「知る人ぞ知る名作」であることも多かったのだ。

 ここでは、初めてストップモーションアニメを知ったという方にもオススメしたい、優れたストップモーションアニメ(あるいはストップモーションを一部に利用した)作品8選と、おまけとして2作品を紹介しよう。いずれも、配信サービスで見やすい作品から選出している。


1:「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」

「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」予告

 世界最高峰のストップモーションアニメのスタジオ“ライカ“による映画だ。基本的には「お供と一緒に旅をする冒険活劇」で子どもがワクワクできる内容であり、主人公の少年の過酷な境遇や普遍的な「物語の意義」を問い直した作劇には大人こそが涙腺を刺激されるだろう。

 舞台は日本であり、折り紙でできた人形が生きているように動いたり、お盆の灯籠流し流しという文化が登場したりもする。「パシフィック・リム」のように最高のクリエイターが日本をリスペクトし作り上げた、日本人こそが必見の大傑作だ。なお、たった3.31秒の映像を制作するために1週間を費やしたという。現在はAmazonプライムビデオの他、種々の配信サービスで見放題である。

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2:「アーリーマン ダグと仲間のキックオフ!」

「アーリーマン ダグと仲間のキックオフ!」予告
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 クレイ(粘土)アニメのスタジオ“アードマン“による映画だ。「原始人たちが住処を青銅人に奪われてしまったため、取り返すためにサッカーで勝負!」という単純明快な物語でありながら、現実にあるスポーツにおける不正や汚職などの風刺、クレイジーで悪意のあるギャグも盛りだくさんな一筋縄では行かない内容になっている。

 アードマンと言えば「ウォレスとグルミット」や「ひつじのショーン」が有名だが、こちらのほうがサッカーという題材のおかげもあり親しみやすいだろう。日本語吹き替えの声優がとてつもなく豪華であり、主人公を梶裕貴、ヒロインを沢城みゆき、悪役を大塚芳忠が務めた他、戸田恵子、堀内賢雄、諏訪部順一、山寺宏一も参加している。現在はAmazonプライムビデオの他、他複数の配信サービスで見放題である(Amazonプライムビデオでの見放題は1月31日まで)。

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3:「ティム・バートンのコープスブライド」

 「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」では原案と製作を担当したティム・バートンが共同監督を務めた映画だ。特徴的なのは、「生者の国は冷たく陰鬱」としていて「死者の国は楽しくカラフル」という、現実での印象とは正反対のギャップのある世界観が構築されていること。

 キッチュなキャラクターそれぞれがとにかく魅力的で、死体の花嫁に連れ去られてしまった青年が本当に大切な価値観を知っていく物語は完成度が高い。深い余韻を残す、切なくも美しいラストシーンまで、ぜひ見届けてほしい。現在はAmazonプライムビデオの他、種々の配信サービスで見放題である。

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4:「ちえりとチェリー」

「ちえりとチェリー」予告

 日本のストップモーションアニメ映画で特にオススメしたいのがこちら。主人公は父親を亡くした小学6年生の女の子であり、イマジナリーフレンド(想像上の友達)との冒険を通じて、肉親や大切な人を失う悲しみとどう向き合うか、という物語が紡がれていた。

 舞台が東北大震災の被災地であることがさりげなく示されていたり、中盤からはとてつもなく怖いホラー描写もあるなど、大人こそがそのディテールや表現に圧倒される内容となっている。そして、ぬいぐるみのチェリーの声を演じているのは星野源で、その温かみがあり安心できるイケボが側で寄り添ってくれるキャラクターにぴったりだった。現在はU-NEXTdTVで見放題となっている。

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