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騒音おばさんがモチーフの映画「ミセス・ノイズィ」がまさかの大傑作だった(1/3 ページ)

騒音おばさんがモチーフの映画「ミセス・ノイズィ」の魅力をネタバレなしで紹介する。

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 12月4日より、映画「ミセス・ノイズィ」が公開されている。

騒音おばさんがモチーフの映画「ミセス・ノイズィ」がまさかの大傑作だった理由 (C)「ミセス・ノイズィ」製作委員会

 本作がモチーフにしているのは、大音量の音楽を流すなどして騒音を出し続け、「騒音おばさん」の名前で有名になった2005年の奈良騒音傷害事件だ。とはいえ、事件を再現する実録ものではなく、フィクションのオリジナルストーリーとなっている。

 「騒音おばさんを映画化する」というコンセプトを聞いた時は、正直に言って“ネタ”としか思えなかった。しかし、実際のこの「ミセス・ノイズィ」は、個人的に終盤で嗚咽(おえつ)するほどに感動した、2020年の日本映画の中でも屈指の完成度を誇る、ネタなどと思っていた自分の浅はかさを反省するしかない、まさかの大傑作であったのだ。

 そして、本作はネタバレなしでの紹介がものすごく難しい。「何も予備知識を入れずに見るのがいちばん良い」というのは、あの「カメラを止めるな!」や「ドロステのはてで僕ら」並みかそれ以上。それこそ、「騒音おばさんの映画って、何だそりゃ?」という態度のままで見たほうが、本作をより楽しめるだろう。


 そんなわけで、「ミセス・ノイズィ」を予備知識のない、最高の状態で見たい方は、ここまででストップ。劇場情報を確認し、映画館へと走ってほしい。以下からは核心的なネタバレはないように書いたつもりであるが、それでも本編にある重要な“仕掛け”に気付いてしまう可能性がある。ご了承いただけたら幸いである。

映画「ミセス・ノイズィ」予告編

1:お隣さんとの仁義なき戦いに大笑い

 36歳の真紀は母としてまっとうに生きていたが、今は本業の小説家としての仕事が大スランプに陥っていた。そんな彼女の前に立ちはだかったのは、52歳の隣の住人である美和子による、けたたましい騒音、そして嫌がらせの数々だった。

 本作でまず面白いのは、このいい年をした大人2人による、仁義なき戦いだ。初めこそ主人公はお隣さんへの対応を当たり障りのない程度で済ませていたのが、やがてその嫌がらせが「一線を超えた」状態となったたため冷静ではいられず、やがて反撃に出てしまい、その後はどんどんエスカレートしていく。

騒音おばさんがモチーフの映画「ミセス・ノイズィ」がまさかの大傑作だった理由 (C)「ミセス・ノイズィ」製作委員会

 どちらも本人は真剣そのものなのが、はた目から見ればそのバトルの様子はなんともしょうもないという、黒い笑いに満ち満ちている。特に、とあるモノをお隣さんが持ち出した瞬間は爆笑もの。「アホらしいことを真剣にやっている(その姿を客観的に見る)」というのは、笑いの基本と言ってもいいだろう。まずは、ストレートに笑えるコメディーを期待して見てほしい。


2:次第に笑えなくなり、精神的に追い詰められる

 序盤こそコメディーとして笑える本作であるが、次第に「笑えない」事態になっていく。このお隣さんの日に日に増していく騒音と嫌がらせのせいで、仕事の小説の執筆は一向に進まず、あまつさえ家族ともギクシャクし、ストレスはたまり続け、心の平穏が奪われていくのだから。

 「お隣さんとのトラブル」は誰もが現実で遭遇するものであるし、それにより精神的にまいってしまうことも、十分にあり得ることだ。その意味で、本作は身近な恐怖を描くホラー映画と言ってもいいのかもしれない。

 また、主人公の夫がなかなかそのストレスを理解しようとせず、それどころか「お隣さんではなく君のほうにこそ問題がある」という趣旨のことすら口にする。そこには正論も含まれるのだが、もっとも信頼を置きたい家族からも追い詰められてしまうということもまた恐ろしい。その夫の振る舞いから、「自分もパートナーを苦しめていないだろうか」と危機感を覚える方もいるだろう。

 さらに、主人公には人見知りをあまりしない、かわいい幼稚園児の娘もいる。この幼い娘が、ひょっとしてお隣さんに「何か」をされていないか、疑ってしまう事態になっていくのも……親御さん視点で見た場合には何よりの恐怖だろう。

騒音おばさんがモチーフの映画「ミセス・ノイズィ」がまさかの大傑作だった理由 (C)「ミセス・ノイズィ」製作委員会

3:SNS炎上やメディアリンチも絡んだサスペンスに

 コメディー、ホラーと来て、本作はさらに「SNS炎上」や「メディアリンチ」など、現代ならではの問題をはらんだ、社会派ともいえるサスペンスへと展開していく。このさまざまなジャンルがミックスされ、「次にどんなことが起こるんだ?」とハラハラさせられる連続こそが、この「ミセス・ノイズィ」の面白さのいちばんの理由であるだろう。

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