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新幹線列車名のルーツを探る 伝統の列車名「つばめ」、悲しい歴史「あさひ」月刊乗り鉄話題(2021年6月版)リニア中央新幹線の「列車名」大予想(3)(3/3 ページ)

復活して消えてまた復活する、列車名にも楽しく興味深い歴史があります。

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山陽・九州新幹線

みずほ

 「みずほ」は1961(昭和36)年に東京~熊本間の夜行列車として誕生しました。列車名の由来は日本の美称「瑞穂の国」です。

 国名は採用例としては珍しいですね。「みずみずしい稲穂」という意味ですから、広い意味では「花系」かもしれません。この列車も1970年代のブルートレインブームの一翼を担う列車でしたが、1994(平成6)年に廃止されます。2011年(平成23)年に九州新幹線が全通し、山陽新幹線に直通する列車が設定されました。「熊本に縁がある著名な列車名」も採用理由の一つです。

さくら

 「さくら」は1929(昭和4)年、東京~下関間で運行していた特急列車に「櫻」「富士」の名が与えられました。日本で初めて列車に名前が付きました。日本を代表する花と山です。

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 しかしどちらも戦時中に廃止され、戦後、1951(昭和26)年の東京~大阪間の臨時特急として「櫻」が復活。しかし1958(昭和33)年に電車特急の「こだま」が登場したとき、交代するように姿を消しました。その翌年、東京~長崎間の寝台特急として再出発、ブルートレイン時代を築き、2005(平成17)年に惜しまれつつ廃止されました。

 2011年(平成23)年に九州新幹線が全通し、「みずほ」とともに山陽新幹線に直通する列車として命名されました。長崎のイメージが強い「さくら」でしたが、鹿児島ルートの公募総数1位でした。

つばめ


かつて「つばめ」に使われていた787系

 「つばめ」は1930(昭和5)年、東京~神戸間の新鋭特急列車「燕」として誕生しました。既に運行中の「富士」が東京~大阪間を10時間40分で走っていたところ、「燕」は8時間20分、何と2時間も短縮しました。

 昭和4年の列車名公募では2位。しかしすぐに採用されず、高速特急計画の列車名として温存されていたそうです。戦後は東京~大阪間の特急として復活し、東海道新幹線開業後は、「ひかり」に接続する列車として新大阪~博多間の特急になりました。山陽新幹線の博多延伸で廃止されました。


在来線のリレーつばめ

 伝統の列車名「つばめ」は国鉄の象徴となり、C62蒸気機関車につばめのエンブレムが与えられたほか、野球チーム名「国鉄スワローズ」にも採用されました。現在の「東京ヤクルトスワローズ」のルーツです。

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 国鉄が運行するバスにも「スワローエンゼル」マークがあしらわれ、現在もJRバスに継承されています。国鉄時代から大切にされてきたブランドのため、JR各社は温存していました。その格調に見合う列車がなかったからです。

 しかし、JR九州は鹿児島本線の特急「有明」のうち、西鹿児島まで走るロングラン列車を「つばめ」と名付けました。JR九州は他のJR各社に了解を取り、グリーン個室、ビュッフェを備え「つばめ」にふさわしい格調高い列車としたのです。2004年の九州新幹線部分開業にあたり、「つばめ」の名前が継承されました。


九州新幹線 つばめ

つばめの車体に描かれるシンボルマーク

西九州新幹線

かもめ

 「かもめ」は1937(昭和12)年、東京~神戸間の特急列車「鷗」として誕生しました。1930(昭和5)年に誕生した「燕」が大人気となり、臨時「燕」が増発されていました。この臨時「燕」を定期運行する列車として「鷗」が名付けられました。

 戦後は1953(昭和28)年の京都~博多間の特急列車となり、1968(昭和43)年に京都~長崎・佐世保行きとなります。しかし1975(昭和50)年の山陽新幹線岡山~博多間開業に伴って廃止されました。

 「かもめ」の復活は1976(昭和51)年。長崎本線の全線電化が完成し、電車特急として堂々たる凱旋です。山陽新幹線開通後の博多~長崎間はディーゼルカーの急行「出島」が走っていました。この列車をすぐに特急化して「かもめ」とはせず、電車特急誕生まで保存していたというわけです。

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885系特急 かもめ

 長崎行き特急のブランドともいえる「かもめ」は、2022(令和4)年に開業する西九州新幹線(武雄温泉~長崎間)に引き継がれます。博多~武雄温泉間は「リレーかもめ」になります。


西九州新幹線 かもめ(JR九州Webサイトより)

【参考文献】国鉄・JR列車名大事典(寺本光照著)

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。ITmedia ビジネスオンラインで「週刊鉄道経済」連載。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。日本鉄道全路線の完乗率は100%(2021年4月時点)

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