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乗り鉄のイケナイ「夜遊び」 なぜか流行し出した「線内夜行列車」の魅力を探る月刊乗り鉄話題(2021年12月版)(1/3 ページ)

夜通し乗っても遠くへイケナイ「伊豆急行スターナイトエクスプレス21」に乗ってきました。夜行列車の旅は「星空」と「夜明け」がいいんですよ~。

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 今、乗り鉄や旅行ファンの間で「夜行列車」の人気がジワジワと高まっています。


伊豆急行が走らせた“線内夜行列車"「スターライトエクスプレス21」

 夜行列車と言えば「眠っている間に走る列車」です。夜に出発して、乗客が寝ている間に走り続けて目的地に翌朝到着。そこから1日の旅程を始められます。

 2021年12月現在は、東京~出雲市間の「サンライズ出雲」と東京~高松間の「サンライズ瀬戸」が定期便の夜行列車(関連記事)として運行しています。臨時列車としては東武鉄道の「スノーパル23:55」「尾瀬夜行23:55(関連記事)」「日光紅葉夜行」などがあります。

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サンライズ出雲・瀬戸

 ほかにも夜行列車企画は「サロンカー明星号(2019年)」「夜行『雲海列車』貸切り 早朝の竹田城跡の旅(2018年)」などもあります。昨年(2020年)からはJR西日本の「WEST EXPRESS 銀河」(関連記事)も走り始めました。

 広い意味では、クルーズトレインの「ななつ星in九州(関連記事)」「トワイライトエクスプレス瑞風(関連記事)」「TRAIN SUITE 四季島(関連記事)」も夜行列車といえます。どれも遠くの目的地へ向かって走り、目覚めれば寝る前とは違う場所、違う景色。旅情もマシマシってもんですね。


(参考)JR東日本のクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」

 しかし、いま人気が盛り上がっている夜行列車は、遠くの場所まで夜通し走る長距離夜行列車とはちょっと違います。短い路線を行ったり来たりしつつ、朝を迎えるまで走り続ける夜行列車です。取りあえず「線内夜行列車」と呼ぶことにしましょう。

 ほとんどの「線内夜行列車」は“同じ場所"に戻ってきます。夜の発車前に集合して、朝は同じ場所で解散します。は? 何じゃこりゃ? どういうこと? となった人もいるかもしれませんね。線内夜行列車は、「夜行列車の雰囲気を楽しむ」ために最近グワッと増えてきたイベント列車です。

 例えばこんな列車があります。

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秩父鉄道の夜行急行列車

 秩父鉄道の夜行急行は、2018年12月に初開催(関連記事)。以来、何度も開催されている人気企画です。熊谷駅で集合解散。夜間、秩父鉄道本線を1往復以上運行します。

 車両は電気機関車とSL「パレオエクスプレス」用の客車や急行用の6000系電車を使います。深夜の駅で列車の撮影イベント、夜鳴きそばも楽しめます。


秩父鉄道「夜行急行 三峰53号」の行程表。同じ路線を往復して朝まで走る

津軽鉄道の旧型客車夜行「津軽」

 津軽鉄道の旧型客車夜行「津軽」は、2019年8月4日に初開催。津軽五所川原駅で集合解散。津軽五所川原~津軽中里間を2往復しました。

 車両は国鉄時代の旧型客車で、冷房のない夏の夜汽車です。夜間の列車撮影会、機関車の機回し(前後付け替え)を見学できました。8月4日は青森三大ねぶたのひとつ「立佞武多(たちねぷた)」が開催されており、ホテル不足を補うという意味もあったようです。

えちごトキめき鉄道の「夜行急行」

 えちごトキめき鉄道の「夜行急行」は、2020年8月に初開催。直江津駅で集合解散。妙高はねうまライン、日本海ひすいラインの順に往復します。

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 使用車両は旧国鉄色の455系・413系です。国鉄時代の夜行急行電車の再現がテーマです。弁当・夜食があり、翌日分のホリデーツーパス(フリーきっぷ)が付きます。

関東鉄道常総線の関鉄夜行列車

 関東鉄道常総線の関鉄夜行列車は2021年10月に初開催。守谷駅で集合解散。ロングシートのディーゼルカーを使い、常総線の全区間を走破します。


関東鉄道「夜行列車 急行夜空号」のポスター。ロングシートでゴロ寝……やってみたかった人も多いのでは?

 座席は長いシートを2分割した「C寝台」、短いシートを使う「D寝台」として販売されました。これは寝台列車のA寝台、B寝台よりも格下という自虐ネタ。途中駅で夜食や撮影会などが実施あり、座席と同じモケットで作った枕がもらえました。

伊豆急行の「伊豆急行スターナイトエクスプレス21」

 伊豆急行の「伊豆急行スターナイトエクスプレス21」は2021年11月に実施。伊東駅で集合し、南伊東駅からバスで移動、温泉ホテルで入浴、ビュッフェスタイルの朝食ののち解散。使用車両は2100系「リゾート21」の「キンメ」電車でした。

窮屈で、寝返りも打てない。でも、そこがいいのです

 どの線内夜行列車も、短い路線を長時間走らせるために、特定の区間を行ったり来たり、2往復以上走ります。ちょっとだけ走って朝まで停車して……とはしません。走ってこそ夜汽車ですから、“行ったり来たり”するのです。

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 線内夜行列車はやはり鉄道ファン向けの要素が強く、夜間の列車撮影会、機関車入れ替えを見学できる催しもあります。全て「座席車」を使うところも特徴です。窮屈で、寝返りも打てない。でも、そこがいいのです。いまはなき「ムーンライトながら」を含めて、かつては座席車の夜行列車もたくさん走っていました。当時を知る人にとっては懐かしい感じです。


寝台特急「サンライズ瀬戸」で迎えた朝の景色

寝台特急「サンライズ出雲」下り列車は西明石付近で夜が明ける

 寝られる寝台列車は魅力です。しかし、窮屈な座席でなんとか身を置き、浅い眠りの中で時々車窓を眺めれば、町の明かりが蛍の光や流れ星のように通り過ぎていく。この景色は夢の続きかもしれない……、なんて思うのもこれもまた風情あるもの。ああ、遠くに行くんだなあ。いやホントは行かないけれど、長い旅をした気分になれます。

 鉄道会社にとって、夜間は休みではありません。最終列車から始発列車の間は、線路の保守点検を実施するための重要な時間です。夜行列車はその時間を調整して運行されます。長距離夜行列車は影響範囲が大きく調整が大変。でも、私鉄の短距離路線の範囲ならばある程度調整しやすいと言えそうです。

 線内夜行列車は、鉄道イベントとしての工夫と手間を掛けた体験や“食"の組み合わせで、広範囲の鉄道好き、旅行好きを集客できます。今後も他の地域でも新たな「線内夜行列車」が走るかもしれません。今後も楽しみな分野です。


寝台特急「北斗星」の朝 目覚めたら北海道だった
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