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“Twitterで稼げる漫画家”は現れるか? Twitterで漫画家を育成するプロジェクト「アクセルナイン」運営に聞く手応え(1/3 ページ)

“Twitterで稼げる漫画家”育成を目指すプロジェクトが進行中。その運営元を取材しました。

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 Twitterで話題になった漫画が連載化され、単行本になる――これまでと違う商業漫画デビューのルートが生まれる中で、Twitterという場で漫画家を育成しようという新しい取り組みが進行しています。「Twitterで稼げる漫画家を育成する」を目標に掲げたプロジェクトの主催に、手応えや「Twitter漫画」という分野について聞きました。


Twitterで稼げる漫画家を育成する「アクセルナイン」プロジェクトから生まれた作品『おかえり、初恋。』 (C)かめみずとら

 Twitterで漫画家を育成する「アクセルナイン」プロジェクトを立ち上げたのは、電子書籍配信サービスを運営するナンバーナイン。プロジェクトでは、Twitterで50万フォロワーを擁する八木戸マトさん(代表作:『就活失敗したサキュバスさんを拾いました』)などTwitterで人気の漫画家などを講師として迎え、プレーヤー(生徒)にTwitterで受ける漫画の描き方をコーチ。学んだことを生かしてTwitterで作品を発表し、フォロワー増や電子書籍配信を目指していきます。


コーチ陣(画像提供:ナンバーナイン)

プロジェクトのスケジュール(画像提供:ナンバーナイン)

 プロジェクト第1期は2021年8月から11月まで実施。プレーヤーの1人「かめみずとら」さんは、作品を19話発表し、Twitterフォロワーを641人から5万人以上に増やし、連載決定、単行本配信と「一定の成果」があったといいます。もう1人のプレイヤー「寅」さんも大きくフォロワーを増やしています。

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1期の成果(画像提供:ナンバーナイン)

 この成果を受けて、プロジェクトは第2期へと向けて進行中。編集部では、ナンバーナインの執行役員、工藤雄大さんに企画立ち上げの背景や、手応えを聞きました。

“王道ルート”だけでは合わない作家もいる

―― アクセルナイン立ち上げの経緯を教えてください。

工藤さん きっかけはインフルエンサー漫画家・八木戸マトさんとの世間話でした。話していたのは、現状の漫画業界における漫画家の選択肢の少なさについてです。

インフルエンサー作家の八木戸マトさん。Twitterで多数の漫画を発表しています

 現状の漫画業界では、商業連載から大ヒットを狙うというのが王道ルートとして存在しています。出版社の運営する商業誌(紙・Web・アプリを問わず)に熱い思いをもった漫画家さんが大量に集まり、その中で競争がおき、大ヒットが生まれる。大ヒット作品を生み出すために最も効率的だとは分かっているんですが、この方法だけだとどうしてもそこに合わない漫画家さんが出てくるよね、と。

 その中で八木戸マトさんが、「自分がTwitter上で漫画を投稿し続けて稼げるようになったから、この方法論を共有できれば実力のある漫画家さんは稼げるようになるんじゃないか?」という仮説を話してくださったんです。その話に強く共感し、ナンバーナインのプロジェクトとして昇華させたのが「アクセルナイン」です。

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―― コーチ陣や漫画家の選定基準は。

工藤さん 発案者である八木戸マトさんを中心に、「もともと親交があったTwitterでフォロワーの多い漫画家さん」で、「『アクセルナイン』の考え方に共感してくださる方」という基準で選定させていただきました。ありがたいことに、根田啓史さんと若林稔弥さんのお二人にご協力いただけることになりました。

『異世界行ったら、すでに妹が魔王として君臨していた話』で人気の根田さん
『徒然チルドレン』で知られる若林さん

 このお三方がいれば、発信力・漫画の実力ともに十分で、いいプロジェクトになるとは思っていましたが、「Twitter漫画を誰よりも読んでいる読者」の観点が足りません。そこで、漫画家ではないのですが「尊い漫画をやらしい雰囲気にさせる人」というアカウントを運営している方(尊いさん)にお声がけしたところ、企画趣旨にも強く共感してもらえて、コーチとして参加いただくことになったのです。

フォロワーが600人程度から5万人超えに

―― 第1期の成果は想定と比較してどうでしたか。

工藤さん 試験的なプロジェクトということでナンバーナインと契約している1000人ほどの漫画家さんを対象にクローズドな形で募集を行い、結果として80人以上の応募がありました。最終的に、かめみずとらさんと寅さんの2人が第1期のプレーヤーとして参加しました。

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 アクセルナインでは、「半年でフォロワー10万人を目指す」ことと「Twitterでヒットする漫画を作る」ことの2つの目標を掲げていました。1つ目に関しては、2人とも達成はできませんでした。しかし、寅さんはプロジェクト終了後は3.6万フォロワーと参加当初と比べると4倍近い成長、参加前はフォロワー600人程度だったかめみずさんに至っては、終了後は5.6万人と圧倒的な成長でした。この点に関しては、10万人という目標にこだわる必要はなく、現状に対してどこまで伸ばせるか、が重要だという結論に至っています。

書籍化されたかめみずさんの『おかえり、初恋。』
寅さんは「推し毒舌配信者」シリーズが人気に

 2つ目の目標「Twitterでヒットする漫画を作る」に関しては、ヒットの定義を「1話目が5万いいね以上いくこと」としていたのですが、2人とも達成してくれました。もともと2人の実力が高かったから、ということもありますが、アクセルナインで学んだことをしっかり生かしてくださったなと思っています。

―― 手応えは感じましたか。「稼げる」という目標についてはいかがでしょうか。

工藤さん 改善すべき点は少なくありませんが、手応えは正直めちゃくちゃ感じています。「稼げる」という点に関しては、かめみずとらさんの連載作品『おかえり、初恋。』しかまだ電子書籍が出ていないので断言はできませんが、同作の売上は想定していたよりもかなり高かったです。

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