いや、これは、けっこう良いのでは……? 「鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー」レビュー(2/3 ページ)
新キャストもハマりまくっていた。
オープニングのスカーの強さを見せつけるシークエンス、その後の列車という舞台を生かしたギミックも面白いし、格闘シーンも軒並みキレがある。
前作でも好評が多かったCGやVFXも違和感なくアクションに融合しており、アルフォンス・エルリックの鎧、その声も兼任する水石亜飛夢のモーションキャプチャーにより作り出された動作、ライティングも完璧な出来栄えだ。新たに、ミニチュアサイズのパンダのシャオメイが、実写と違和感なく再現されているのも楽しい。凄惨な戦争の過去を示す場面もスケール感があり、ほころびを感じさせるシーンはほとんどない。
前作のエンヴィーの変身能力を生かしたサプライズ、とある衝撃的な事実をクライマックスに提示する構成もなかなか好評を呼んでいたが、今回はタイトル通り復讐者スカーにまつわる物語が過不足なくまとまっている。本田翼演じるウィンリィの心情を映画で見事に再現してくれたことが原作ファンとしてうれしかったし、「復讐の連鎖を断ち切るにはどうしたらいいか」というメッセージに改めてグッと来た。それは今の混乱を呼ぶ世界でこそ改めて響くものだった。
前作に厳しい声が多かったことを踏まえた山田涼介の想い
もちろん、原作マンガのコメディー然としたシーンを生身の人間が演じるとちょっとしんどいとか、豪華キャスト陣はがんばっているけどやっぱりコスプレ感は否めないなとか、中盤は展開が少しかったるいなとか、さすがにどうかと思う演出もあるとか、モブキャラがわざとらしい説明をしすぎだとか、前作と変わらず問題だと感じるところはまだ残っている。
しかしながら、前作の多くの欠点が改善または目立たなくなり、何より作品そのものから、キャストとスタッフが一丸となり良いものを作ろうとする気概を存分に感じたので、筆者は本作を大いに支持したい。批評的にはもちろん興行的にも決して芳しくなかった前作を引き継ぎ、原作の最終話までを描ききる姿勢も応援したくなるではないか。
主人公のエドワード・エルリックを演じた山田涼介は、前作に厳しい声が多かったことを踏まえ、続編を望み、やるべきことをやるという気持ちを強く持って本作に挑んだことをインタビューで語っている。その山田涼介と、スタッフとキャストたちの思いは、間違いなく作品に刻印されていた。
そして、6月24日公開の「完結編 最後の錬成」に改めて期待をせざるを得ない。今回は登場しなかったが、オリヴィエ・ミラ・アームストロング役の栗山千明が「その腐りきった尻を乗せている貴様の席をとっとと空けろ! 老害!!!」と言いながらぶった斬るシーンも(たぶん)見られるのではないか。めちゃくちゃ見たいぞそれ。心待ちにしている。
(ヒナタカ)
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