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若草物語「お父さんはいま、いないじゃん」 新訳した文学全集に賛否両論、出版社に理由を聞いた(1/2 ページ)

話題になったのは、世界の名作125冊をまとめた『小学館世界J文学館』です。

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 小学館で出版予定の『小学館世界J文学館』に掲載される著名な文学作品が、今の子ども向けにリズムを重視した新訳となることに、ネット上でさまざまな意見が上がっています。小学館に対し、今回の新訳に込めた思いや変更したきっかけなどを聞きました。


旧約と新訳を比較した一例(『小学館世界J文学館』のWebサイトより)

 『小学館世界J文学館』は、小学館創立100周年記念企画として、「シェイクスピア物語」や「赤毛のアン」、「魔女の宅急便」など世界の名作125冊を「今の時代にふさわしいカタチ」にまとめた全集。紙の書籍では図鑑形式で名作の見どころやキャラクターなどが紹介され、記載されたQRコードを読み取ることで、作品の本文を電子書籍で読むことができます。11月22日ごろに5500円で発売予定です。


(『小学館世界J文学館』のWebサイトより)

 Twitterで話題に上がったのは、『小学館世界J文学館』の紹介サイトに一例として紹介された新訳です。『若草物語』内の一文について、1972年版では「だって、おとうさんは、いま、いらっしゃらないじゃないの。それに、いつお帰りになるかも、わからない」とあるのを今回の新訳で「お父さんはいま、いないじゃん。しかもしばらく会えそうにないし」と変更すると説明(なお、原文は「We haven't got father, and shall not have him for a long time.」)。現代の子ども向けに、言葉のリズムを大切にした翻訳にしたそうです。

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 この新訳に対し、ネットでは、「情緒に欠けますね…」「娘も、別に今っぽくしなくてよくない?そういう作品を味わうんじゃないの?と言ってます」などと否定的な意見が上がる一方、「現代語訳で今の子たちに読んでもらえて読書へのとっかかりつかんでもらえたらいいのでは」「否定的な意見には、そんなこと言ったら古典は全部原文で読めって話になりかねませんし、旧訳もしょせん日本の一時的な時代の言葉でしかないですよねとしか…」と肯定的に捉える声も見られます。

 ネットにおいてさまざまな意見が出る中で、小学館に今回なぜこうした新訳にしたのか、そのきっかけを聞きました。

 担当者によると、全集の企画が始まる際、企画全体を監修する編集委員から繰り返し出てきた意見が「訳文の重要性」。

 「『ことば』は生き物です。時代とともに、どんどん変わっていきます。全集の読者である子どもたちはなおさらのこと、『今』のことばのリズムで生きています。今の子どもたちのテンポに合ったことばで訳し、子どもたちに名作を身近に、リアルに感じてほしいと考えます」(担当者談)。

 その上で、小学館では、子どもたちのテンポに合ったリズム感を大切にした訳文を目指すという指針を立て、作品ひとつずつに対し、原作が持つ世界観にふさわしい訳文を練り上げようとしてきました。

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紙と電子書籍の両方を生かした全集に(『小学館世界J文学館』のWebサイトより)

 上記の『若草物語』内におけるせりふについては、この発言をしたジョーというキャラクターが「服のポケットに両手を突っこんでヒュウッと口笛を吹く」と描写されており、男の子をうらやましいと思っている少女だからこそ、こう訳したそうです。ちなみに、「じゃん」という言葉を使うのは、作中の四姉妹のなかでジョーだけとのこと。

 キャラクターの解釈については、全集での翻訳家と編集部の判断によるもので、ほかにさまざまな解釈があるだろうことは小学館ももちろん承知しているといい、「『若草物語』のような名作は、幸いに多くの翻訳書が刊行されています。読者の皆さまは、たくさんの版のなかから自分にあった翻訳を選んでいただきたいと思います」と述べています。なお、1978年に同社から刊行した『若草物語』は、そのままの訳文で電子書籍として販売中です。


1978年に小学館から出版された『若草物語』(小学館のWebサイトより)

 担当者は、原文の一語と日本語の一語を厳密に対応させるという意味での「直訳」にこだわるのではなく、原文の文意を読者が正しく理解できるような訳に注力している一方、「原文を尊重して『完訳』することを目標としています。子どもたちにわかりやすくするためだからといって、原文にない表現を挟み込んだり、原文を削除したりすることは原則としてありません。この点では、弊社が過去に刊行してきた文学全集よりも、かなり厳密な『完訳』をめざしていると自負しています」とコメントしています。

 Twitterで話題になったことを受けて、小学館にも直接・間接にさまざまな意見が寄せられているとのこと。新訳のジョーの話し方が「品がない」「児童書らしくない」という意見もあれば、「子どもが手に取りやすそう」「わかりやすい」という意見もあるそうです。編集部はいずれの意見もありがたいとしつつ、「今後、一文だけの抜き出しではなく、より長く訳文を読める『試し読みページ』を公開する予定です。ぜひ、そちらをお読みいただいたうえで、あらためて感想をお聞かせいただきたいと思っています」と述べています。

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