国語辞典編纂(さん)者の飯間浩明さんが「恣意的」ということばについて見解をまとめたツイートを投稿し、1万4000リツイートを超える大きな注目を集めています。
「発言の一部を恣意的(≒意図的)に切り取る」というのはよく耳にする表現ですが、別段問題のないこうした表現を「誤用」だとする俗説が増加していると、飯間さんは警鐘を鳴らしています。
飯間さんの解説によると、「恣意」とは「意(こころ)を恣(ほしいまま)にす」と訓読できることから分かるように、「勝手気ままな考え」というのが基本となる意味。このことから「恣意的」は「偶発的、ランダム」という意味(A)と、「意図的」に近い意味(B)の2通りの意味で使用できることが分かります。ところが最近、「意図的」に近い意味(B)が「誤用」だとする俗説が急速に増加。確かに検索してみると、Web上では意味(B)を「誤用」と紹介しているブログや雑学サイトがちらほらと見つかります。
上記の説明は辞書を精読すれば理解できることですが、飯間さんは「編纂者の反省すべきことですが、辞書の説明は必ずしも誤解を防ぐ書き方になっていません。ネットで諸説飛び交う時代、辞書には、俗説を否定するという役割が加わっています」とツイート。辞書がもっとネットの時代に対応できるよう変化していくべきとの見解を示しています。確かに、一部の辞書では「恣意:その時どきの思いつき(新明解国語辞典第6版)」と、説明が簡潔過ぎるために誤解を誘発していそうです。
飯間さんは以前にも「『了解いたしました』は失礼なことばではない」と解説文を投稿するなど(関連記事)、ことばを安易に「誤用認定」することに反対していました。これは「一度誤用という共通理解が生まれると、復活するのは大変」という考えに基づくもの。誤用は誰にでも起こり得るものですが、気になる言い回しを見かけたら頭ごなしに否定せず、いったん立ち止まって調べてみることが大切なのかもしれません。
画像提供:飯間浩明さん
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「汚名挽回」は誤用じゃなかった 国語辞典編纂者のツイートが話題に 三省堂国語辞典にも説明が
昔は普通に「汚名挽回」も使われていたそうです。 - 「『了解いたしました』は失礼なことばではない」 国語辞典編さん者が見解をTwitterで解説
「『了解いたしました』を相手が使っても怒らないであげて」とのこと。 - ねっと用語知ったかぶり:トランプ氏就任から聞くようになった「ポリコレ棒」ってどういう意味?
中立・公平を呼びかけるその人自身は、中立・公正なのか。 - 「大辞林」データベースに「きゃわわ」「こなみかん」などネット用語追加収録
「つらたん」や「ざんとう」も。 - ホットドッグはサンドイッチか? メリアムウェブスター辞書が「サンドイッチだ」と宣言
全米ホットドッグ・ソーセージ評議会(NHDSC)は「ホットドッグはサンドイッチではない」と主張。