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東映アニメの不正アクセス事件は「プリキュア」の売り上げにどんな影響を与えたのか スーパー戦隊と明暗を分けた2022年1Qを振り返るサラリーマン、プリキュアを語る(1/2 ページ)

新型コロナに不正アクセス問題も加わり、プリキュアは数字的に苦戦が続きます。

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 プリキュアは苦戦、スーパー戦隊は好調と明暗が分かれたバンダイナムコホールディングスの2022年の第1四半期決算。その要因となったのは「不正アクセス事件」と「主力玩具の動向」でした。


不正アクセス事件の影響を受けた「デリシャスパーティプリキュア」

 2022年3月に発生した東映アニメーションの不正アクセス事件。ランサムウェアによる被害によって東映アニメーション制作のアニメは中断を余儀なくされ、テレビ放送および映画公開の延期など大きな損害が出ました。

 「デリシャスパーティ・プリキュア(・はハートマーク)」は5週間の放送延期となり、「3人目キュアヤムヤムの登場が5週遅れる」「追加プリキュア『キュアフィナーレ』の登場も約1カ月遅れる」などの影響が出ることとなり、それに伴いバンダイ側の玩具の販売スケジュールも変更となりました。

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 プリキュアシリーズは、テレビアニメ放送と玩具販売のスケジュールが密接に連動しており、放送の延期は玩具の売り上げにも大きな影響を及ぼします。

 2022年8月に発表となったバンダイナムコホールディングスの1Q(4~6月)の売り上げ数字を元に、プリキュアシリーズに与えた影響をみていきたいと思います。

kasumi プロフィール

プリキュア好きの会社員。2児の父。視聴率などさまざまなデータからプリキュアを考察する「プリキュアの数字ブログ」を執筆中。2016年4月1日に公開した記事「娘が、プリキュアに追いついた日」は、プリキュアを通じた父娘のやりとりが多くの人の感動を呼び、多数のネットメディアに取り上げられた。


不正アクセス事件により追加プリキュアの時期が変更となりました

プリキュア2022年1Qは、過去最低の数字に

 2022年8月5日、バンダイナムコホールディングスの2023年3月期の第1四半期決算数値が発表となりました。(2022年4月~6月の数字となります)

 プリキュアの2022年1Qのグループ全体売り上げは13億円。前年同期と比べてマイナス3億(昨年同期比81.3%)となりました。

 これは歴代プリキュアシリーズの中でも、残念ながら数字が確認できる中では過去最低となってしまいました。

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 (もちろん「作品の面白さ」と「玩具の売り上げ」には相関は無いので、売り上げが低いからといって内容が悪いわけではありません)。


プリキュアのバンダイナムコ、2022年1Qは13億円と苦戦

 2018年(「HUGっと!プリキュア」)の1Qは25億円あったものが、ここ4年で売り上げは下がり続け、ついに2018年と比較して売り上げは約半分(52%)にまで落ち込んでいます(※バンダイのプリキュア売り上げはいわゆる「玩具」だけではなく食玩やガチャポン、文具、生活用品、アパレルなどを含みます)。

 もちろん数字は「流れ」で見るものであり、1つの期だけを取り出して比較するのはやや正確性に欠けます。しかし1つの目安として見ると、本年(2022年)の落ち込みは、ここ数年の新型コロナの影響に加え、この東映アニメーションの不正アクセスの影響により「テレビ放送と玩具の販売スケジュールにズレが出たこと」も大きく影響しているものと思われます。


不正アクセスの影響により「キュアフィナーレ」の登場が6月から7月へ

 特に追加プリキュアである「キュアフィナーレ」関連商品の発売が、本来の6月から7月へと延期になってしまったことが大きかったのではないでしょうか。

 追加プリキュアが登場すると、専用の玩具が大々的に発売されるのも大きいのですが、塗り絵や文具などのパッケージが「追加プリキュアが登場する新バージョン」に一新されるため売り上げが大きく動きます。

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 その追加プリキュアの登場が7月にずれ込んだことが1Q(4~6月)の売り上げに大きな影響を与えているものとも思われます。

 なお、同時期に発表となった東映アニメーションの国内版権売り上げ」も歴代シリーズで最低となっており、加えてこの先も物価上昇による消費の落ち込みや、めどの立たない新型コロナ収束、海外情勢の不安定など、厳しい要因はまだまだ続きます。


東映アニメーションのプリキュア国内版権売り上げも苦戦

主力玩具「おしゃべりコメコメ」の欠品も影響

 実は、番組開始直後は「デリシャスパーティプリキュア」は玩具の販売は好調でした。

 前年に好評を博したキッズコスメ「PrettyHolic(プリティホリック)」は実際に食べられるお菓子玩具「PrettyHolicSweets(プリティホリックスイーツ)」を追加。さらに主力玩具である「にぎにぎ変身!おしゃべりコメコメ」も子どもたちに大人気となり、玩具業界誌でも「好調を保っている」と評されます。


PrettyHolicSweets(プリティホリックスイーツ)はテレビアニメとの連動も積極的に行われています(出典:Amazon.co.jp

一方で新キャラということでは2月のスタート以降、好調を保っているのがプリキュアで、「PrettyHolic」シリーズを中心に変身アイテムも良く売れている。
『月刊トイジャーナル 2022年4月号』(東京玩具人形協同協会)P68

 ただ、その好調だった変身玩具「おしゃべりコメコメ」はゴールデンウイーク商戦前には品不足、欠品に悩まされていたようです。玩具業界誌においてバンダイ関係者からも「供給が追い付かず、一部欠品が出てしまった」と言及されています。

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また、プリキュアは立ち上げから好調に推移していた「にぎにぎ変身!おしゃべりコメコメ」などの変身アイテムが、今商戦では供給が追い付かず一部欠品が出てしまった影響もあってカテゴリー全体で昨対88%となったことに加えて~
バンダイ トイビジョングローバルマーケティング部デピュティゼネラルマネージャー 田村浩也氏
『月刊トイジャーナル 2022年6月号』(東京玩具人形協同協会)P54


商戦前に欠品が出てしまった「おしゃべりコメコメ」(出典:Amazon.co.jp

 この主力玩具の欠品も、プリキュアの2022年1Qの苦戦につながっていたものと思われます。

 プリキュアは2021年「トロピカル~ジュ!プリキュア」でも、主力玩具「マーメイドアクアポット」が夏以降に品切れを起こし、大きな機会損失となりました。

 新型コロナによる海外からの供給不安定の影響などもあるかと思われますが、売れる時期に売る商品が無いのは、やはり大きな痛手となります。

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