連載

「映画デリシャスパーティプリキュア」が見せる子どもと大人の夢のあり方 田中仁の脚本はなぜ大人の涙腺を緩ませるのかサラリーマン、プリキュアを語る(2/2 ページ)

映画デパプリ、興行収入も絶好調。たくさんの子どもたちが映画館に足を運んでいます。

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お子様ランチを通して描かれる子どもと大人の対比

 本映画は「子ども」と「大人」の物語です。

 「はやく大きくなりたい」と願うコメコメと、「汚い大人になんかならなくてよい」とする敵キャラクターとの対比がお子様ランチをモチーフとして描かれます。

 「子どもっぽいから、お子様ランチを食べたくない」とする子ども。
 「汚い大人に、お子様ランチを食べる資格はない」とする大人。

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 お子様ランチを巡る異なる2つの思いは交錯し、プリキュアは対話をするために戦います。決して善vs.悪の戦いではなく、共に「子どものため、未来のため」を巡っての戦いはこの映画のラストシーンの最大の見せ場です。思いの力で戦い、奇跡を起こすのがプリキュア映画の魅力なのです。


妖精たちも戦う、ド派手なラストバトルにも注目(YouTubeから)

夢に遅いも、早いもない

 田中氏が手掛けるプリキュアでは、よく「夢」が描かれます。この映画でも「夢」の描かれ方が本当に素晴らしいのです。

 それを象徴するのが、この映画の主題歌「ようこそ、お子さま・ドリーミア」(・はハートマーク)です。

 フルで8分12秒もあるこの曲は3部構成となっていて、第1楽章はお子様ランチのテーマパークをコミカルに歌い上げますが、一転ダークな空気へと変わる第2楽章で、この映画を象徴する歌詞が紡がれます。


主題歌「ようこそ、お子さまドリーミア」はドリーミアの世界を歌った曲です

 この歌の歌手、後本萌葉氏も雑誌のインタビューで、この歌詞について答えています。

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「夢に、大きいも小さいも遅いも早いもない。ぜんぶ素敵」のところとか、大好きです。
引用:主題歌「ようこそ、お子さまドリーミア」後本萌葉インタビュー
徳間書店『アニメージュ2022年10月号』(P58)

 「夢に、遅いも早いもない。ぜんぶ素敵」

 プリキュア映画は子どもだけではなく、一緒に見ている大人にもメッセージが込められています。子どもの隣で一緒に見ている大人に「大人になっても夢を見ても良いのですよ。夢には遅いも早いもないのだから」ということをこの映画を通して伝えているようにも思えます。

 脚本の田中仁氏は、子どもが元気に育つためには保護者の存在が不可欠だとしています。

僕は、子どもが元気に育つためには、保護者の存在が不可欠だと思っています。
トワが環境によって一度は悪い方向に行ってしまったように、環境が子どもの夢を閉ざしてしまうこともある。
『Go!プリンセスプリキュアオフィシャルコンプリートブック』田中仁インタビュー(P82)

 子どもが元気に育つためには、一緒に見ている大人をも幸せにする必要がある、とするのが田中仁氏の、そしてこの映画のプリキュア観なのです。

お子様ランチというメタファー

 プリキュアというアニメは、お子さまランチと良く似ています。

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 子どもが大好きなところ、大人が子どこを喜ばせるために全力で作っているところ、子どものころは大好きだったのに成長するにつれ離れて行ってしまうところ……。


お子さまランチをはじめ、劇中に出てくる食べ物がおいしそうなのもこの映画の特徴です

 本映画では「お子様ランチは誰が食べたって良い」ことが明示されます(もちろんきちんと「大人は食べられない店もある」との言及もあります)。

 「お子様ランチ」は、プリキュアというコンテンツ自体のメタファーとみることもできます。子どもと保護者(大人)が一緒になってお子様ランチを食べる世界こそが、今のプリキュアが示している世界なのです。

ヒーローとは何か?

 また、本映画のラストシーンではコメコメの「キュアプレシャスのようなヒーローになりたい」という夢を通して、「ヒーローとは何か?」が示されます。

 子どもたちにとってのヒーローとは何なのか? そして大人たちにとってのヒーローとは何なのか?

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「和実ゆいみたいなヒーローになること」がコメコメの夢

 そこで提示されるヒーロー像は、この映画を見て体験してほしいのです。きっと大人たちも満足できる結末が見られると思います。

 ずっとプリキュアで「夢」を描いてきた田中氏は、今作でどんな夢を描いたのか。

 「映画デリシャスパーティ・プリキュア 夢みる・お子さまランチ!」。家族連れはもちろんのこと、お一人様の大人でもアツく見られる、そんなすてきな映画です。きっと映画を見た帰りに「お子さまランチ」を食べたくなりますよ。


妖精が人間の姿になるなど、楽しい要素が満載の映画です(YouTubeから)

興行収入も絶好調!

 数字面でも絶好調です。9月26日に発表された全国映画動員ランキング(興行通信社調べ)によると、「映画デリシャスパーティプリキュア 夢みるお子さまランチ!」は、金(祝)土日の初動3日間の累計成績は動員30万8000人、興収3億6700万円を突破しました。

 例年は土日2日間、今回は金(祝)土日の3日間の興収発表なので例年との比較はできませんが、歴代プリキュア映画の中でもかなり高い数字となっています(同じ3日間(土日月(祝))の興収発表だった2010年「映画プリキュアオールスターズDX2希望の光☆レインボージュエルを守れ!」(歴代興収2位)の初動3日間の動員29万6000人、興行収入3億1900万円を上回る数字となっています)。

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 新型コロナの影響で落ち込んでいたプリキュア映画に子どもたちが戻ってきました。

「デリシャスパーティプリキュア」
毎週日曜8時30分より
ABC・テレビ朝日系列にて放送中
(C)ABC-A・東映アニメーション

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プリキュア | アニメ | 東映

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