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「グラディエーター」続編主役に大抜てきされたポール・メスカルって誰? ドラマのブレイクから次世代スターと呼ばれるまで(1/2 ページ)

2020年のBBC放映ドラマ「ノーマル・ピープル(ふつうの人々)」の主演コネル役でブレイクしたポール・メスカル。

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 ポール・メスカル主演、シャーロット・ウェルズ監督の映画「aftersun/アフターサン」が5月26日公開。「グラディエーター」続編の主演にも抜てきされたメスカルと、2018年に『フィルムメーカー・マガジン』のインディペンデント映画の“新しい顔25人”に選ばれたウェルズ監督による作品で、メスカルが長編映画初主演なら、ウェルズ監督にとっても初長編監督作。新しい才能が出会い、秀作が生まれました。


「aftersun/ アフターサン」 (C) Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022

 同作は、フランキー・コリオ演じる11歳のソフィが、メスカル演じる父親カラムと2人きりで過ごした夏休みを、20年後、父親と同じ年齢になった彼女の視点で描く作品。2022年5月にカンヌ映画祭でワールドプレミアされ評判を呼び、10月のロンドン映画祭では凱旋(がいせん)上映。メスカルはこの作品で、米英両方のアカデミー賞主演男優賞にノミネートされました。


父親カラム役を演じるポール・メスカル LONDON, ENGLAND - OCTOBER 13: Paul Mescal attends the "Aftersun" UK Premiere during the 66th BFI London Film Festival at the BFI Southbank on October 13, 2022 in London, England. (Photo by Eamonn M. McCormack/Getty Images for BFI)

 メスカルは、1996年2月2日アイルランド・メイヌース生まれの27歳です。サッカー少年でしたが、けがをきっかけにスポーツの道はあきらめ、トリニティ・カレッジ・ダブリンで演技を学んでいます。卒業直後、ダブリンの名門ゲート劇場で「グレート・ギャッツビー」の主演に抜てきされ、間もなくロンドンでも舞台に立ちます。

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 その後、2020年のBBC放映ドラマ「ノーマル・ピープル(ふつうの人々)」の主演コネル役でブレイク。学生時代の出会いから、くっついたり離れたりを繰り返す男女を主人公に、等身大の恋愛もようが描かれ、2人の関係がどうなっていくのか追わずにはいられないドラマでした。Huluで配信され、イギリスを超えて話題になりました。

 「ノーマル・ピープル(ふつうの人々)」での演技も高評価で、短編映画1本を経て、2021年には「ロスト・ドーター」の脇役で長編映画デビュー、2022年に「aftersun/アフターサン」主演と着実にステップアップ。舞台の方では、2023年のローレンス・オリヴィエ賞男優賞を受賞しています。

 メスカルは、演技を感じさせないのが特徴。「ロスト・ドーター」では、脇役でしたが海辺のリゾートで出会った20歳ほども年上の女性主人公を華やがせる姿が印象的でした。そして「aftersun/アフターサン」「グラディエーター」続編の主演へとつながります。

 オリジナルの「グラディエーター」は、2000年公開の大ヒット作で、アカデミー賞作品賞はじめ多数の映画賞も受賞。リドリー・スコット監督の大成功作として、また、アカデミー賞主演男優賞受賞のラッセル・クロウ、悪役としての魅力を開花させたホアキン・フェニックス、これが遺作となった名優オリヴァー・リードも忘れ難いです。成功当初からあった続編の計画がやっと始動し、メスカルは前作主人公の息子役を演じます。


「aftersun/アフターサン」あらすじ

 「aftersun/アフターサン」で描かれる親子は、別れて暮らしていますが、しっくりと仲むつまじい父娘。とはいえ、ときどき自分の中に沈み込むような父が、メンタルの危うさを感じさせます。

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 作中では、うっかりゴーグルを船上から落としてしまう娘を叱ることはしない父ですが、ショックを受けているのが見て取れ、思わず娘が「高かったでしょ」と気づかいます。経済的にもそれほど余裕がないのであろうことは、値の張らないお手軽パック旅行らしいホテルやカラオケ大会の様子からもうかがえます。それなのに、娘と入った店で、高価な織のラグについて説明を受け、何度か通っては眺め確かめ、ついには買ってしまいます。


 ときを経て当時の父と近い年齢になった娘が、過去を振り返る視点で描かれます。ホリデーで撮ったホームビデオの不安定な映像や、大人になった娘と当時の父が向き合うイマジナリーな映像が、悲しみとノスタルジーの入り交じった気持ちにさせます。

 同作は、脚本も書いたシャーロット・ウェルズ監督と父親がベースになっていることもあり、配給会社A24公式Twitterは、子どもの頃のウェルズ監督と父親の写真を監督のコメントとともにアップ。ウェルズ監督は、映画はフィクションであるとしながら、「映画の中にある真実は私のものであり、愛は私のものです」と述べています。

 ウェルズ監督は同作で英アカデミー賞(BAFTA)新人賞を受賞。主演男優賞ノミニーとして客席にいたメスカルは、亡き父にこの賞をささげるとしたウェルズ監督の受賞スピーチに涙ぐんでいました。


英アカデミー賞受賞者会見でのシャーロット・ウェルズ監督(筆者撮影)

ライター:山口ゆかり

在英ライター。日本語が読める英在住者のための映画情報も書いています。http://eigauk.com

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