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あの有名な歯科医院の看板と思いきや…… まさかの銚子電鉄用に変身した広告が話題 “謎のコラボ”が生まれた経緯を聞いた(1/2 ページ)

首都圏でよく見るインプラントの広告デザインまんま。

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 首都圏の各所で看板をよく見かける「きぬた歯科」が、いよいよバスの車内広告にまで進出してきた……!? と思いきや、「ちょうし電鉄(銚子電気鉄道)」でした。パロディのやり方がナチュラルすぎてスルーしてしまいそうな広告がSNSで話題になっています。

中央線沿線や国道沿いでよく見る「インプラント」の看板にそっくりだけど、「ぬれせんべい」でおなじみ銚子電鉄
元ネタの看板。文言以外全く同じ

 きぬた歯科は東京の西八王子駅前にある歯科医院。羅田泰和院長の顔写真と「インプラント」の文字を押し出した看板を、首都圏に多数設置する独特な広告活動が有名です(※)。

※横浜にも似た広告を出している同名の歯科医院がありますが、そちらは兄の羅田久和さんが運営する別の法人です

 一方、銚子電鉄は千葉県のローカル線。経営難を正直に明かす自虐的なPRが特徴で、過去にはそのなかで生まれた名物「ぬれ煎餅(せんべい)」が収入の大部分を占めていたり、「まずい棒」を売り出したり、ユニークなエピソードで知られています(関連記事)。

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 今回、銚子電鉄はきぬた歯科の許可のもと、同院の看板デザインをそのまま車内広告へ流用。文言を差し替えて、名物のぬれ煎餅を押し出すパロディ広告に仕上げました。なお、院長の顔写真は元ネタのままなので、いったい何の広告なのかと混乱してしまいそうです。

普通に電車とぬれ煎餅が写ったバージョンもあります(普通とは)

 大胆な広告を目撃した人が写真を投稿すると、Twitterで「良いオマージュ」「なんでもありかよ」「企画するほうも採用するほうも、理解のある院長もすばらしい」と話題を呼びました。

なぜ“謎のコラボ”が生まれたのか

 この「脈絡」というものを一切感じさせないコラボレーションは、どのようにして生まれたのか? 銚子電鉄を取材したところ、食品事業部担当課長の明妻さんより経緯を聞くことができました。

 出稿のきっかけは、銚子電鉄の開業100周年。社長と担当者が熱心な鉄道ファンだという、広告代理店の博広社から、「銚子電鉄を応援したい」「そこで、東急バスの車内広告を(銚子電鉄に)有利な条件で出してみませんか」と提案があったのだそうです。

 これを受けた明妻さんが、何か良いプランはないかと思案していたところ、たまたま高速道路から見かけたのがきぬた歯科の看板。東京都清瀬市の職員で、銚子電鉄に派遣されている古林さんが「あれを見ると、地元に戻ってきた感じがします」とつぶやきました。

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 銚子市近辺では見かけないその看板にある「インプラント」の文字を見た瞬間、明妻さんの頭のなかには、「いいプラン」「インパクト」「インプレッサ(明妻さんの愛車)」といったインスピレーションが次々と浮かんだといいます。

 その後、さっそくきぬた歯科に「看板の図案をまねさせていただけないか」と申し出て快諾を得たとのこと。アイデアのきっかけにもなった古林さんもこの案には面白いと賛同したようで、PCが不慣れな明妻さんに代わって原案を作ってくれたといいます。

 上層部からの「なぜきぬた歯科なのか」といった指摘を「ではなぜまずい棒はアリなんですか」とはねのけ、社内的にも企画は成立。東急バスも銚子電鉄の100周年に間に合わせるべく、特別対応で掲出してくれたそうです。

 広告が見られるバスは、東京の目黒区と世田谷区、神奈川県の川崎市で運行している220台。なるべく世田谷区の「砧(きぬた)」を通る車両を選んでいるとのことです。そんなところまでシャレが利いているとは……。

 取材の最後に、「この広告をご提案していただいた博広社様、きぬた歯科様、東急バス様、ツイートしていただいたかたに厚く、厚く御礼申し上げます」と謝辞を述べた明妻さん。「現時点で気付いた人はいないようですが、広告にはもう1つ壮大なダ・ヴィンチ・コードが隠されています」と、謎のコメントを残しています。

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協力・画像提供:銚子電鉄

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