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ハイなクマが大暴れ! 映画「コカイン・ベア」レビュー 実話の先に待ち受けていたのはまさかの優しさでした(2/3 ページ)

クスリ、ダメ絶対(反面教師的な学び)

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コカインをめぐる知能バトルが勃発

 そんなクマに優しい物語(個人的視点)に反して、人間たちに対しては容赦がない。何しろ、クマがすでに摂取したコカイン以外にも、森の中にはいくつもコカインの袋が落ちており、クマは追いコカインをするごとにパワーアップをしていき、そのコカインパワーに人間たちが蹂躙されるからだ。

(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS

 人間たちとしてはクマをパワーアップさせない方法を取りたいところだが、劇中で主に用いられるのはその真逆の攻防戦。「クマがとにかくコカインの袋を狙ってくるので、その中身を投げ捨てたりぶちまけたりして、摂取している隙に逃げる」というものだ。

 このギミックにより、ただの凶暴なクマではあり得ない知能バトルが展開されることとなり、眼前の脅威をパワーアップさせる手段を選ばざるを得ないジレンマも面白い。その他にもバラエティ豊かなアイデアが95分の上映時間に詰め込まれていて、全く飽きることがない。

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(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS

 こうした娯楽性の高さからは、「LEGO ムービー」や「スパイダーマン:スパイダーバース」などで知られるフィル・ロード&クリス・ミラーのコンビが製作に名を連ねている影響も感じられる。彼らの映画はとにかくハイテンションかつギャグ多めの「ドラッギー」と評される作風なのだから。

 また、本作を監督した、俳優としても知られるエリザベス・バンクスは、過去作「ピッチ・パーフェクト2」でもなかなかえげつないギャグを打ち出していた。スタッフの座組みがしっかり内容に反映されたことがここからもうかがえる。

(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS

思わずグッとくる人間ドラマも

 人間ドラマのほうもちゃんとしていて、盛り上がるものになっていたことも特筆しておきたい。それぞれのチームの関係性はわずかな会話から十分にくみ取れるように整理されており、その中には善人または中立的な立場の者もいて、ただハイになったクマに殺されるだけではかわいそうに思えるからこそ、生き残ってくれと心から願うことができるのだ。

(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS

 やんちゃな13歳の少女とその男友達は生意気さと同時にかわいげがあり、母親から分かりやすく「コカインは麻薬の中でも特に悪い」「やったらすぐにバレる」とたしなめられる場面もある。他にも、裏社会から足を洗ったものの妻を亡くし、さらに麻薬王の父から抑圧される青年の立場は感情移入しやすいし、その親友との関係性には思わずグッとくるものがあった。

(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS

 一方、麻薬王である父は、劇中のキャラクターの中でもっとも分かりやすい悪党でもある。この話の流れで「元凶」である彼にどれだけの「制裁」があるのか、それはもうワクワクもんだぁ! であるし、きっと期待に十二分に応えてくれることだろう。

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(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS

 なお、麻薬王を演じたのは「グッドフェローズ」などで知られるレイ・リオッタで、本作が遺作となった。最後に記憶に強く刻まれる憎たらしい悪党を演じ切っており、きっと本人も満足していることだろう。「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」で若き頃のハン・ソロを演じたオールデン・エアエンライク、Netflixで配信中のドラマ「ONE PIECE」で幼き日のサンジを演じた子役クリスチャン・コンヴェリーの存在感と演技にも期待してほしい。

(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS
(C)2022 UNIVERSAL STUDIOS

 そんなわけで、「人間たちに対して容赦がないなとおもいきや、なんだ人間たちのドラマもとっても優しいじゃないか……!」と、グロくて不謹慎に思えたモンスターパニック映画の先に、ちょっぴり予想外の感動も待ち受けている作品だった。意図せずコカインを摂取した者(クマ)は憎まず、麻薬王というコカインを流布する元凶にキチっと制裁を与えるという勧善懲悪の物語としてもまっとうだ。ぜひ、劇場で「クスリ(の流布も)、ダメ絶対」という教訓を受け取ってほしい。

ヒナタカ

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