築50年超えの実家に愛犬と帰省中、能登半島地震が発生し…… 克明な恐怖の記憶とペット同伴被災の実態に「防災の意識が根本から変わりました」(2/3 ページ)
いつ来るか分からない“いつか”のために備えを。
なんとかならないものなんだなと……
―――元小学校はペットの同伴避難は不可とはっきりと明言されていましたか
はっきりとルールとして明言されていたわけではありませんでした。だけど開放されている場所が小さいときは人でいっぱいだったので、ましてや犬も入れてほしいという気は全然なかったのですが……。実家の地域は家屋の倒壊なども無く、一気にたくさんの人が殺到していなかったので、開放される部屋が増えていくと、空いているところもありました。それでそこにジジとトトを連れていけないかとダメ元で、灯油を入れるなどの作業をしてくれているスタッフの方に「カバンに入れているので、犬も入れたりしますか?」と聞いてみたら「いいよいいよ~」って全然気にしないでどうぞ、という感じで言ってくださいました。それでいざジジとトトをカバンに入れて向かおうとしたら、施設の管理を任されている女性に「犬は絶対ダメ」と断られてしまって……。
元小学校も変わったものが置いてあるので、管理も大変だし、犬を入れたことで何かあっては責任が取れないということもあったと思います。それにもともと避難所が一般的には犬はダメというのは承知のうえだったんですけど、不安な中で、犬イコールかたくなに絶対ダメって言われたのは、ちょっと悲しい気持ちと、やはり「なんとかならないものなんだな」というのは感じました。
周りが大変な状況で、人間ですらもう切羽詰まっている状態だったら、 私ももちろん犬は入れられないと思っています。いかなるときでもルールは存在するので、それを破るのも誰かが責任を取らないといけなくなるし。誰がその指揮を取るかは、混乱状況だと難しいところはあるなと思いました。
―――もし親戚のおうちに行けなかった場合は、車中避難をするつもりでしたか
そうですね。やっぱり実家に帰ってそこで一夜明かすっていうのは想像がつかなかったので、そのまま車の中だったと思います。私たちが親戚の家にいった後も、母も実家に戻るのは怖いということで、車の中で一晩寝ていたと言っていました。
―――親戚のおうちでのジジちゃんとトトちゃんは、普段と違う様子を見せましたか
もう全然違っていて。1日の夜に到着したのですが、ジジの方が様子がおかしくて。その日は夜遅くについたので、疲れきっていてすぐに寝ようとお布団に入ったのですけど、ジジだけお布団に来なくて。トイレシートのところにずっと立っていたり、カーテンの裏に隠れたりして、呼んでも来なくて。私ももう早く寝たくて、ジジを連れてきてぎゅっと抱っこして一緒に寝ました。
―――親戚のおうちには何日くらい避難されていましたか
最初は1泊の予定だったんですが、そのあとも余震があったりして、実家に戻るのは不安だったので、新幹線で東京に戻る予定の3日の日まで2泊させてもらいました。新幹線は2日はダイヤが乱れていたのですが、3日には何事もなく動いていたので、無事に東京に戻ることができましたが、新幹線に乗っているときに揺れたらどうしようと不安でした。
ジジとトトは、少なからずトラウマになっている
―――現在は日常生活に戻っているとのことですが、ジジちゃん、トトちゃん、娘さんに地震の影響は見られますか
2匹とも、ちょっとした小さな揺れに前よりも過敏になったような気がします。例えば、戸建てに住んでいるので近くの工事現場の振動を小さく感じることがあるんですけど、それにもすぐ反応するようになったので、少なからずトラウマになっているのかなと思います。娘の方も今までも保育園とか幼稚園で避難訓練はしてたので、地震のときは机の下に入るという行動はしていたんですけど、前よりもちょっと焦るようにはなってしまったかなと思います。
―――夫妻には現在、そのような地震の影響はありますか
私は逆に、今回の地震にしても古い建物が危ないという認識がすごく強くなったので、築2~3年の自宅(東京の家)にいて倒壊するくらいならもう仕方がないなと思えています。今も実家の家族はあの家に住んでいるので、そちらのほうが心配で。祖母は「よい大工さんが建てた家だから大丈夫」とも言っているし、いまさらあの場所から引っ越して違う場所に住むということもなくて。母には耐震強度を上げる工事をしたほうがいいとは言っているのですが。
―――現在は実家の地域の状況はいかがでしょうか
実家は氷見市のなかでは震源地から遠い山の方にあり、そんなに被害は大きくなかったそうです。それでも田んぼ道は陥没してトラックが落ちていました。ですので建物に被害はなくても、道路や水道の復旧は遅れて、1カ月近く断水していたようです。最近、実家近くに住む姉と話したのですが、やっと余震がおさまって、日常が戻ってきていると言っていました。
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