築50年超えの実家に愛犬と帰省中、能登半島地震が発生し…… 克明な恐怖の記憶とペット同伴被災の実態に「防災の意識が根本から変わりました」(3/3 ページ)
いつ来るか分からない“いつか”のために備えを。
防災について軽く考えていたなと思いました
―――今回の地震を受けて、ペット用を含め防災グッズなどの見直しなどはされましたか
最近も地震が多かったので、防災セットみたいなものを用意して、そこに犬用のトイレシートとか、食べ物は重さはあっても缶詰が日は持つので缶詰を、と思って入れていたのですが……今まで、実際にはワンちゃんと一緒に避難するくらいの被災にはあってなかったので、なんとなく、こう、軽く考えていたなと思いました。
私は犬用の手作りごはんを作ったりもするし、ジジとトトはそれを食べてくれるので、何かあっても人間の食事のついでに犬のごはんも作れるかな、と軽い気持ちで考えていたんです。でも実際に地震を経験してみると、まず水がない、火も使えない、調理もできる環境じゃなかったりするので、缶詰やドライフードとか手間がかからない食事はたくさん持っていなきゃいけないなと感じました。
東京に住んでいると、少し移動すればすぐお店があって犬用のごはんも買えるので、ついつい普段メインであげているドライフードもたまにストックが切れていたりして、じゃあ手作りごはんでいいやという感じで対応していたので、ストックも常に大目には持っていなかったのです。でも今回被災して、何かあったときもワンちゃんは水とドッグフードがあれば取りあえず生きていけるから、そのあたりのストックは多めに置くようになりました。
今回は帰省中だったので、逆に旅行セット的にワンちゃんグッズがまとまっていたので、割とすぐに「これ持っていけば大丈夫」という状態で良かったんですけど、じゃあ普段の生活で、すぐにワンちゃんと避難できますか? と言われたら、そんなにちゃんと荷物がまとまってはいなくて。それに親戚の家にいる間も、旅行用にフードなどもまとめて持って行っていたので量が足りたのですが、これでもし新幹線が動かなくて実家の方に長期間とどまっていたとしたら、ネットショップなども配達不可地域になっていたと思うので、たぶん足りなくなっていたと思います。
特にトトは病気があって薬を定期的に飲んでいるので、そういったものも用意しておかないと、いざというときに困るなと思いました。
犬用のフリーズドライみたいな食事も一応持ってはいて、水でもできなくはないと思うのですけど、お湯前提の商品なので、避難中にお湯はなかなか用意できないし……とか、さまざまな部分で防災への認識が甘かったなと思うのと、自分たちは大丈夫と思っていたのが、ある日突然身に降りかかるというのが、災害なのだなと思いました。
あるかどうか分からないいざというときのための準備にお金や手間を費やしたり、家の中のスペースをあけるのは、おっくうではあると思うのですが、少しでも余裕があるのであれば、「自分の身にも何かあるかもしれない」と思って、人間の分も犬の分も用意をしておくべきだなとすごく感じました。
避難・防災……100%の正解は見えない
―――今回の避難時に、「これがあったらよかった」と思った防災グッズやペットグッズはありましたか
多分ワンちゃんと暮らしている人だったら想像がつくようなものにはなるのですが、ごはん類、トイレシート、うんち袋、必要な子はおむつやマナーベルトなど。
あと、今回ジジがスライドドアの前にいたのですが、もしあのときに揺れでドアが少しでも開いていたら、多分逃げていたと思うんです。自宅だとワンちゃん脱走防止にゲートなど設置しているのですが、実家は犬もいないしそういったものはもちろんなかったので、ちょっとした弾みで外に出られるのです。そうしたらジジは迷子になっていたと思います。
地震が起こると犬や猫が飛び出してしまって迷子になっています、という投稿をSNSでよく見かけるのですが、飼い主の管理ミスとかではなくて、脱走は起きてしまうと思いました。実家の猫も実際にいなくなってしまって、揺れがおさまってから家の中に入って探しました。見つかったので良かったのですが……それもあって、迷子札をつけておくといいなと思いました。つい先日私が迷子のワンちゃんを保護したのですが、その子は迷子札に名前と飼い主さんの連絡先があったので無事に返すことができました。家では首輪をつけない方も多いとは思うのですが、いつ何があるか分からないから、災害時のペットの脱走は頭にいれて、迷子になったときに、軽いものでいいから身元が分かるものはつけておいたほうがいいかなと思いました。
―――ペットがいる家庭への震災時のアドバイスや、今回の地震で感じたことを教えてください
アドバイスというほどではないのですが、今回車があってすごく助かりました。ペットと避難する、家にはいられない、避難所も入れないとなったときに、ある程度安全で、かつ、プライベートな空間にもなるので、プライバシーも守られます。最悪の場合でも車内で避難できるので、ワンちゃんや動物と一緒に暮らすならば、何かあったときには車があったらいいなと感じました。
小型犬や中型犬だとカートやカバンに入れて電車などに乗れるので、車の必要性ってあまり感じないかもしれないのですが、避難所のペット同伴問題はすぐに変わるものでもないし、特に大型犬や、簡単に抱っこできない大きさのペットを飼っている場合は移動などを考えると、車があるのはとてもいいなと。ペット同伴専用の避難所もできたのは地震から2カ月近くたってからですし、普通の避難所は家にペットがいない方や苦手な方、アレルギーを持つ方もいて同伴は難しいので、車に避難できるのは大きいと思いました。
―――自分たちでいざというときの居場所を作っておいた方がよいということですね
ペットが私たちにとって大切な存在だからといって、人間より優先される存在ではないことも分かっているし、行政がペットとの避難の状況を改善してくれたらそれはとてもうれしいんですけど、それはあったらラッキーくらいな気持ちでいて。まずは家にペットがいるなら避難所にはいかず家にいる、くらいの覚悟を持っていないといけないなと。現在の状況では自分で何とかしなきゃいけないのだなと思っています。もちろん迷惑にならない範囲で、避難所に入れてもらえればうれしいですけどね。
私は動物が好きなので、殺伐とした環境に動物がいたら気持ちが明るくなると思ってしまうのですが、先にも言いましたがアレルギーの方もいるし、吠えたらうるさいし……何かあったときに自己完結できる環境を飼い主は考えておかなきゃいけない、他人を頼りにしてはいけないなというのはすごく感じました。
―――今回の被災経験で、防災についての意識が変わったのですね
そうですね……ですが、本当に今回はジジとトトは抱えられるサイズだったし、実家から逃げ出していなかったから良かったのですけど、動物は思いもよらない行動をするので……家の中でもリードをずっとつけておくわけにもいかないし、じゃあその行動を防ぐためにどうすればいいか……答えが見えていないですね。避難するときも、日常での生活も、こういうふうになったらどうしようもないよね? ということも結構あって、どうすれば100%正解なのか、答えは見えていないです。
(了)
当時を思い出して懸命に語ってくれたjiji&totoのママさん。「実家の地域はそんなにひどい被害はなかった」とはいえ、3日間の避難でもさまざまなことが起こり、感情も揺れ動いたと言います。
震源地に近い場所に住んでいた人たちは、今も避難所での生活を続けていたり、ペットのために壊れかけた自宅にいたりと、まだ全ての人たちが安全に暮らすのには時間がかかりそうです。東日本大震災から13年、それでもなおペットとの避難に関しては対策は講じられているものの周知が進んでいない現状。またどこで地震などの天災が起きるかは分かりません。ペットが家にいる家庭、これからペットを迎える家庭は、自分たちで家族とペット守る覚悟を持つとともに、ペットとともに安心して避難できるようにいち早く日本全体で対策を講じていくことが必要でしょう。
取材協力/画像提供:jiji&totoさん……X(Twitter/@jijitoto_unit)/Instagram(@jiji&toto)
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