背が高いのはいいことだ 『富士山さんは思春期』で高身長女子に萌えろ!(1/2 ページ)
背が大きいのにかわいい、いや、背が大きいからこそかわいいんだ。8月28日に最新7巻が発売された『漫画アクション』(双葉社)で連載中のマンガ『富士山さんは思春期』。本作の魅力と、作者・オジロマコトさんへのインタビューをお届けする。
富士山牧央(ふじやままきお)、身長181センチ、強豪の女子バレーボール部に所属する中学2年生の女の子――。
そんな彼女が付き合うことになったのは、幼稚園のときからの幼なじみ・上場優一(かんばゆういち)。『富士山さんは思春期』(オジロマコト/双葉社)は、身長差約20センチの凸凹カップルが織りなす青春ストーリーだ。
8月28日には最新第7巻が発売された本作。記事ではその魅力を印象的なコマとともに紹介する。後半ではオジロマコトさんへのインタビューを、未発表の貴重な原稿と併せてお届けしたい。
始まりは、そのまぶしい笑顔
物語は、上場をはじめとする男子バレーボール部(部員3人)が女子の着替えをのぞくシーンから始まる。女子バレーボール部の部長で学年のマドンナである青田さんの下着姿を盗み見るべく、2階の窓から任務を遂行するというアクティブな犯行に及んだ上場だが、目に飛び込んできたのは富士山さんの中学生離れしたダイナマイトボディだった。
その日の帰り道、偶然にも富士山さんと一緒に下校する上場だが、昼間見た光景が頭から離れずもやもやしてしまう。「自分はもしかしたら富士山が好きなのかもしれない。でも、西や小谷野を含め、多くの男子からからかわれている富士山のことを好きだとは言えない」。そんな思いが頭の中で渦巻き、葛藤する上場。
――しかし、その瞬間は突然訪れた。
「すごくおおきいよ あのおねーさん」、すれ違いざまに掛けられた女児からの言葉。いつも男子から身長の高さをからかわれては返り討ちにしている富士山さんにとって、これは禁句だ。女の子に対して振りかぶる富士山さん、あわてて止めようとする上場、そして……。
普段、男子を蹴散らしている富士山さんを見慣れている上場にとって、この笑顔がどれほど魅力的に映ったことか。
この一件で、完全に富士山さんにほれ込んでしまった上場は、その場で交際を申し込みOKをもらう。この時点で富士山さんがなぜ了承したのか、その理由は描かれていない。もしかして何かの伏線? そう考える人もいると思う。だが、中学生のころの恋愛はこういうものではないだろうか。いま好きだから付き合う(もしくは、付き合いたいと思う)、ごちゃごちゃと将来を考えるのはまだまだ先のこと。何といっても二人はまだ思春期なのだから。
「富士山さんは思春期」には、上場と同じ男子バレーボール部のメンバーである西や小谷野をはじめ、野球部のイケメン・梅木や、富士山さんの友達の三好や高木といったキャラクターが登場する。髪形が奇抜だったり、実家が超お金持ちだったりといった設定は存在しない。ごくごく普通の中学生であり、その普通の中学生を描ききるところにオジロさんの技量が表れている。
部活動の合同合宿中に男子が女子の部屋に遊びに行ったり、「だれだれが告白するみたいだぞ」という話で盛り上がったり、富士山さんと上場に至っては、親にばれないように年賀状を送り合うだけでハイテンションになったりと、「ああ、そんなことあったな」と、自身の過去に照らし合わせて感傷に浸ってしまいそうになる。
身長差に萌える3つのシーン
本作の魅力は何といっても、二人の身長差が生み出すシーンの数々。上場は160センチ(後の身体検査で162センチに伸びる)で男子中学生としては平均的な身長だが、富士山さんと比べると大人と子どもほどの差がある。
こちらは制服のネクタイを交換している一コマ。交換しているのがネクタイというところがポイントだ。
彼女が彼氏のワイシャツを着て、萌えそで(そでが長いことで手が半分くらい隠れ、かわいく見える着こなし方)になっていたり、ワイシャツがワンピース状態になっていて、一種のお色気シーンを演出したりすることがある。しかし、ここではそういった表現はできない。なぜなら、富士山さんの方が背が高いからだ。
そこでネクタイなのである。ネクタイならば身長に左右されることは少ない。
さらにこちらは、幼稚園児のころ、背が高いからといった理由で不当な扱いを受けた富士山さんを慰めるシーン。富士山さんの手から傘を取り上げ、無言で差す上場。「気にするなよ」といった、富士山さんを気遣うようなセリフが出てきそうなものだが、傘を差すところからこの回が終わるまで、上場がしゃべることはない。
本作には、絵だけで魅せる場面が数多く登場する。絵だけで言いたいことを伝えるのは高い技術を要するが、オジロさんはそれをやってのける。
特に記者が推したいのは、富士山さんが握ったおにぎりを上場が食べるシーンで見せたこの表情。
中学生らしいあどけなさを残しつつも、大きく見開き、こちらを見つめる(読者ではなく上場を見ているわけだが)その瞳に心を奪われそうになる。自分が作ったものを好きな人に食べてもらう。そこにある「うれしさ」と「恥ずかしさ」、そしておいしくなかったら……という「ちょっとした不安」。それらが入り交じった表情がこの一コマに凝縮されている。
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