2016年、人は空を自由に飛ぶ! 未来を引き寄せたホバーボード「Flyboard Air」をフランスで見た!!

これはすごいものを見てしまった。そんな気持ちでいっぱいです。未来は今だった。

» 2016年05月03日 08時00分 公開
[城川まちねねとらぼ]

 「これはフェイクに決まっている」「CGではないか」――4月にYouTubeに投稿されたある動画が、ネットを騒然とさせました。そこに映っていたのは、大き目のドローンのようなものの上に立って、空を飛び回る男の姿。SF映画やアニメに登場する未来の乗り物だ! と驚喜する者、にわかには信じられないという立場を崩さない者、その反応はさまざまでした。

一躍注目を集めたFlyboard Airのテストフライト動画

 これを開発したのは仏Zapata Racing。ジェットボードの開発で知られる同社の「Flyboard Air」は、ジェットボードのような水圧ではなく、ジェット気流で浮上しながらの走行が可能な新型ホバーボード。そんなZapata RacingがFlyboard Airでの飛行でギネス世界新記録を狙うということで、ねとらぼ編集部では現地に向かい、その目撃者となってきました。そこで目にしたのは、Flyboard Airに乗って宙を舞う男の姿。ほ、ホントだった! トレ!!! ビアンッ!!

advertisement
大観衆の見守る中、空を舞うFlyboard Air 大観衆の見守る中、空を舞うFlyboard Air FLYBOARD AIR (C) LIAM McKENNA

 4月30日、南仏マルセイユ近郊ソセ=レ=パンの海岸で行われたこの挑戦。ギネス公式認定員も含め、国内外から多くの人が集まり、注目する中、Zapata Racing創立者のフランキー・ザパタが搭乗するFlyboard Airは、小型飛行機のような音を響かせ、これまでのホバーボード飛行記録(アレクサンドル・ドュリュが2014年に達成した275.9メートル)を大幅に塗り替える2252メートルの飛行に成功し、ギネス世界新記録を打ち立てました。

大観衆の見守る中、ギネス世界新記録を打ち立てたFlyboard Air (C) Zapata Racing

Flyboard Airでのギネス新記録挑戦 操縦するザパタはもちろん、周りも耳栓を利用したほど FLYBOARD AIR (C) LIAM McKENNA
Flyboard Air Flyboard Airでギネス新記録に挑戦中 FLYBOARD AIR (C) LIAM McKENNA
advertisement
Flyboard AirFlyboard Air FLYBOARD AIR (C) LIAM McKENNA

 記録達成後の公式会見でザパタは、「Flyboard Airの開発には5年掛かりました。2015年12月に初走行し、ここまで(この距離を走ることができるまで)には5カ月掛かりました。チーム全体が一生懸命頑張って思った以上に仕事は早く進んだと思います。実は、こんなに世界中から反応があるとは考えておらず、僕自身驚いています。中国のメーカーや、各国の軍隊からも興味が寄せられています。でも今は、ただ幸せです。とてもうれしい」と喜びを語っています。

 「Flyboard Airのテストフライト動画を半信半疑でとらえる向きもあったが、どう思っていたか?」という質問には、「とても楽しんでいたよ」と余裕の回答。「みんながFlyboard Airをフェイクだと思ったのは、これがそんなにシンプルなものだとは思わず、もっと複雑な構造を想像したからじゃないかな。実際、最初に僕がこれを発案したときには、誰もそんなことができるとは信じなかったね」とコメントしました。

 また、「なぜこれを作りたいと思ったのか?」という質問はよく受けるようで、「これにはたくさんの可能性があるのは確か。しかし今のところ、僕はこれを何のためのものか、誰のためのものかということは決めていない。軍事利用なのか、個人利用なのか、あるいは販売するとか資金を得るとか、そんなことも考えていない。ただ夢があって、チーム全員で一丸となってそれをかなえたところなんだよ」と語っています。

Flyboard Airに接近!

 飛行後、Flyboard Airを近くで撮影することができました。Flyboard Airの燃料は背中のバックパックに格納され、チューブで本体とつながれており、4つのターボエンジンを手元のリモコンで起動させる仕組みだといいます。

advertisement
Flyboard Air Flyboard Air。靴ははじめから装着されています
Flyboard Air正面 Flyboard Air正面。TRUC DE FOUはスポンサーのロゴのよう
Flyboard Air後方 Flyboard Air後方

Flyboard AirFlyboard Air 本体左右には70ミリ12ブレードの電動ダクテッドファン

Flyboard Air このチューブが背中の燃料と繋がります

Flyboard Airのターボエンジン Flyboard Airを上からみたところ。エンジンは4つあり、1つ壊れてもすぐに落下することはないという
Flyboard Airのターボエンジン Flyboard Airを下から撮影することは禁じられた。スペック上の最高時速は150キロ、最高高度は3000メートルまで浮上できるとのこと。3000メートルまで上がってそこからスカイダイビング楽しんだりしたい!

最終的な夢は、僕の家からFlyboard Airで出かけられるように

 公式会見後、大記録を達成したザパタに話を聞くことができました。

Zapata Racing創立者のフランキー・ザパタ Zapata Racing創立者のフランキー・ザパタ

―― ギネス世界新記録おめでとう! Flyboard Airは日本の「エウレカセブン」というアニメに出てくるリフボードみたい(エウレカセブンを紹介しながら)!

ザパタ エウレカ? (画像を見て)おぉ! 本当だ、これはまさにFlyboard Airそのままだね!

―― SF映画の世界がまた1つ現実になったようなFlyboard Airですが、多くの人がこれを日常で使える日も遠くない?

ザパタ 僕もSF映画を見て憧れるような普通の少年時代を過ごしたからその気持ちはよく分かる。ただ現時点ではそんな世界の実現にはちょっとだけ遠いかもしれない。

 まず、安全性の問題について。僕はエンジニアではないけれど、Flyboard Airの仕組みはすべて理解するよう努めてきた。例えばターボエンジンもそうだけど、ほかのパーツもすべて、ひとつが壊れてもほかがカバーして動くようになっていて、どこかが壊れたからといってすぐに落下してしまうこともない。だから僕はFlyboard Airの安全性が車やバイクよりも低いとは考えていないんだ。

 それでも、ほぼ完全な安全性を確立するためには、やらなければならないことはまだたくさんある。各国に受け入れてもらうには、マシン本体のことだけではなく、政府の許可を取ったりもしなければならないしね。

―― あなたのようにスポーティブで肉体的に強くない人でも乗りこなせる?

ザパタ どんな人でも乗れるよ。まずは水圧で飛ぶFlyboardで練習すると良いんじゃないかな。コツさえつかめば数時間の練習で乗れるようになると思う。

―― Flyboard Airを完成させる上で、一番大変だったことは?

ザパタ もちろんいろいろと試行錯誤はあったけど、それほど大変だったことはないかな。あえていうなら“バランス”の問題。「こんな小さなものが?」と驚く人も多いし、はじめはもっと大きなサイズのものを作ろうとしていたんだけど、結局このサイズがベストだった。ただ、2015年12月にはじめて乗ったときにはひどかった。ひっくり返ったよ(笑)。

フランキー・ザパタと息子 ギネス記録更新を喜ぶザパタと息子

―― 実際に目にしても、どうバランスを取り、どう方向転換しているのか不思議でした。

ザパタ Flyboard Airの操縦はとても簡単。身体を前傾させると前へ進む。スピードを落とすには腰を落として少し膝を曲げる。曲がりたければ重心を左右に移動させる。ただそれだけでジェット気流の方向が変わり、思う方向へ動くことができるんだ。

 マシンのモーメントとしては自転車やバイクに似ている。自転車に乗るとき、ずっとバランスを取りながら乗らないだろ? ただ、ポイントを探すだけ。そのポイントをつかめればあとは自然に走るんだ。それに、一度コツをつかめば一生乗り方を忘れることはないだろう? 操縦者の身体の動きについて言えば、スキーに似ているね。

―― ギネス世界新記録を達成したばかりですが、次の挑戦はもう決めている?

ザパタ もちろん。水上で走る今のFlyboard Airはまだプロトタイプ。地上でも、街中でもどこでも走ることができるようにしたい。それは実現可能だし、それほど難しいことではないと考えているんだ。最終的な夢は、僕の家からこれで出かけられるようになる、ということさ。


 チームが団結してプロジェクトに身を捧げ、一般的なフランスの会社の3倍の早さで仕事が進んだと話すザパタ。開発は想定したよりもスピーディーに進み、最初の試乗からわずか5カ月でギネス世界新記録を達成。2週間後には米フォード社が正式にパートナーとなる予定だとしています。

 「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」と記したのは、フランスのSF作家ジュール・ヴェルヌ。人間が自在に空を飛ぶ、という夢は、現実となりつつあります。

Zapata Racingのチーム Zapata Racingのチーム

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2502/25/news024.jpg ごはん炊き忘れた父「いいこと閃いた!」→完成した弁当に爆笑「アンタすげぇよ!」 息子「意味ねぇことすんなよ」
  2. /nl/articles/2502/25/news133.jpg パ・リーグ本塁打王、1シーズンで“激痩せぶり”に心配の声……104キロから別人レベルの姿に「マジで誰?」「どっか悪くしたんか」
  3. /nl/articles/2502/24/news022.jpg 気配のない“カニのたまり場”に買い物かごを沈めて翌日…… 恐る恐る引き上げると“ヤバい光景”「おお!」「感動しました」
  4. /nl/articles/2502/24/news078.jpg 浜崎あゆみ、息子の参観日の“全身CHANELコーデ”を反省 「消えたいぐらい恥ずかしかった」「完全に間違えた」
  5. /nl/articles/2502/24/news030.jpg 余った毛糸は捨てないで! 四角く編んでいくと……目からウロコのアイデアに「知れてよかった」「素晴らしい」
  6. /nl/articles/2502/25/news061.jpg 「これは便利ですね!!」 洗濯バサミとS字フックの“予想外の使い方”が340万表示 目からウロコの活躍シーンに「参考にします」
  7. /nl/articles/2502/25/news080.jpg 無印良品の590円“お風呂アイテム”が「全人類ぜったい買うべし!!」 ガチな名品に「欲しすぎる」「私も使ってます!」と590万表示
  8. /nl/articles/2502/25/news033.jpg 娘に抱っこされている“小さな柴犬”が6年後…… 当時を再現した姿に「たまらん」「飼い主さんと同じ顔してる」
  9. /nl/articles/2502/25/news076.jpg 30年以上前の製品がかっこいい ソニーの小型ラジオのデザインが「すごい好き」「いまでも通用しそう」
  10. /nl/articles/2502/25/news082.jpg ←2カ月 8カ月→ 大型種の猫、驚がくの成長ビフォーアフターが170万表示 「ええええぇぇぇ!?」「本当に猫?」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 和菓子屋で、バイトの子に難題“はさみ菊”を切らせてみたら……「将来有望」と大反響 その後どうなった?現在を聞いた
  2. 希少性ガンで闘病中だったアイドル、死去 「言葉も発せないほどの痛み」母親が闘病生活を明かす
  3. 芸能界引退した「ショムニ」主演の江角マキコ、58歳の近影にネット衝撃「エグすぎた」 突然顔出しした娘とのやりとりも話題に
  4. “きれいな少年”が大人になったら→「なんでそうなったw」姿に驚がく 「イケメンの無駄遣い」「どっちも好きです!笑」
  5. 余った毛糸は捨てないで! 四角く編んでいくと……目からウロコのアイデアに「知れてよかった」「素晴らしい」
  6. コストコで販売「生カキ」原因で体調不良か…… 全国で1万食自主回収「深くお詫び」
  7. ごはん炊き忘れた父「いいこと閃いた!」→完成した弁当に爆笑「アンタすげぇよ!」 息子「意味ねぇことすんなよ」
  8. 瀬戸内海で漁をしていたら突然異変が…… 揚がってきた“取ってはいけない生物”に衝撃 「初めて見ました」と70万再生
  9. ママが反抗期の娘に作った“おふざけ弁当”がギミックてんこ盛りの怪作で爆笑 娘「教室全員が見に来た」
  10. 温かそうだけど…… 呉服屋さんが教える「マフラーの巻き方」になぜか既視感 「あの巻き方ってこうやってたの!?」
先月の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  4. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  9. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  10. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議