2016年、人は空を自由に飛ぶ! 未来を引き寄せたホバーボード「Flyboard Air」をフランスで見た!!
これはすごいものを見てしまった。そんな気持ちでいっぱいです。未来は今だった。
「これはフェイクに決まっている」「CGではないか」――4月にYouTubeに投稿されたある動画が、ネットを騒然とさせました。そこに映っていたのは、大き目のドローンのようなものの上に立って、空を飛び回る男の姿。SF映画やアニメに登場する未来の乗り物だ! と驚喜する者、にわかには信じられないという立場を崩さない者、その反応はさまざまでした。
これを開発したのは仏Zapata Racing。ジェットボードの開発で知られる同社の「Flyboard Air」は、ジェットボードのような水圧ではなく、ジェット気流で浮上しながらの走行が可能な新型ホバーボード。そんなZapata RacingがFlyboard Airでの飛行でギネス世界新記録を狙うということで、ねとらぼ編集部では現地に向かい、その目撃者となってきました。そこで目にしたのは、Flyboard Airに乗って宙を舞う男の姿。ほ、ホントだった! トレ!!! ビアンッ!!
4月30日、南仏マルセイユ近郊ソセ=レ=パンの海岸で行われたこの挑戦。ギネス公式認定員も含め、国内外から多くの人が集まり、注目する中、Zapata Racing創立者のフランキー・ザパタが搭乗するFlyboard Airは、小型飛行機のような音を響かせ、これまでのホバーボード飛行記録(アレクサンドル・ドュリュが2014年に達成した275.9メートル)を大幅に塗り替える2252メートルの飛行に成功し、ギネス世界新記録を打ち立てました。
記録達成後の公式会見でザパタは、「Flyboard Airの開発には5年掛かりました。2015年12月に初走行し、ここまで(この距離を走ることができるまで)には5カ月掛かりました。チーム全体が一生懸命頑張って思った以上に仕事は早く進んだと思います。実は、こんなに世界中から反応があるとは考えておらず、僕自身驚いています。中国のメーカーや、各国の軍隊からも興味が寄せられています。でも今は、ただ幸せです。とてもうれしい」と喜びを語っています。
「Flyboard Airのテストフライト動画を半信半疑でとらえる向きもあったが、どう思っていたか?」という質問には、「とても楽しんでいたよ」と余裕の回答。「みんながFlyboard Airをフェイクだと思ったのは、これがそんなにシンプルなものだとは思わず、もっと複雑な構造を想像したからじゃないかな。実際、最初に僕がこれを発案したときには、誰もそんなことができるとは信じなかったね」とコメントしました。
また、「なぜこれを作りたいと思ったのか?」という質問はよく受けるようで、「これにはたくさんの可能性があるのは確か。しかし今のところ、僕はこれを何のためのものか、誰のためのものかということは決めていない。軍事利用なのか、個人利用なのか、あるいは販売するとか資金を得るとか、そんなことも考えていない。ただ夢があって、チーム全員で一丸となってそれをかなえたところなんだよ」と語っています。
Flyboard Airに接近!
飛行後、Flyboard Airを近くで撮影することができました。Flyboard Airの燃料は背中のバックパックに格納され、チューブで本体とつながれており、4つのターボエンジンを手元のリモコンで起動させる仕組みだといいます。
最終的な夢は、僕の家からFlyboard Airで出かけられるように
公式会見後、大記録を達成したザパタに話を聞くことができました。
―― ギネス世界新記録おめでとう! Flyboard Airは日本の「エウレカセブン」というアニメに出てくるリフボードみたい(エウレカセブンを紹介しながら)!
ザパタ エウレカ? (画像を見て)おぉ! 本当だ、これはまさにFlyboard Airそのままだね!
―― SF映画の世界がまた1つ現実になったようなFlyboard Airですが、多くの人がこれを日常で使える日も遠くない?
ザパタ 僕もSF映画を見て憧れるような普通の少年時代を過ごしたからその気持ちはよく分かる。ただ現時点ではそんな世界の実現にはちょっとだけ遠いかもしれない。
まず、安全性の問題について。僕はエンジニアではないけれど、Flyboard Airの仕組みはすべて理解するよう努めてきた。例えばターボエンジンもそうだけど、ほかのパーツもすべて、ひとつが壊れてもほかがカバーして動くようになっていて、どこかが壊れたからといってすぐに落下してしまうこともない。だから僕はFlyboard Airの安全性が車やバイクよりも低いとは考えていないんだ。
それでも、ほぼ完全な安全性を確立するためには、やらなければならないことはまだたくさんある。各国に受け入れてもらうには、マシン本体のことだけではなく、政府の許可を取ったりもしなければならないしね。
―― あなたのようにスポーティブで肉体的に強くない人でも乗りこなせる?
ザパタ どんな人でも乗れるよ。まずは水圧で飛ぶFlyboardで練習すると良いんじゃないかな。コツさえつかめば数時間の練習で乗れるようになると思う。
―― Flyboard Airを完成させる上で、一番大変だったことは?
ザパタ もちろんいろいろと試行錯誤はあったけど、それほど大変だったことはないかな。あえていうなら“バランス”の問題。「こんな小さなものが?」と驚く人も多いし、はじめはもっと大きなサイズのものを作ろうとしていたんだけど、結局このサイズがベストだった。ただ、2015年12月にはじめて乗ったときにはひどかった。ひっくり返ったよ(笑)。
―― 実際に目にしても、どうバランスを取り、どう方向転換しているのか不思議でした。
ザパタ Flyboard Airの操縦はとても簡単。身体を前傾させると前へ進む。スピードを落とすには腰を落として少し膝を曲げる。曲がりたければ重心を左右に移動させる。ただそれだけでジェット気流の方向が変わり、思う方向へ動くことができるんだ。
マシンのモーメントとしては自転車やバイクに似ている。自転車に乗るとき、ずっとバランスを取りながら乗らないだろ? ただ、ポイントを探すだけ。そのポイントをつかめればあとは自然に走るんだ。それに、一度コツをつかめば一生乗り方を忘れることはないだろう? 操縦者の身体の動きについて言えば、スキーに似ているね。
―― ギネス世界新記録を達成したばかりですが、次の挑戦はもう決めている?
ザパタ もちろん。水上で走る今のFlyboard Airはまだプロトタイプ。地上でも、街中でもどこでも走ることができるようにしたい。それは実現可能だし、それほど難しいことではないと考えているんだ。最終的な夢は、僕の家からこれで出かけられるようになる、ということさ。
チームが団結してプロジェクトに身を捧げ、一般的なフランスの会社の3倍の早さで仕事が進んだと話すザパタ。開発は想定したよりもスピーディーに進み、最初の試乗からわずか5カ月でギネス世界新記録を達成。2週間後には米フォード社が正式にパートナーとなる予定だとしています。
「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」と記したのは、フランスのSF作家ジュール・ヴェルヌ。人間が自在に空を飛ぶ、という夢は、現実となりつつあります。
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本物の登場まで、こちらの卓上おもちゃで楽しみながらお待ちください。
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