世界興収10億ドル突破 実写版「美女と野獣」はなぜ心を打つのか、ビル・コンドン監督に聞いてみた
「美女と野獣」オタクを公言するビル・コンドン監督。
1991年にディズニーが制作し、アニメーション映画として史上初めてアカデミー作品賞にノミネートされた不朽の名作「美女と野獣」が、2017年、監督にミュージカル作品「シカゴ」「ドリームガールズ」を手掛けたビル・コンドン、ベル役に「ハリー・ポッター」シリーズでヒロインを演じたエマ・ワトソン、野獣役にブロードウェイ俳優でもあるダン・スティーヴンスにより実写化され、生まれ変わりました。
既に公開されている全米などの地域では、4月13日に世界興収で10億ドルを突破。ディズニーアニメーションの名作を実写化した「マレフィセント」や「シンデレラ」を超え、2017年公開作品でもNo.1のペースとなっています。エマにとっても、デビュー作「ハリー・ポッターと賢者の石」の興収を塗り替える作品となり、ハーマイオニーからベルへの華麗な転身を遂げたといえます。
今回は4月21日の劇場公開に先駆け、「美女と野獣」オタクを公言しているビル・コンドン監督に、作品に込めた思いや、作品の魅力を伺いました。
「もともとの世界観に、2017年という今の時代も反映」
―― コンドン監督自身が「美女と野獣」オタクと聞きましたが、この作品のどこがあなたを魅了し続けているのでしょうか。
コンドン 「美女と野獣」が作られた1991年は、ミュージカル業界ではヒット作が生まれず、砂漠のような時代でした。「美女と野獣」は、アニメーションにもかかわらず、まるで生のミュージカルを見ているように迫力のある作品に仕上がっています。また、作中に出てくる楽曲全てが、古き良き時代のミュージカルや伝統に対し、しっかりと敬意を表して作られているところにも魅力を感じています。
―― ミュージカル監督として高く評価していらっしゃるんですね! では、「美女と野獣」で一番好きなバージョンは、ディズニーのアニメーション? それとも、ブロードウェイなどのものですか?
コンドン 全てが素晴らしいと思いますが、家族で楽しめるブロードウェイバージョンは、特に気に入っています。
―― お気に入りのブロードウェイバージョンも含め、「美女と野獣」にはさまざまなバージョンがありますが、自分なら実写化で何ができると考えたのですか。
コンドン 「美女と野獣」の世界やキャラクターは、本当に存在するんだ! と皆さんに思ってもらえる作品に仕上がっていると思います。また、もともとの世界観に、2017年という今の時代も反映することで、見た人がより共鳴できるようなものを目指しました。
―― 作中には、ベルの過去をはじめとした、実写オリジナルのストーリーもありますが、こうしたものを入れた意図は?
コンドン 「美女と野獣」の中には、私自身がもともと抱いていた数々の疑問――なぜベルとお父さんは合わない村に住んでいるのか、ベルのお母さんはどうしたのか――がありました。その答えを見つけていく中で、実写のキャラクターが作り上げられていったのです。
―― 確かに、オリジナルストーリーがあることで、実写版を作った意味が増したと感じました。今回、ベル役のエマと、野獣役のダンのキャスティングは、すぐに思い浮かんだと聞きましたが、そんな2人が行った仕事で、期待以上だったことは?
コンドン 私の想像以上に、エマとダンの歌唱力は素晴らしいものでした。もともとの声質はミュージカル向きだったものの、歌に対しては未熟だった2人ですが、きっと今日この場で歌うことになっても、迫力のある歌を見せてくれるまでに成長しました。
これはエマとダンに限りませんが、この作品に関わってくれた全ての俳優が、自分の今まで経験や研究してきた演技をそれぞれの役に反映してくれたことで、ある種彼らの集大成のような演技になっていると思います。
―― 今回の「美女と野獣」は、アニメーションよりも、ベルがフェミニズムに歓迎されるような描写が強いと感じました。ベル役のエマも、積極的なフェミニスト運動をしています(関連記事)。何か、女性へ伝えたいメッセージがあったのですか?
コンドン 今回の「美女と野獣」は、現代の人たちがより共感できるような要素を加えており、例えば、ベルは美しさへのこだわりや執着がなく、これは、「美しさだけが女性の全てではない」という現代では主流である考えの下、まだその考えを受け入れることができないステレオタイプの人たちと戦っている現代の女性に対してのエールになっています。
また、ベルを他人に頼らずに運命を自分自身で切り開くような、強い女性として表現しているところもあり、その姿も女性の魅力として表現できているかなと思います。
―― 私自身も、とても励まされました! 最後の質問ですが、美しいミュージカルシーンの数々、何度もアニメで見て聞き覚えのある曲なはずなのに、全てが真新しく感じました。監督自身が、一番お気に入りのミュージカルシーンとその理由を教えてください。
コンドン 全て気に入っていますが、特にお気に入りは、ベルのことを愛した野獣が彼女を解放した後に歌った切ないバラード「Evermore(ひそかな夢)」です。新曲ということもありますが、彼が「自分は人を愛することができる」ことに気付いたと同時に、「自分は永遠に野獣の呪いから逃れられない」ことにも気づいてしまった複雑な心情と、いつか愛する女性・ベルと再会できるかもしれないという願いを表現した、奥深い歌です。
また、ミュージカル作品における歌の役割は、ストーリーとストーリーの間を埋めたり、ストーリーを説明したりといったことですが、「Beauty and the Beast(美女と野獣)」という歌は、2人がダンスを始める作中ではメインの1つとなるシーンで流れるもので、その役割はとても重要で、素晴らしいものといえます。
アニメーションを見たことがあっても、新たな気持ちで楽しめる実写版「美女と野獣」。実写ならではの美しさを体感してみてはいかがでしょうか。
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