鳴っているか分からないぐらいでいい―― 名曲を生み出してきた下村陽子がアニメ「ハイスコアガール」で目指した意外な曲作り(1/2 ページ)
「キングダム ハーツ オーケストラ ワールドツアー」中の下村陽子さんを直撃しました。
格闘ゲームブームに沸いた1990年代のゲームセンターを舞台に、少年・少女の熱い戦いと甘酸っぱい恋模様を描くテレビアニメ「ハイスコアガール」(原作:押切蓮介さん)。同作を象徴するゲームとして登場するのが、対戦型格闘ゲームの火付け役になったといわれるカプコンの名作「ストリートファイターII」(以下、ストII)です。
アニメのキャスト&スタッフが発表された際、多くのゲームファンの注目を集めたのが音楽にクレジットされた「下村陽子」の名前でした。下村さんは、劇中でも重要な役割を持つ「ストII」や「ファイナルファイト」といったゲームの音楽を手掛けた作曲家であり、まさに「ハイスコアガール」の音楽を担当するにはうってつけの人物といえるでしょう。
ねとらぼでは、アニメの制作統括を担当したJ.C.STAFFのチーフプロデューサー・松倉友二さんに続き、下村さんにもインタビューを実施。制作の裏側から、効果音まで手掛けていたストII制作時のエピソード、アニメとゲームにおける音楽の役割といった話まで伺いました。
ゲーム音楽と被らない“アコースティック”な曲作り
―― 制作統括の松倉さんとは、2005年のアニメ「極上生徒会」以来のタッグですね。テレビアニメの音楽を担当するのは「DAN DOH!!」「極上生徒会」に続く3作目ですが、オファーが来たときはどう思いましたか?
下村陽子(以下、下村) 私でいいんでしょうか……って(笑)。ここ2年くらい大きなタイトルが重なって、ずっとばたばたしていたんですけど、作曲する時間は取れるかなー……と思える時期ではありました。結果的にはすごいばたばたになっちゃいましたけど(笑)。
―― 原作コミックはオファーがあってから読み込まれたそうですね。
下村 そのお話をいただいてから、資料として送っていただきました。一読したときは、さらっと読んですごく面白い作品だなと思ったんですけど、2回目はラブコメ感にキュンキュンしてしまって。以降の巻は全部自分で発売日に買っています。
―― 作曲する上でリクエストされたことはありましたか?
下村 こういうものはありました(「日常」「2人きりの状況」「春雄熱く」など、各曲のイメージが短い言葉で書かれたリストを指しながら)。最初にPV用の曲を作曲したのですが、そのリストにあるように「ガイル」を思い出させるような曲をと。PVを見た人からはガイルだガイルだって言われるんですけど、ガイルさんが出てくるところで掛かる曲っていう意味であって、アレンジというわけではないんです(笑)。
―― 下村さんというとピアノ曲の印象が強いですが、「ハイスコアガール」でも日常のテーマではピアノをよく使われていますね。
下村 ピアノと弦がメインですね。「ハイスコアガール」では当然ゲームの画面がよく出てきますし、ゲームの音も鳴るので、シンセとかを使うと雰囲気がかぶってしまう可能性がありました。それで真逆の方がいいかなと。いわゆる日常のシーンで掛かる曲は、ふわっとした雰囲気が作りやすいというのもあって、特殊なものを除いてアコースティックな雰囲気にしています。
―― 事前に全ての曲を聞いたのですが、確かに、ゲーム音楽と被らないような曲になっていると感じました。ただ一方で、どことなくゲーム音楽っぽいと感じる部分もありました。
下村 えー! やっぱり出ちゃうんでしょうか(笑)。よく、「この曲は下村陽子っぽいよね」とか「“下村節”が〜」って言われますけど、下村陽子らしさってよく分からないんですよね。Wikipediaには「16ビートのバトル曲」って書かれていますけど、しっとりとした泣きの曲でも下村節と呼ばれたりするし。もちろん自分では、下村陽子っぽくしようと思って作っているわけではないんですけどね。
目指したのは“誰が書いたのか分からないような”クセのない曲
―― 作曲する上でこだわったことや挑戦したことはありますか?
下村 普段は激しい曲だったり泣かせる曲だったりと、割と濃い曲ばかり書いているんです。でも今回は日常の曲が多いので、できる限り濃くならない、平たくいうと“誰が書いたのか分からない”くらいにクセのない曲を書こうと考えていました。“鳴っているか分からないぐらい”でいいんじゃないか、「え? こんな曲あったっけ?」というぐらい印象が薄い曲でもいいと思っていたんですけど……漏れ出ていたみたいですね(笑)。
―― 下村さんが音楽を担当するということで、ゲーム好きの間で話題になっていたことを考えると驚きの回答でした。あえて自分らしさを消そうとしたのはなぜですか?
下村 これは私の考え方なんですけど、日常ってリアルであればあるほど音楽はいらないと思うんです。実際、こういう風に会話してるときって音楽は鳴っていないじゃないですか。だから例えば、春雄の登校シーンでは、彼らにとってのリアルでは音楽が鳴っているところを私はあまり想像できなかったんです。それで、できるだけ空気のような曲がいいんじゃないかと。
ただ、なぜか私が作ると日常をテーマにしているつもりなのに、どうしても先ほどのリストでいうところの「心情」の方で採用されてしまって。いつまでたっても日常の曲ができないみたいなことはありました(笑)。
―― 泣かせる曲を作っている弊害がこんなところで……(笑)。下村さんといえば「MEGALOMANIA」(「LIVE・A・LIVE」のボス戦でのテーマ曲)のような熱い曲も人気がありますが、過去のインタビューでバトル曲があまり得意ではないと語っていたのが意外でした。
下村 得意じゃないというか、作るのがしんどくて(笑)。私はいつもボス曲を1曲作ったら5年は寿命が縮むって言っているんですが、私の場合、ボス曲って自分の気持ちをものすごく盛り上げて作らないといけないんです。特にラスボスの曲だと生きるか死ぬか、世界を救えるかどうかっていうところで掛かる曲なので、ユーザーさんの気持ちを盛り上げたいと思うし、ユーザーさんの気持ちにも負けたくなくて。日常の曲は気持ちをリラックスさせて書けるからいいんですが、バトルばかり10曲とかってなると、「うーん、フィールド曲3曲ぐらい入れてもらえませんか」って言いたくなるぐらいで(笑)。
―― そういう意味での苦手だったんですね(笑)。現在も「キングダム ハーツ オーケストラ ワールドツアー」でお忙しくされていますが、アニメって見られていますか?
下村 最新話はまだなんですけど、追っかけで見ています。
―― 自分の曲が流れてくるのを聞いてどうですか?
下村 不思議な気持ちですね。ストIIという二十何年前に作った曲と自分が今作った曲が同じ作品の中で流れるというのがすごく新鮮で、不思議な感覚です。
―― 当時の曲を聞いて懐かしさもあったかと思います。
下村 曲自体は、最近でも「大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL」でバルログの曲をセルフアレンジしていますし、いまでも聞く機会は多いんです。それよりも効果音やボイスがすごく懐かしくて。
―― 確か、ストIIのころは効果音も手掛けられていたんですよね。思い出深いエピソードはありますか?
下村 私はノウハウが全くなかったので、すごく苦労して作っていました。例えばブランカのビリビリっていう音は、録音する機材にシールドの片方を入れてもう片方を手で持ったらビリッて鳴らないかなって試したり。当時は今のようにネットもなかったので調べようもなくて、いろんなことを駆使しました。竜巻旋風脚の風斬り音もなかなか作れなくて、ファミコンの効果音エディターを使ってシンセの音を混ぜてとか。会社には効果音の入ったレコードが2枚ほどあったんですけど、パンチの音が3種類も入っているわけもなく(笑)。
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