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» 2019年06月20日 19時30分 公開

「アニソンをやっている僕を認めてください、全部僕です」 大石昌良はなぜこの言葉を発したのか その真意を聞いた

「けものフレンズ」主題歌「ようこそジャパリパークへ」でも知られるオーイシマサヨシさん。

[大原絵理香ねとらぼ]

 古くから追いかけ、応援してきたアーティストが少しずつ遠く大きな存在へと進化していく。今までと違うスピードでファンが増えていくことへの葛藤。そのバンドやバンドマンは大好きだし、頑張ってほしいとは思っているのに。簡単には消化できない複雑な気持ちと相対することもあります。

 かく言う筆者もこうした気持ちを過去何度も経験してきましたが、たまたま知人に連れて行かれたミュージシャンでシンガーソングライターの大石昌良さんが実施する「弾き語りラボ」で、ある衝撃的なMCと出会いました。それが、「僕はアニソンに携われて本当に良かったと思っています。なので、あえて言います。ずっと応援してくれている方、アニソンをやっている僕を認めてください。全部僕です。大石昌良です」という言葉です。

大石昌良 オーイシマサヨシ アニソン ようこそジャパリパークへ インタビュー

 大石さんは、スリーピースバンド「Sound Schedule」でデビューし、2006年にバンドが解散(後に再結成)した後に“大石昌良”名義でソロデビュー。その後は、アニメ/ゲームコンテンツ向けの名義“オーイシマサヨシ”でも活動しています。オーイシマサヨシの名が広く知られるようになったのは、2017年放送のテレビアニメ「けものフレンズ」主題歌「ようこそジャパリパークへ」。大石さんは作詞・作曲・編曲を手掛け、脚光を浴びました。

 昔からのファンの中には、アニソンからの新規ファンがついたことを前向きに捉えていない人もいて、この日会場に来ていたファンに向けてのこのメッセージは、当時の自分を重ねてとても突き刺さる言葉でした。DVD発売のタイミングでこのメッセージの真意をあらためて聞いてみました。

―― 「ギター1本でどこまでいけるのか」をテーマに2013年からスタートし、研究員(観客)とともに弾き語りの可能性を追求する「弾き語りラボ」。2018年で大石昌良ソロデビュー10周年を迎えましたが、あらためてこの10年を振り返っていかがでしたか。

大石昌良さん(以下、大石) 10年前にこの光景が予想できたか、と聞かれたら全くそうではないです。

 僕はもともとバンドのメンバーの一人でした。バンドが解散してソロデビューするわけですが、昔からバンドを応援してくださっていた方はバンドの面影を追いかけるし、僕が頑張っても、やっぱり元バンドの元メンバーが一人ステージで弾き語っているだけ。

 だから、ソロ活動を始めて数年は、その葛藤というか、解散したバンドの偶像と戦っていたのですごくつらかったです。でも、「弾き語りラボ」をやり始めたことで、自分の武器を見つけることができて、自分自身強くなれたような気がしています。

―― 今回の弾き語りラボでも、「売れないバンドマンほど切ない職業はない」「30代になって音楽をやめて別の職業についた方がいいかなと思ったこともあった」などバンド、バンドマンとしてのリアルな心情を語っていましたね。

大石 そうですね。でも、このMCは、いま僕が成功しているからできたもの。成功、というか、ヒット曲を出せたという1つの大きな自信があった後だったからです。その上で、10周年という区切りで、みんなが思っているほど順風満帆じゃなかったんだよ、ごはんを食べるのも大変だったんだよ、ということを話したんです。

 多分、そういうことを言うと「ごはん食べられていなかったんだ。私がちゃんとこの人のことを応援しているつもりだったんだけど、全然そんなことなかったんだ」と思う人もいますが、それを責めているわけではなく、むしろ本当にありがたいことです。ただ、みんなの「大石昌良にはこうあってほしい」みたいな願望だけで僕はご飯を食べていけないことは事実として分かってほしかったんです。

 それに、例えばてっぺんに“大石昌良”という一人の人間がいるピラミッドがあるとしたら、その下にバンドマンの“大石昌良”がいて“オーイシマサヨシ”がいて、作家の僕もいる。全部が僕なんです。だからこそ「アニソンをやっている僕を認めてください」という発言でした。

大石昌良 オーイシマサヨシ アニソン ようこそジャパリパークへ インタビュー

―― ライブ後、古くからのファンの反応はどうでしたか。

大石 やはり賛否はあったようですが、うれしいことに大多数の方はポジティブに受け取ってくださっていたと思います。みんな優しい方ばかりなので。残りの別の反応をされた方も「認めてはいるんだよ、でも……」みたいな反応でした。

 僕の音楽はアート色の強い音楽ではなく、あくまでも商業的なエンターテインメントだと思っているので、いろいろな人がいていろいろな意見があって当たり前ですし、そうした多様性の上で成り立っていると思うんです。ファン全員がポジティブな反応だと逆に怖いので、そういう意味でもうれしかったし、ありがたかったです。

―― 拒否反応とまではいかなくても、「嫌だな」と強く思うファンの方もいたと思います。

大石 そうですね。漢字の「大石昌良」の弾き語りライブに来ているのだからステージでアニメの話はしてほしくないとか、アニソンは歌ってほしくないとか、そういう意見はありました。「自分がずっと応援してきたあなたは違う人だ」「私が信じたミュージシャンはこういう人じゃない」とか。そこは僕も完全にくみ取ってあげられていなかったので、今後に生かしていきたいです。

―― “大石昌良”としてもアニソンは続けるのでしょうか。

大石 続けていきます。もちろん、アニソンの曲数や選曲のバランスなどはお話ししたような意見をくみ取っていきたいですが、例えば全20曲やって、その中でアニソンが2、3曲なら、僕自身はバランスはいいと思います。

―― 複雑な気持ちと向き合わなくてはならないファンがいても?

大石 すごく難しいんですが……。でも、まずめちゃくちゃありがたいことではあります。だって、他人といえば他人なのに、自分のことでそんなに心を痛めてくれて、包んでくれるって、なかなかないじゃないですか。

 でも、やはり僕自身の一つの姿ではあるので、もしどうしても気になることがあるならそれをぶつけてほしいです。もちろん全員の思いを全て聞くことはできませんが、最適化していくことはできると思っていますので。

 僕にとって、ファンとは母親や父親、あるいは親戚、あるいは友達のようなもので、一言ではくくれない絆があると思っています。だから、僕もみんなからその大切な絆を切られないよう、愛想をつかされないように成長していきたいですし、みんなも、本当にもしよかったら僕についてきてほしいと思っています。

 そうすれば、みんなをでっかいところに絶対に連れていきますし、そのときにようやく、一つの正解を、みんなが納得する形では持って帰ってもらえると思います。

―― 最後にファンに向けて一言お願いします。

大石 僕はまだ、道の途中です。さっきの続きで、でっかいところ……武道館でやるときは、きっといまのファンも昔のファンもみんな来てくれると信じていて、僕は“大きな同窓会”ができると思っています。

 たくさん挫折して、たくさん失敗して、でも、みんなで頑張ってきて。だから、みんなで涙を流せたら、本当に幸せだと思います!

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