“川にいるサバ”と呼ばれる不思議な魚の正体を追う! 滝つぼからあらわれた異様な姿に「見たことない!!」と驚嘆の声続々

川にいる“サバ”の正体とは……

» 2023年11月01日 19時30分 公開
[藤田まこねとらぼ]

 川に生息する“サバ”の姿がYouTubeに投稿され、記事執筆時点で16万再生を突破しています。投稿は「初めて見ました!」「貴重な動画」「めちゃカッコイイ見た目で感動!」と反響を集めています。

“カワサバ”とはいったい?

 話題になっているのは、北海道水辺の会さんが投稿した川の生態調査の動画です。投稿者さんは水辺で釣りや自然観察をしながら水生生物の生息状況を調査し、状況に応じて外来種の防除活動を行っています。

 調査のターゲットは通称“カワサバ”と呼ばれる魚。サバは通常、海に生息しているはずですが……川にいるサバというのはいったいどのような魚なのでしょうか?

猫 カワサバがいると思しき川

 この川に来るのは1年ぶりだという投稿者さん。前回訪れたときには、かつてこの川に多く生息していたヤマメ・イワナ・ニジマスなどがほとんど見られず、ほぼ“カワサバ”だけの生態系になっていたといいます。このことを「とんでもない事態」であると表現しているところから、カワサバが喜ばしい存在ではないことがわかります。

猫 あやしい滝つぼをアタック

 小さな滝つぼや生い茂る草木の下をすくうように網でガサゴソすると、在来種の「フクドジョウ(コイ目フクドジョウ科)」など、たくさんの小魚が入ってきます。カワサバは深みになっているくぼみなどに隠れていることが多いそうで、出没しそうなスポットを探りながら慎重に進んでいきます。すると……?

猫 歓喜!

 3匹も網にかかったことに投稿者さんが「おお〜!」と声をあげたのは準絶滅危惧種の「ヤチウグイ(コイ目コイ科)」です。以前この川の5キロほど下流で見かけたことはあるそうですが、今回のスポットでは初めての遭遇だといいます。在来種であるため川にいることが好ましい魚であり、声が弾みます。

猫 元気なヤマメです

 スピードの速い魚影を見かけるとうれしそうに追いかけ網を差し入れる投稿者さん。お次にかかったのは、「ヤマメ(サケ目サケ科)」でした。ヤマメは在来種で、環境の変化次第で準絶滅危惧種に指定される可能性のある「留意種」と呼ばれるもののひとつなのだそうです。1年前には見られなかった川に戻ってきてくれたということは、とっても喜ばしいことなのです。

猫 ヤマメばいば〜い!
猫 こちらも留意種です
猫 まるっと太ったヤマメも発見!

 他にも留意種の「ハナカジカ(スズキ目カジカ科)」や、驚くほどまるまる太った健康的なヤマメなど、川がよい状態であることを示す魚にたくさん出会うことができました。「だいぶ生態系がかわった」とつぶやく投稿者さん。1年前はたくさんいたという“カワサバ”はもうこの川にはいないのでしょうか……?

 ラストチャレンジは大きな滝つぼで行います。水しぶきをあげる滝つぼのすぐそばで泳いでいる、大きくすばしっこい魚影に網を差すと……? 

猫 ラストチャレンジの滝つぼ
猫 !!!!!!

 ついに“カワサバ”が網にかかりました! その体をじっくり見てみると、複雑な模様を持っていることがわかります。実は“カワサバ”というのは正式名称ではなく、サクラマスとアメマスの交雑種。ざっくりと言えばイワナとヤマメの雑種を指す通称です。そのため、見た目や顔つきはヤマメに似ていますが、背中にイワナゆずりのパーマークと呼ばれる模様が多く入っているのだとか。このゴマサバ模様が通称“カワサバ”の由来となったのだそうです。

 カワサバの誕生には複数のパターンがあるようで、本州では他のイワナ類とヤマメもしくはイワナ類とサツキマス(アマゴ)の交雑種もカワサバと呼ばれているのだとか。それにしても、本当に不思議な姿をしていますね……! 

猫 全力拒否

 こんなにキレイな姿をしているカワサバですが、実は繁殖能力がありません。そのため、生まれた時点で世代を絶やすことになってしまうやっかいな存在なのです。北海道では他のサケ科魚類の交雑も確認されていますが、カワマスとアメマスの交雑種(ジャガートラウト)や、カワマスとオショロコマの交雑種(名称なし)をのぞき、基本的に交雑種は繁殖能力を持たないのだといいます。

 投稿者さんによると、交雑が起こる人為的な原因として、堰堤(えんてい)建設によって川を自由に行き来できなくなってしまう遡上障害や放流などにより本来生息環境の被らない2種が混棲してしまうことなどがあるのだそうです。他にも自然的な原因として、水源の枯渇や流れの変化などによる河川環境の変化によっても起こる場合があります。

 今回調査した川では宅地開発による土砂の流入があったといい、その翌年からカワサバしか見られなくなったようにも思えるのだとか。ひとつの仮説ではありますが、環境の変化によって交雑が起こり、一時はカワサバだらけの川になってしまっていたことが考えられるのです。人為的な出来事が自然環境にもたらす影響は大きく、その変化はまさに水面下で静かに起こっていたのかもしれませんね。生態系がもとの状態に戻りつつあるとのこと、本当によかったです。

 投稿者さんのYouTubeチャンネル「北海道水辺の会」では、自然のありのままの姿を映した動画の数々を公開中。のぞいてみれば、人間が自然と上手に共存することができているのかどうか、答え合わせをする機会になるかもしれません。

失われてしまった自然も
実はニジマスは外来種です
でっかいの獲れました!

画像提供:YouTubeチャンネル「北海道水辺の会」さん

オススメ記事

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/28/news155.jpg がん闘病の森永卓郎、容態急変後にモルヒネ投与で“結構厳しい状況” スタジオ出られず弱々しい声で「そう長く持たないかもしれない」「本格的に転移が始まったよう」
  2. /nl/articles/2501/27/news037.jpg スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
  3. /nl/articles/2501/26/news053.jpg 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  4. /nl/articles/2501/28/news070.jpg サザエやカキの貝殻を“最強の土”に埋めて、10カ月後…… 驚きの検証結果に「びっくりです」「すごいですね!」
  5. /nl/articles/2501/29/news086.jpg 鮮魚店で売れ残ったタコを水槽に入れたら、数週間後まさかの展開が…… 胸を打つ光景に「目が腫れるくらい泣いてます」
  6. /nl/articles/2501/27/news095.jpg 「別人?」「お母さん泣くね」 母の紹介で美容院に来た男子高校生がイメチェン…… 超さわやかな髪型に称賛の声【男性イメチェン記事5選】
  7. /nl/articles/2501/28/news123.jpg “港区大好き”元有名グループアイドル、仕事ゼロの不人気メン→20歳上男性と結婚で“セレブ妻”転身! 家賃170万円のマンション暮らしに「生きてる世界違う」
  8. /nl/articles/2501/28/news080.jpg 共通テスト当日の息子に普段通り接しようとして―― “予想外すぎる母のLINE”に爆笑の声 「声出た!! 笑」「おもろすぎ」
  9. /nl/articles/2501/23/news050.jpg 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  10. /nl/articles/2501/28/news034.jpg 大人なら5秒で解きたい!「9+0÷2−3」の答えは?【算数クイズ】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  2. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  3. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議
  4. スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
  5. 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
  6. 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
  7. 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
  8. 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  9. 「すんごい笑った」 “干支を覚えにくい原因”を視覚化したイラストが勢いありすぎで1700万表示の人気 「確かにリズム全然違う!」
  10. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  3. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  4. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  7. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  8. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  9. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  10. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」