というわけで、「艦これ」で8月8日を期して「MI」(ミッドウェー島攻略作戦)と「AL」(アリューシャン列島攻略作戦)という2正面作戦が発動するというこの時期に、脈絡もなしに、太平洋戦争冒頭の真珠湾作戦からミッドウェー海戦に至るまでの、空母が主役となる主要な作戦を「超ざっくり」と解説しよう。ひょっとするとひょっとして、イベント攻略のヒントになるかも! いや、ならないかも!
ベニア板と廃品利用の秘密兵器が大活躍の真珠湾攻撃
日本史の教科書にも載っている有名な真珠湾攻撃(1941年12月8日)。さすがに言葉として知っている日本人は多い。真珠湾にいた米海軍太平洋艦隊を「赤城」「加賀」「飛龍」「蒼龍」「翔鶴」「瑞鶴」の空母部隊で奇襲して、戦艦5隻撃沈・港内擱座(かくざ)とする大きな損害を与えた。
役割分担は、赤城、加賀、飛龍、蒼龍の九七式艦上攻撃機が魚雷、または、水平爆撃で戦艦を攻撃、九九式艦上爆撃機が空母(しかし、空母はいなかった)と巡洋艦を攻撃、翔鶴・瑞鶴の九七艦攻と九九艦爆が陸用爆弾で飛行場を攻撃、となっていた。ちなみに、空母の護衛として戦艦「比叡」「霧島」と索敵担当として重巡「利根」「筑摩」が同行。ほかに、艦隊護衛として軽巡「阿武隈」旗艦の第1水雷戦隊(陽炎型で編制する第17・第18駆逐隊所属)が参加している。
事前の打ち合わせで、奇襲の場合は九七艦攻の雷撃から、敵の反撃がある場合は九九艦爆の急降下爆撃から攻撃を開始すると決めていた。その合図は、隊長の淵田美津雄海軍中佐が発射する信号弾で、1発なら先に雷撃、2発なら先に爆撃。奇襲成功と判断した淵田隊長は1発撃ったが、急降下爆撃隊隊長の高橋赫一(かくいち)海軍少佐が気が付かないため、もう一度信号弾を打つと、「信号弾2発!!」と勘違いした高橋隊長機がいきなり爆撃を開始してしまった。おいおい。
真珠湾攻撃で威力を発揮したのが、水深が浅い港でも海底にぶつからないで航走するように改良(魚雷にベニア板のヒレを付けて、落下して沈むエネルギーを吸収した)した魚雷だ。しかし、生産スケジュールがぎりぎりになってしまい、攻撃艦隊がすべて単冠(ひとかっぷ)湾に向けて出撃した後も加賀だけが日本本土にとどまって、ぎりぎり間に合った魚雷を受け取り、単冠湾でほかの空母に渡している。あぶねー。水平爆撃では戦艦「長門」「陸奥」で使っていた主砲徹甲弾を改良した九九式八百キロ徹甲爆弾を使っているが、これは、九一式徹甲弾の採用で余ってしまった八八式徹甲弾の“廃品再利用”だ。
第一波、第二波と攻撃を成功させた奇襲部隊はそのまま戦場を引き上げた。港湾設備(特に修理ドックと重油貯蔵施設)または真珠湾にいなかった空母部隊を追加攻撃すべきだったと当時の上層司令部から現代の作戦研究者にいたるまで批判しているが、もともと航続距離に不安のある作戦であったことと、当時、敵空母部隊の位置がまったく把握できていなかったことを考えると、予定にない追加の作戦行動を行うのは「無謀」と言わざるを得ない。特に船乗りとして優秀だった指揮官の南雲忠一海軍中将には、洋上にいる現場の感覚として「瀬戸内海に停泊している長門から勝手なこというな」という思いだったろう。
「飛龍「蒼龍」を率いる第2航空戦隊司令官の山口多門海軍少将も追加攻撃を催促しており、後世の作戦研究者は彼を高く評価しているが、そもそも、航続距離の短い飛龍と蒼龍は真珠湾攻撃に参加しない計画だったのを、山口司令官が無理やりついて行っていたりしているので、なおさら、南雲司令長官としては「なんだかなあ」と思っているかもしれない。
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