マンガ「中国嫁日記」の作者・希有馬(井上純一)さんが、同人ショップ「とらのあな」で委託販売しているフィギュアの利益の取り分を特別に引き上げてもらったことを自身のブログで明かしており、ネット上で物議を醸しています。
話題になっているのは、井上さんがブログ「月サンは困ってます」で6月18日に公開したエッセイマンガ。「中国嫁日記」に登場する「月(ゆえ)サン」のフィギュアを自主制作して「とらのあな」で販売したものの、在庫が半分ほど残っていてピンチを迎えている、という近況をつづった内容です。
マンガでは、在庫を売り切るために価格を下げてイベントで手売りするという告知が主題だったのですが、ネットで注目を集めたのは、途中で描かれていた「とらのあな」スタッフとのやりとりの部分。フィギュアの価格を安く設定しすぎて困っていた井上さんに、スタッフが「普段は値段の7割がサークルの取り分ですが…これを8割にするというのは…」と、販売価格の卸値の掛率(井上さん側の取り分)の引き上げを提案します。
井上さんも「マジですか!?」と感激。「こういったことはめったにしないんですけど」「長い付き合いですから… 困ったときはお互い様ですよ」というスタッフのセリフとともに、こうした「とらのあな」のはからいによってフィギュアの赤字は回避できたと、2人のやりとりを紹介しています。
このように「とらのあな」側のマージン(売上高から原価を引いたもの)をさらっと公表したことに、ブログへのコメントでは「価格や仕切り価格は非常に繊細な問題なので、それを晒(さら)すのが信じられない」「なんでマージン晒すんだ。下手したら担当者さん首飛んじゃうんじゃない?」と批判の声が続出。
また「とらのあな」が特別に掛率を引き上げたという内容だったため、「恩をドロップキックで返してる感ある」「このマージン晒しで得する人ってジンサン(※編注:井上さん)と一部読者以外誰もいないよね 一般サークルは知りたくなかった事実を知って自分が軽視されてる気になるし虎は取引先から失望されるしで」「7割の取り分で取引してるサークルからとらのあなに問い合わせが殺到する予感……!」とさまざまな意見が上がっています。
なお「とらのあな」はもともと公式サイトの「取引約款」で、同人サークルから委託された作品を専売(「とらのあな」のみで販売するという契約)する場合は、サークル側の販売価格の卸値の掛率は67%であることを公表しています。井上さんと「とらのあな」でこのようなやりとりが実際にあったかどうか、また特別な掛率の変更を過去にも行ったことがあるか、「とらのあな」に確認中です。
追記
6月20日に井上さんが、「とらのあな」とのマージン引き上げの件について発言するために、新たなTwitterアカウントを開設。同人業界において苦楽をともにしてきた相手との「長い付き合い」に触れただけであったとして、考えをツイートしています。(※6月24日追記を参照)
2015年6月24日 追記
本件について、「とらのあな」を運営するユメノソラグループの広報担当者から回答をもらいました。「井上先生の取り分の変更を行ったという点は事実」「ただマンガ内のような、その場で担当者個人の判断で行った点等については、フィクションが入っている部分もある」そうです。またこのような特別な掛率の変更を過去にも行ったことがあるかについては、「営業の機密に関わる部分になるため回答できない」とのことでした。
2015年6月24日 追記
6月20日に井上さんの別アカウントによる発言として紹介し追記しましたが、そのアカウントが偽物であると井上さんご本人が証言しています。確証がないまま発言を紹介し、井上さんおよび関係者の皆様にご迷惑をおかけしました。追記の発言部分について修正しお詫びいたします。
2015年6月26日 追記
井上さんのツイートによると、「まずあの漫画に関しては、事前にとらのあなにネームを送り、許可を受けた上でネットにUPしました」とのこと。この件について、「とらのあな」の担当者に確認したところ、「“井上先生の取り分の変更を行ったことは事実”以上のことは返答できない」との回答でした。
(黒木貴啓)
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