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「猫付きマンション」はなぜ生まれたのか 新しい猫保護の形を探る1冊「猫を助ける仕事」ねとらぼレビュー

不動産ビジネスにまで踏み込んだ、猫保護の新しい形とは。

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 NPO法人東京キャットガーディアン(TCG)の代表、山本葉子氏と、ニッセイ基礎研究所不動産研究部長の松村徹氏による共著「猫を助ける仕事 保護猫カフェ、猫付きシェアハウス」(光文社新書)が11月17日に上梓されました。


画像 「猫を助ける仕事 保護猫カフェ、猫付きシェアハウス」光文社新書/780円(税別)


「猫付きマンション」という新しい試み

 TCGとは、東京を中心に活動する、猫の保護や譲渡活動を行う動物愛護団体。常時100匹以上の猫を保護しており、大塚と府中市西国分寺にある開放型シェルターでは、保護猫カフェとして実際に猫たちと触れ合うこともできます(関連記事)。面談を受ければ保護猫の里親になることも可能。実は筆者が今飼っている猫もTCGから譲り受けた子です。

 また最近では「猫付きマンション」や「猫付きシェアハウス」などの不動産ビジネスも運営しており(関連記事)、そのユニークな取り組みでメディアへの露出も増えてきています。本書はこうしたTCGの活動について、代表自らが解説した1冊となっています。

 「猫付きマンション」とは、猫飼育可の物件に、TCGで保護されている成猫を貸し出し、その猫と一緒に生活できるというもの。猫は貸し出し制なので、物件解約時に返却するのが基本ですが、飼い主が気に入った場合は正式に引き取ることも可能です。というか、実は今まで猫が返却された例はなく、どの猫も貸し出しが継続されたり、正式に引き取られたりと、幸せに暮らしているそうです。

 「猫付きシェアハウス」はそのシェアハウス版で、やはり猫飼育可物件で、シェアハウスのメンバーとともにTCGの成猫と生活をします。子猫と比べ、成猫は引き取られにくいため、成猫もおうちの子になってもらいたいという、山本氏の狙いなのだとか。成猫は子猫に比べて体調が安定しており、またシェアハウスならば世話をみんなで協力しながらできるというのも、猫飼い初心者には心強いようです。猫付きマンションや猫付きシェアハウスは日本では初の試みですが、現在、常に満室という人気ぶりです。



ペットと不動産は切っても切れない関係

 猫の保護活動・譲渡活動を行っている団体は他にもありますが、TCGのように不動産事業にまで踏み込んでいる保護団体は他に聞いたことがありません。本書内に掲載されている、一般社団法人ペットフード協会「犬猫飼育率全国調査(平成26年)」の調査結果によると、ペットを飼えない理由の1位は「集合住宅に住んでいて禁止されているから」であり、ペットと不動産の関係は切っても切れません。

 ただでさえペット飼育可物件が少ないのに、犬はOKだけど猫はダメという物件も多いです。それは、大家さんが猫の習性や飼育に関して誤解をしている点にあるそうです。猫飼育NGの理由として、猫は壁やふすまを爪でボロボロにすることや、トイレが臭うことなどが挙げられますが、壁紙やふすまは取り替えればすむため、猫を飼う際は修繕費を多くとればいいですし、猫のトイレには、消臭効果のある猫砂を使い、こまめに掃除や換気をすれば臭うことはありません。それに、元来猫はきれい好きで、決められた場所以外でトイレをしません。このように、いくらでも対策はあるのに大家さんがそれを知らず、猫の飼育を不可としているのだと山本氏は述べています。

 猫の保護活動だけでなく、猫を助けることにつながる不動産ビジネスにまで踏み込んだ内容の書籍は珍しいのではないでしょうか。また、マイナビニュースで漫画「猫にありがちなこと」を連載中の猫マンガ家のうだまさんによる挿絵や、写真家の桐島ナオさんが撮影した、TCGで暮らすかわいらしい猫たちの写真にも思わず頬がゆるみます。今まで以上に猫に愛情を注ぎたくなる、そんな1冊です。


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姫野ケイ


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