絶好調のライブイベント産業と、進むコンテンツの「ライブ・シフト」
よく分からないことはプロに聞いてみようシリーズ。今回は、弁護士の福井健策氏が、この数年の勢いが止まらないライブイベント市場の課題を考えます。
いやー、伸びてますね!
何かといえばライブイベント市場である。最近発表されたぴあ総研の「ライブ・エンタテインメント白書」によれば、またまた伸びてこの数年の勢いが止まらない。特に音楽コンサート分野は前年比25%の売上増で、ステージ分野と合わせてついに5000億円を超えた。予想されたこととはいえ、年率25%。インドかここは! という成長ぶりだ(関連記事)。
過去15年間かそれ以上、パッケージ系のコンテンツ産業が一貫した売上低下に悩む中、音楽コンサートはこれでボトムだった1997年から比較して、18年間で約5倍に売上が伸びたことになる。ちょうどCD産業の縮小と反比例して増えた計算だ。「そりゃチケットが高くなったからだ」の声も聞こえそうだが、確かにそれもあるものの公演数・動員数共に3.5倍前後に増加している。
つまり、人々がとにかくライブイベントに行っているのである。フェス人気がこれに拍車を掛けていることは間違いないし、2013年のポール・マッカートニーに代表される海外大物アーティストの来日公演も完全に復調した。
5000億円といえば、出版・雑誌産業の3分の1だ。その程度かと思われるかもしれないが、これはチケット売上だけの合計額。実際にはグッズなど物販の売上が大きい。コンサートは経費率が高いので、よく「武道館1日フルでも収支はトントンだが、物販収入で食える」などといわれる。さらには周辺含めた飲食、宿泊、交通、その前後でのCDやDVD売上と、ライブイベントは周辺への経済波及効果が絶大なのだ(お祭りや花火大会などはその典型だろう。入場料収入でいえば基本ゼロ円でこんな売上データには載ってもこないが、その経済効果や地域活性化の効果たるやである)。
そんな訳で、レコード会社の中には、今やCDの売上は全体の20%程度というケースもある。どこで稼ぐかと言えば、コンサートやアーティスト・マネジメントである。いわゆる「ライブ・シフト」だ。
原因は、デジタル化の進展でコンテンツを無料・低価で入手できるようになった反面、ライブな体験の価値が上がったためだと、もう断定してよいだろう。以前は、イベント関係者はライブの動画がネット上で拡散することに神経をとがらせた。いや、今でも海賊版は頭が痛いわけだが、しかしいくらライブの模様がネット上で無料視聴できても、だからコンサートに行かなくてもいいやとは恐らくならない。見たら余計本物に行きたくなるだけなのだ。そのせいもあって、ライブでは「写真撮影・録音・録画お断り」が決まり文句だが、主催者の間ではこれを一部は解禁する動きも出てきている。拡散してもらった方がライブの魅力が増すと考えてのことだろう。つまりソーシャルメディアとの相性がとにかく良い。
特に、今回の発表で目を引いたのは演劇・ミュージカル分野の伸びがついにハッキリしてきたことだろう。昨年比11%以上の売り上げ拡大で、これで2年連続の2桁成長である。「テニミュ」などに代表される2.5次元勢がけん引役だが、ジャンルやサイズを問わず満遍なく元気が良い、が現場の実感ではないだろうか(注:元気が良い≠カネがある)。
四季・宝塚・東宝の3強も好調を維持しているし、舞台出身勢が映画やテレビで活躍するなど、もはや日常すぎる風景だろう。NHK「真田丸」など、三谷幸喜を筆頭に、堺雅人(東京オレンジ)、大泉洋(Team Nacs)、小日向文世(自由劇場)、長野里美(第三舞台)、「黙れこわっぱ!」の西村雅彦(東京サンシャインボーイズ)、藤岡弘、(仮面ライダー1号)などなど、さながら小劇場同窓会である。最後は違った。
この流れを受けて、他ジャンルからのライブ・シフトは今後も当分継続するだろう。スポーツやコンサートを他のスタジアム・映画館で楽しむ「ライブビュー」は完全に定着したし、アイドルもAKB以降テレビからライブ中心へとシフトした。オンラインゲーム自体がライブといえるが、ポケモンGOはまさにその屋外イベント化である。映画自体の4D上映はもちろん、参加上映も人を集める。ファン上映が一般に拡大したのは「アナと雪の女王」でのシングアロングが記憶に新しいが、「ゴジラ、立って!」のシン・ゴジラ発声可能上映も、「いや立ったら東京壊滅だから!」の声もむなしく大人気だった。
ワンピース展などの原画展も、いわば出版マンガ産業のライブ・シフトといえる。各地を巡回して多数のファンを集め、会場では1枚2万5000円の「複製原画」が飛ぶように売れる(余談だが、そもそもこの言葉が分からない。一体複製なのか? 原画なのか? いずれにしても、イベントの持つ『場の力』がその販売に拍車を掛けていることは明らかだ)。
さらにいえばコミケをはじめとする同人誌即売会こそ、文芸・マンガのライブ化の先駆けだろう。ニコニコ超会議はニコニコ動画の世界のライブ再現だし、それ以前にニコ動の成功は、視聴者がコメントによって参加できるライブ性にあった。鍵は「参加」である。ライブの観客は同じ振りをすることでコンサートを一緒に作り上げるし、同人誌活動は対面で買われることで完結するし、人気ラーメン店の客は行列に並ぶことで参加し、その様子はソーシャルメディアで拡散されシーンを盛り上げる。
ただし、2500年もの昔から、ライブ運営には高度のノウハウと専門技術が必要だ。よく分からず取りあえず参入してきて火傷する、というのも定番の風景ではある。音楽著作権の処理ミスなど、ポピュラーな炎症部位だ。
さて絶好調のライブイベントだが、今後の課題は会場(ハコ)不足とチケット流通問題だろう。
前者は代替確保も進むが、特に後者だ。日本のライブイベントはその多様性と豊かさで、恐らく世界随一である。しかしながら、残念ながら現在それらは、歌舞伎などごく一部を除いて外国からの観光客が気軽にチケットを入手して楽しめる形では提供されていない。
人気チケットは日本人でもコアなファン以外には入手困難だったり、余っていても前日・当日には会場以外で手に入らなかったりする。オープンなチケットの正規再流通の仕組みや、当日半額チケットなど本格導入すべきだ。また、Webと会場には少なくとも英語での内容説明を備えるなど、常態化すべきだろう。主催者に自ら用意させるのは大変なので、公設の翻訳ラボ・字幕化ラボを作って、「そこそこの品質」ですぐに英文を用意してあげるサービスなど、政府主導で行ってはどうか。
オリンピックまで4年を切った。日本の素晴らしいライブイベントの国際発信のために、できることはまだまだ多い。
福井健策(ふくい・けんさく)
弁護士(日本・ニューヨーク州)骨董通り法律事務所代表パートナー 日本大学芸術学部客員教授
1965年生まれ。神奈川県出身。東京大学、コロンビア大学ロースクール卒。著作権法や芸術・文化に関わる法律・法制度に明るく、二次創作や、TPPが著作権そしてコンテンツビジネスに与える影響についてもいち早く論じて来た。著書に『著作権の世紀――変わる「情報の独占制度」』(集英社新書)、『「ネットの自由」vs.著作権』(光文社)、『誰が「知」を独占するのかーデジタルアーカイブ戦争』(集英社新書)、『18歳の著作権入門』(ちくまプリマー新書)などがある。Twitterでも「@fukuikensaku」で発信中。
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