「なぜ弱体化よりも強化調整をするべきなのか」――格闘ゲームにおけるバランス調整に関する分析動画がYouTubeの「Core-A Gaming」チャンネルに投稿されました。元は英語の動画ですが、日本語の翻訳を元にした日本語字幕付き動画もニコニコ動画に投稿され、反響を集めています。
格闘ゲームで行われるバランス調整は、主に2つの方法に分けられます。1つは「キャラクターの弱体化」、もう1つは「キャラクターの強化」です。基本的には弱いキャラクターの強化によってバランス調整することがプレイヤーの理想で、弱体化は好まれる傾向にありません。
バランスをよくする目的であっても、愛着をもったキャラクターの弱体化は受け入れられづらいですが、これは失ったものは良くなったものと比べて2倍の苦痛を感じるという「損失回避」という考え方が影響しているもの。つまり使用キャラが1つ弱体化されるた場合、同じくらいの強化を受けたとしても、2倍の苦痛を感じることになります。
ただ動画では、バランスがとれてさえいれば良いわけではない、とも指摘しています。バランスだけを追求すれば「初代ストリートファイター」や「対戦空手道」のように1キャラしか選べないゲームこそが“最善のバランス”となりますが、現在そういったゲームはあまり好まれません。
強化を繰り返したゲームとして取り上げられているのは「ストII」の海賊版として知られる「ストIIレインボー」。張り手で波動拳が出すことができ、移動スピードが非常に速くなるなど、全てのキャラクターが大幅に強化されたゲームでした。一部では「クソゲー」と呼ばれ、バランス以外の面でもさまざまな問題をはらんでいたものの、キャラクターに新しい選択肢と能力を与えたため、面白く魅力的なゲームとされていました。
一方弱体化が受け入れられた珍しい例として、ストリートファイターIVシリーズのリュウの強昇龍拳が挙げられています。この技はシリーズが進むにつれて外れた時のリスクが増加していったものの、ダメージを増やすなどの調整も加えられ、プレイヤー側が「相手を恐れていないこと」「相手の動きが読めていること」などを表現する手段ともなり、弱体化の中でも印象に残る例となったようです。
また、ストリートファイターVシリーズのリュウの昇龍拳(他キャラクターの同性質の技を含む)も、それまでの昇龍拳の大きな特徴だった「無敵(相手の攻撃が当たらないこと)」が削除されるという大幅な弱体化を受けました。このことはさまざまな議論を呼び、動画では“この調整によってゲームがより面白くなったかどうか”“戦略に創造性を与えたか?”と調整方法に疑問を呈しています。また、この調整については韓国のプロゲーマー・Infiltrationも「このような調整は好きではない」とコメントしていた件にも触れられています。
e-Sportsの発展と共に、度々議論にのぼるようになったバランス調整。1月には日本人初のプロ格闘ゲーマー・梅原大吾さんが「操作していて気持ちいい部分があるかが重要。むしろバランスが悪い方が流行る」と発言し話題となりました(関連記事)。動画でも「壊れたゲームでも楽しむことはできるが、完璧にバランスが取れているゲームは触られすらしない」とされており、梅原さんの意見と共通する部分があるようです。
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