フランスのゲームメーカー、ユービーアイソフトが開催する、FPS「レインボーシックス シージ」世界大会で、なぜか日本人が優勝した場合のみ賞金を受け取れないという規定があり、ゲームファンの間で物議をかもしています。
同大会はこれまで欧米中心に開催されていましたが、2017年9月から開催される「シーズン3」から、アジア太平洋地域(APAC)まで参加地域を拡大することが決定。アジア4地域(日本/韓国/東南アジア/オーストラリア・ニュージーランド)でのオンライン予選を経て、10月にシドニーで行われるオフライン大会でアジア最強が決定することになります。
しかし、公式サイトの記述によれば“日本チームが優勝した場合、日本の法律の都合上、賞金を受け取ることができません。あらかじめご了承ください”とのこと。日本人だけ優勝賞金が受け取れないとは一体どういうことなのか、ネット上では「『おま国』に続く『おま賞金』が生まれてしまった」「e-スポーツの発展への障害になりかねない」など疑問や批判の声が次々とあがりました。
ゲームの世界大会といえば、先日「Evolution 2017(EVO2017)」で日本人のときど選手が「ストリートファイターV」部門で優勝しました(関連記事)。しかし、この大会では、ときど選手がしっかりと賞金3万5750ドル(約400万円)を獲得しています。
なぜ「レインボーシックス シージ」の大会では「日本人だけが」賞金を獲得できないという事態になってしまったのでしょうか。ユービーアイソフト日本法人に話を聞きました。
ユービーアイソフトの回答
まず「日本の法律の都合上」という部分について、これが何の法律のことを指しているのか聞いてみたところ、「専門家と相談した結果、今回の世界大会は景品表示法(以下、景表法)に抵触する可能性を否定できないと判断いたしました」と回答。ただ、具体的に景表法のどの部分に抵触するのかについては、「この質問に関しましては、弊社からの回答を控えさせていただければと思います」とのことでした。
また、海外で日本人のプロゲーマーが賞金をもらうケースは多数ありますが、なぜこの大会に限って受け取ることができないのかも尋ねましたが、これについても「海外のゲーム大会や他社様のゲーム大会など、弊社が関わらないゲーム大会について弊社から言及することはございません」との回答でした。
消費者庁に話を聞く
では、実際に景表法によって「日本人だけが賞金を受け取れない」という状態は発生し得るのでしょうか。景表法を管轄する消費者庁にも話を聞いてみました。
同庁によれば、「個別の案件については回答できない」としながらも、一般的な法解釈として「景表法で日本人だけが賞金を受け取れないという条文はない」「受け取り手の国籍によって受け取りの可否が決まる規定にはなっていない」とのこと。仮に景表法が適用されるとしても、選手の国籍によって「日本人以外ならば受け取れる」「日本人だけが受け取れない」ということはないそうです。
ちなみに、海外で行われる大会に日本の景表法が適用されるかどうかについては難しいところで、例えば決勝戦が海外で行われる場合であっても、主催が日本の企業であったり、日本の法人が運営に深く関わっていたりした場合、景表法が適用される可能性がないとは言えないようです。とはいえその場合であっても「日本人だけが受け取れない」ということはありません。
なぜ「おま賞金」は生まれてしまったのか
日本でゲームの賞金付き大会を開催しようとした場合、景表法が足かせになるケースは確かにあります。一部例外もありますが、大会に賞金を出すということは「そのゲームを買うと付いてくる景品」と見なされるため。景表法では景品の上限額について「取引金額の20倍まで(上限10万円)」までと定めており、例えば1本4000円のゲームであれば、景品、すなわち賞金の上限額は20倍の8万円までしか出すことができません。
別のゲームの例で言えば、2016年にはスクウェア・エニックスのゲーム「ガンスリンガー ストラトス3」が、大会直前になって優勝賞金を500万円→10万円に引き下げ、物議をかもしたことがありました。こうした例を受けて、ユービーアイソフト側が過剰に萎縮してしまった可能性はあります。
しかし、消費者庁の回答にもあった通り、仮に景表法の適用範囲内であったとしても「日本人だけが賞金を受け取れない」ということはなく、なぜユービーアイソフトがこのようなルールを設けたのかはいまだ不明です。一連の回答を受け、ユービーアイソフト側にさらに詳細を取材しようとしましたが、残念ながら「本件について現在も本社と話をしております。日々話をしているので状況が変化することもございます。したがいまして、これ以上のご質問に答えられることができかねますことをご承知いただけますと幸いです」とのことでした。
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