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「肩甲骨はがしってなに? 本当にはがれるの?」→はがれません! 指圧師が解説する“肩甲骨の構造”

はがれません(指圧師談)。

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 こんにちは。指圧師をしている斎藤充博です。書店やコンビニで、タイトルに「肩甲骨はがし」という言葉が入った本を見かけたことはありませんでしょうか。

 肩甲骨はがしという言葉は、すっかり定番になっているように感じます。マッサージ店の看板にも「肩甲骨をはがそう」というような言葉が書いてあるのを見たことがあります。グーグルで「肩甲骨はがし」で検索すると、検索流入目当てとみられる記事がたくさん上がってきます。

 ところで、肩甲骨って本当に「はがれる」のでしょうか。結論から言うと構造上、はがれるようなことはありません。


ライター:斎藤充博

斎藤充博

インターネットが大好きで、ウェブ記事を書くことがどうしてもやめられない指圧師です。「下北沢ふしぎ指圧」を運営中。

Twitter:@3216ライター活動まとめ


肩甲骨と周りに付いている筋肉

 肩甲骨は鎖骨と関節しています。また、肩甲骨の周りには17もの筋肉が付いています。

 その中の「前鋸筋(ぜんきょきん)」という筋肉に着目してみましょう。この筋肉は肩甲骨の内側の縁から始まり、そのまま肩甲骨の裏側を通り、胸の横側あたりで終わります。

 つまり、この筋肉は肩甲骨の裏側と胴体をくっつけているのです。この筋肉の付着のラインを見れば、「肩甲骨ははがれない」ということが分かるのではないでしょうか。(もちろん他の筋肉も肩甲骨の位置を安定させています)

肩甲骨はがしの本を読んでみた

 試しに一冊、コンビニで肩甲骨はがしのムックを買ってきました。『がんこなこりが一気に消える! 肩甲骨はがし』(宝島社)という本です。

 「はじめに」にはこんなことが書いてありました。

「肩甲骨はがし」とは、このガチガチに固まった筋肉を筋肉のこわばりからはがして、コリから解放すること。

『がんこなこりが一気に消える! 肩甲骨はがし』(宝島社)より

 「肩甲骨はがし」という言葉はカッコ付きで表現されています。また、紹介されているのは、肩甲骨のまわりのストレッチです。やはり本気ではがそうとしているようには思えません。そりゃそうかもしれません……。

 念のため言っておくと、ムックの内容はとてもいいです! 539円で肩こり解消のこんなまとまった情報得られるなんて、超素晴らしい。

はがれないのになぜ「肩甲骨はがし」なのか

 さて、これらになぜ肩甲骨はがしという言葉がつけられているのか。想像に過ぎませんが、こんな状況が考えられます。

 肩や背中がこると、肩甲骨が動きにくくなってきます。感覚的な話ですが、まるで肩甲骨が背中に「貼り付いている」かのように思えてきませんか。

 まるで「貼り付いている」状態をなんとかしたい。その気持ちが「貼り付ける」の対義語である「はがす」を使って表現されているのだと思います。つまり「肩甲骨をはがす」は、「文学的な表現」というか「例え」みたいなことでしょう。

でも構造は知っておきたい

 「肩甲骨はがし」という表現を否定する気はないのですが、やはり実際の肩甲骨の構造は知っておくべきです。

 というのも、僕は過去に一度やらかしてしまっています。あれはまだ、僕が治療家にあこがれているだけで、専門学校にも通っていなかったころのことです。

 そのときに買った一般向け整体の本に「肩甲骨は本来背中に対して浮いている」「友達の肩甲骨と背中の間に思いっきり4本の指を入れてグリグリすると肩がスッキリする」というようなことが書いてあったのです。

 これを真に受けた僕は、友達の肩甲骨の裏側に思いっきり4本の指を突っ込んで、限界までグリグリしてしまいました。

 友達は痛がっていましたが「大丈夫、本に書いてあるよ」と、どんどん自信を持って続けたのです。ところが、まったく肩こりは改善しませんでした。次の日友達は、激しい筋肉痛に襲われたそうです。1日程度で痛みは引いて、大事には至りませんでしたが……。今思い出しても冷や汗が出ます。

 肩甲骨はがしの本を読んで実践したり、プロの施術を受けたりすることで、こんなことが起こるケースはまずないとは思うのですが、「セルフケアのキャッチフレーズは必ずしも実態に即しているとは限らない」と覚えておくといいかもしれません。

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