ITmedia ガジェット 過去記事一覧
検索
インタビュー

「完全なファン目線で、どこまで凝れるか」 別次元のクオリティで『HiGH&LOW』世界を再現した「ハイローランド」誕生の秘密(4/4 ページ)

コンテンツへの深い理解と愛情。

advertisement
前のページへ |       

――MUSEUMの展示物って、実際の撮影に使った小道具は全体で言うとどれくらい使われているんですか?

 半々ですかねえ……。撮影用の道具を借りてくるときに同じところから他の道具も借りてくるんで、こっちの意識として何が撮影用でどれが違うって明確な境目はないんですよ。例えばドラマ版のときの道具と映画のときの道具ってちょっとづつ違ったりしますし。その都度変更しているとか、同じものが手に入らないってこともよくありますし。



実際のMUSEUM内の図面。青い部分が映画撮影用のセットをそのまま使った箇所だ

――実際に撮影に使った道具やセットだからすごい、という意識は作り手の方では特にないんですね。細かい変更も多いし。

 ITOKANの店内も、最初の『THE MOVIE』と今やってる『END OF SKY』ではちょっと違うんです。床とかにも新しく文字が入ってたりして。今回のITOKANのセットを借りに行ったときにフロア材を見て、「あれ? これ文字が入ってる!」って初めて気が付きました。しかもバラバラに置いてあるから、もうパズルですよ。みんなで床板を出してきて「どうするこれ……パズル、やる?」って。炎天下で2時間くらい「これは違う」「こっちじゃない?」「合った合った!」って文字を合わせてました。あれはシビれましたね(笑)。「裏に番号とか書いといてよ!」っていう。

――シュレッダーにかけた書類を組み立て直すみたいな作業ですね……。

 でも使えるものはやっぱり使った方が、リアリティというか、オタクが喜ぶじゃないですか。細かいところまで見ている人も中にはいるだろうから。

――でも本物というか、撮影に使ったものだと気が付いていない人も多い気はします。

 そうでしょうね。自分たちの方でも映像のままではなくて展示に合わせるように配置してるし。そのへんはお客さん目線で考えてます。自分たちがお客さんとして来たときに、この場所ではどういうものが見られたら一番うれしいのかっていうのを第一にしてますね。変な話、全然関係ないバイクが置いてあったってうれしくもなんともないわけじゃないですか。でも、一般的なイベントってそういう、なんとなくそれらしければいいやっていうのが多いですよね。でもそうじゃなくて、われわれの独自解釈の部分があるにしても、誰が見ても『HiGH&LOW』だっていうふうに思わなかったらそんなところにお金を出して行く意味がない。

“ファン目線”での設計の勝利

――ここまでの話を聞いて思ったんですが、基本的にハイローランドって最初のプランから全てフジアールさん主導で作成されたんですね。

 世界観に関するディレクションはこっちに任されてた感じですね。もちろんLDHさんとかのチェックは通ってるんですけど。映画のスタッフも当初は会って話をしてたんですけど、とにかく撮影が忙しいんで途中からもうこっちに任させてくださいという感じになりました。「変なものは作らないんで信用してください!」みたいな。

――じゃあ、コンセプト段階からほぼフジアールさんにお任せだったんですね。

 任せるという意識があったかは分からないですけど、結果的にはそうなってますね。そもそも映画のプロデューサーの方々がこの案件のプロデュースもされてるので、そこと打ち合わせをしてる以上、なにかがズレれば指摘されるはずだったので、そういった意味では安心して作業できました。自分たちが完全にファン目線で、「こういうものが見られれば楽しいだろう」という視点でディレクションしていって、それをプレゼンしていった。それで問題ないよといわれたものが結果的に形になったんです。

――外側の目線で作っているからファンからしても面白いものになったのかもしれないですね。正直、行ってみる前はもっと味が薄いものを想像していました。

 こういう仕事って、どこまで凝れるかっていう作り込みの部分が一番楽しいんですよね。自分たちが楽しんで作ればいいものができるっていうのはまず間違いないです。予算的に赤字になるのはまずいですけど、いいものを作るためにそれ以外にできる努力は相当してます。使えるパーツを入手したりとか、そういう数字に置き換えられないところにだいぶ手がかかってる。全部セットの費用に乗っかってくると大変なことになっちゃうので……。そのへんはあえて「自分たちが好きな世界を作るんだから、自分たちでやっちゃおう!」というところで走りきりましたね。だからもう、ほぼ愛情ですよ。

 『HiGH&LOW』は自分たちの番組じゃないですけど、愛情を込められるだけの内容があるコンテンツだったので。映画のスタッフをリスペクトして、オマージュとして要素を再解釈させてもらった感じですね。だからいろんなとこに信号機とか付いてますけど、「なんで信号機なの?」っていわれても「だって付けたいじゃん!」としか言えない(笑)。でも大事なのはそういうことなんじゃないかと思ってます。

前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る