電車やラジオで「借金の過払い金を取り戻せる」という弁護士事務所の広告を見聞きしたことはないだろうか。「借金が減額される」「借金が貯金になる」と聞くと、借りたお金が返ってくるなんて、そんなうまい話があるわけないと眉をひそめたくなるのだが、弁護士がうその広告を堂々と出すとも考えにくい。実際あの広告は何を宣伝しているのだろうか。
疑問の答えが、国民生活センターが発行する「2018年版くらしの豆知識」に掲載されていた。そもそも「過払い金」が発生する仕組みと、それを取り戻す方法について、弁護士事務所に話を聞いた。
過払い金とは、払いすぎたお金のこと
国民生活センターによれば「利息制限法の上限利率(15〜20%)を超える利息を支払っていた場合には、取り戻せる可能性がある」そうだ。過払い金とは「払いすぎたお金」のこと。法律の上限を超える利息で借金契約をしていたときに過払い金が発生する。
法律のすきまに生まれた「グレーゾーン金利」
なぜ、法律の制限を超える利息での貸し付けが行われていたのか。2010年以前、借金の利息に関する法律は「利息制限法」と「出資法」の2つが存在していたことに起因する。
利息制限法の上限は借りる金額で異なるものの、金利は最高で20%までしか認められていなかった。これに対し、出資法は29.2%までを認めていた。この2つの法に挟まれた金利は「グレーゾーン金利」と呼ばれていた。この状況下、多くの貸金業者は29.2%に近い金利でお金を貸していたのである。
最高裁でグレーゾーン金利が否定される
ところが、2006年1月にこのグレーゾーン金利を事実上否定する最高裁判決が出た。利息制限法(15〜20%)を超える貸し付けは無効となり、これより高い金利で借りていれば、それだけ利息分を払いすぎていると判断されるようになった。
ちなみに、この判決後の2006年12月、法律が改正されグレーゾーン金利は撤廃された。改正法の施行日は2010年6月18日だったため、これ以後の借金では、この過払い金は発生しない。
弁護士はどんな仕事をしているのか
過払い金に詳しい北後弁護士(西新宿法律事務所)に実際に借金が減ることがあるのか聞いてみた。
過払いの可能性がある場合、貸金業者に取り引きの履歴を開示させ、それを元に「ひき直し計算」を行う。計算の結果、過払いがあれば、業者と任意交渉したり、裁判を起こしたりする。業者との交渉で納得できなかった場合に、裁判になるケースが多いそうだ。
過払い金といっても、実務ではそう単純なものではない。例えば、返済終了から10年で時効となり過払い金は請求できなくなるのだが、返済終了後に新たに借り入れをしている場合、時効の起算点がどこになるのかなど、交渉する上での論点は多岐にのぼるそうだ。「必ず」全額が返ってくるとは言い切れないが、借金が減ったり、支払いすぎた分が返金されたりすることは実際あるようだ。
借金返済に困っていたら
借金問題に悩んでいる場合、もし過払い金がなかったとしても、他の借金解決の方法もある。債務整理の手続きには、「任意整理」「個人再生」「特定調停」「自己破産・免責」の4つがあるが、どれが適しているかはケースバイケース。消費生活センター(電話番号188)、金融庁財務局、各地の弁護士会の一部では、無料相談をやっている。少しでも早く専門家に相談をすることが大切だ。
消費生活センターでは常設の窓口でも多重債務相談を受け付けているが、別途特別の無料相談会を実施していることもある。また、弁護士会の多重債務の無料相談は、地域ごとに実施の有無が異なる。各地の弁護士会のWebサイトで確認してほしい。
(高橋ホイコ)
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