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統計学で分かる「選挙の『当確』がめちゃくちゃ早く出てしまう理由」

いくらなんでも開票直後に分かるのは早すぎると思いませんか?

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 10月22日の投開票により、衆議院選挙が幕を閉じました。

 開票の日にはあらゆるテレビ局が特番を組み、選挙結果を逐一報告しますが、いつも不思議に思うのは、開票直後に「当確(当選確実)」の報が出るのは、さすがに早すぎないかということ。

 わずか数分間で、数万とある票全てを確認できるわけがありません。それでもなお「○○さんが当選確実です!」といえるのはなぜなのでしょうか。そこには誰かの勘でも下馬評でもない、れっきとした裏付けがあります。

 当選が確実ということは、ある候補者への票が過半数を占めることが確実ということ。

 例えば、ある候補者の全体での得票率が60%だったとしましょう。票が全部で1000票投じられたとすれば、600票入っていることになります。この場合、得票数が半数を超えているので、もちろん当選します。

 さてここで、全ての票がしっかり混ざっていたとします。ランダムに100票調べた場合、57票だったり62票だったりと多少のズレはあるかもしれませんが、その候補者への票はおよそ60票(100票の60%)出てくるはずです。

 しかし、調べるのが10票だけだったら、5票や7票という結果になるかもしれません。調査数が少なくても全数での値に近づくことはできますが、割合的には50%や70%に振れてしまいます。

 ここから以下のようなことが分かります。

  • 「開いて調べた割合」は「真の得票率」に近い
  • そのブレ(大きく外れる確率)は開く票が増えるほど小さくなる

本当の得票率を60%としたとき、10票、50票、100票開けた時点での得票率の確率分布。確率なのに1を超える理由は高校数学の範囲を超えるので割愛

 先ほど述べた1000票中600票という前提を思い出してください。1000票全てを確認すれば、得票率が60%であることが確実に分かります。しかし、最初の10票を開いた時点では、まだ得票率が40%であるかのように見えてしまう可能性もそれなりにあり、50票開けるとその確率が半分以下に。100票開けたころにはほとんどゼロになります。

 グラフ「開票中の得票率の確率分布」ではこのようなことを曲線で表しており、票を開ければ開けるほど、その時点での得票率が、真の値である60%に近づいていくということが一目で分かります。

 何票か開けてみたときの得票率を横軸、その得票率になる確率を縦軸にとったとき、投票総数が多い場合、グラフはきれいな山型を描くとされています(正規分布)。

 開ける票が増えれば増えるほど曲線で描かれた山は高くなっていきます。そうすると、「本当の得票率」に合致する確率は上がり、大きく外れる確率は下がっていきます。

 さて、話が難しくなってしまうので細かい計算過程は省きますが、統計学でこの正規分布を使うとおもしろいことが分かります。


横軸がn(開けた票)、縦軸がr(途中の得票数)。nが大きいほど判定ラインが下がる

 全1000票のうち100票だけ開き、Aさんが60票を獲得していた場合、同氏が当選する(つまり過半数の票を得る)確率は97.5%。また、票の総数がもっと多く、1万、10万だったとしても、100票開けた時点で60票取っていれば「当選確実」ということができます

 100票見るだけでいいなら、開票者が10人もいれば1人あたり10票で完了します。実際に当確を出す各報道機関が、このような判定基準を使っているかどうかは分かりませんが、大まかな理屈は変わらないはず。国政選挙ほどの規模でも極めて短時間で当確が出てしまう背景には、統計学的な根拠があるのです。

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