今あなたが読んでいるこの文章は、おそらく左から右に進む横書きで書かれていることでしょう。しかし、かつての日本では、右から左に読む横書きが使われていました。縦書きも横書きも左右の進み方が同じだったのです。
では、どうして横書きの向きが変わったのでしょうか。順を追って、1つ1つ疑問を解決していきましょう。
縦書きはなぜ「右→左」?
時代をさかのぼると、日本語には縦書きしかなかった時代があります。これが、中国語および漢字の影響だ、というのは容易に想像がつくでしょう。漢字は本来、縦書きで用いるための形をしている、とされています。
では、なぜ縦書きは右から左に進むのでしょうか。この理由は明確には分かっていませんが、有力な説の1つに「巻物に文字を書いていたから」というものがあります。
右利きの人なら、巻物を読むとき、左手で巻かれている部分を持ち、右手で引っ張り出すのが自然でしょう。この場合、右から左に文章が書かれているとスムーズに読めます。書くときも右手に筆を持ちながら、左手で紙をずらしていくことになるため、左側に余裕がある必要がありますよね。
横書きはなぜ、縦書きと反対の「左→右」?
前述の通り、かつての日本では右から左に読む横書きが使われていました。これは縦書きの書き方にならったものです。
では、左から右に進む横書きは、いつ生まれたのでしょうか。それは、日本人が西洋の言語に触れた江戸〜明治期。左から右に読む横書きの日本語が初めて使われたのは、外国語の辞書だったとされています。つまり、横書きの向きの違いは、影響を受けた文化の違いに由来していたのです。
ちなみに、大正〜昭和初期は、日本古来の「右→左」と西洋渡来の「左→右」が混在していた時期。当時の東京朝日新聞を見ると、見出しは「右→左」の横書きで、今とは反対向きでした。また、10円紙幣にも「行銀本日」と印刷されているのですが、アルファベット表記の「NIPPON」は西洋の横書きと同じ書き方になっています。
ちなみに、「横書きはどちらから書くか」という問題は、終戦とともに終結。例えば、読売新聞は1946年1月1日から、見出しを「右→左」から、われわれ現代人にはおなじみの「左→右」に変えています。
参考文献
屋名池誠 『横書き登場』 岩波書店、2003年
参考記事
日本語が縦書きから横書きになるまで(前篇)(WEDGE Infinity)
気がつくと手が真っ黒…どうして縦書きの文字は右から書くの?(進路のミカタニュース)
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