「誕」という字を使った表現を思い出してみてください。「誕生」「生誕」「降誕」「聖誕」「爆誕」など、「生まれる」という意味で使う熟語が頭に浮かぶはずです。
では、「誕る」はどうでしょうか?
意外なことに、読みは「誕(いつわ)る」で、「うそをつく」という意味になってしまいます。
「誕る」って何と読む?
「誕」を漢和辞典を引いてみましょう。すると、大きく分けて3つの意味があることが分かります。
- いつわる、あざむく
- でたらめ、ほしいまま
- うまれる
最後の「うまれる」という意味でよく使われており、残りの2つは、なじみがありませんよね。しかし、実はもともとの意味は1.や2.で、3.は後から生まれたものなのです。
「誕」という字を分解すると、「言」と「延」。「言葉」を事実よりも「のばす」、つまり大げさに言う、うそをつくという意味を表す漢字でした。
「誕生」の誕生
では、このようにあまり良い意味ではない「誕」が、現在のめでたい意味になったのはなぜでしょうか? そのルーツは、漢詩にあります。
誕彌厥月 先生如達
※誕(ここ)に厥(そ)の月を彌(を)へ 先づ生まるること達の如し
これは、かつて教養とされた書物「詩経」の詩の一部で、「月が満ち、初産は羊のように安産だった」という内容です。ここから、1文字目と6文字目を組み合わせた「誕生」という表現が生まれ、「誕」が「うまれる」という意味で使われるようになったとされています。
なんとも不思議なのは、たった1つの詩から「誕」という漢字の使い方が変わってしまい、それが今日まで続いているということ。もし「詩経」が無かったら、かつて人気を博したテレビ番組「スター誕生!」はなんと呼ばれていたのでしょうか。例えば、「スター生まれる!」とか? ……うーん、何だかしっくり来ないなあ。
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