子どもはサンタクロースからのプレゼント、大きくなったら恋人や家族との時間に心を弾ませるクリスマス。多くの人にとっては毎年恒例の「冬の風物詩」となっていますが、元来はキリスト教に由来する行事です。仏教など別の宗教を信仰している家庭では祝いにくいのでは?
とはいえ、カレンダーに最初から「クリスマス」の5文字が印刷されているような時代です。「世間がクリスマスムードのなか、仲間に加われないのはさすがに寂しい」と感じる人もいるかもしれません。今回は「本家クリスマスの代わりに楽しめる“仏教版クリスマス”は不可能なのか」考えてみました。
そもそもクリスマスって何のお祝い?
仏教版クリスマスの可能性について考える前に、まずはキリスト教のクリスマスをおさらい。
クリスマスは、イエス・キリストの降誕(誕生のこと)を祝う行事。要するに、キリストの誕生日……と言い切りたいところですが、キリストが降誕した日は新約聖書に記されておらず、正確な誕生日は分からないようです。
ですが、宗教行事としてクリスマスをお祝いする文化は、欧米を中心とするキリスト教圏の各国で、それぞれ独自に育まれていきました。日本でも戦前にはすでに、サンタクロースが子どもにプレゼントを渡す習慣が浸透していたようです。
仏教で祝う誕生日はいつ?
さて、本題に移りましょう。キリスト教のクリスマスに相当する仏教の出来事はあるのでしょうか。
キリスト教がキリストによって生まれたように、仏教にも釈迦(しゃか)という開祖がいます。釈迦の誕生日もキリスト同様、はっきりしたことは分かりませんが、その誕生を祝う「灌仏会」(かんぶつえ、「花祭り」ともいう)という仏教行事が存在します。
灌仏会では、花で飾られた誕生仏(生誕直後の釈迦を彫った仏像。右手を天に、左手を地に指している)に甘茶をかけたり、甘茶を飲んだりして釈迦の誕生を祝います。
日付が決まっている点もクリスマスと同じ。旧暦の4月8日に準じますが、日本では現行暦(グレゴリオ暦)の4月8日に行われることが多くなっています。
「仏教版クリスマスは灌仏会」といえそうですが……まったく解決できていない致命的な問題が1つあります。それは「灌仏会を祝ったところで、やっぱり皆一緒にクリスマスを楽しむことはできない」ということ。4月じゃなくて、12月に盛り上がれないとダメなんです!
クリスマス付近の仏教イベントを探せ
クリスマス付近に、仏教関連の出来事はないのでしょうか。
調べてみたところ、12月24日クリスマス・イヴ(グレゴリオ暦)に、沢庵宗彭(たくあんそうほう)が生まれています。漬物の「たくあん」の由来になった人物ですが、優れた僧としても著名で、歴史上重要な紫衣事件にもキーパーソンとして関わっています。
※紫衣事件:江戸時代初期、後水尾天皇が僧侶に紫衣(僧や尼の尊さを表すものとされていた)の着用許可を出したことから、朝廷と幕府が対立。沢庵は朝廷に味方し、流罪に処された
仏教界の偉人である沢庵和尚の誕生日を祝えば、世間のクリスマスムードに違和感なく溶け込めるはずです。ケーキと七面鳥にたくあんを添えて、皆と一緒に祝えばいい……のかな?
追記(2017年12月25日11時10分)
記事公開後、読者の方から「12月25日はもともと『ミトラ教におけるミトラ神の誕生日で、それが後にキリスト教に取り入れられたものだ』というコメントをいただきました。
さらにミトラから「マイトレーヤ」(慈悲深い者)という言葉ができ、これは仏教に取り入れられて「弥勒(菩薩)」になったとのこと。つまり、ミトラと弥勒菩薩は起源を同じくする神様だということですね。
この考え方からすると、12月25日は弥勒菩薩の誕生日とも言うことができそうです。これなら仏教徒の皆さまも、安心してお祝いできますね。情報提供ありがとうございました!
- 参考リンク:クリスマス(そこはかとなく。)
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