――最新号を初めて見たとき、「箱? だけど雑誌なの!?」と驚きました。なぜ今回はこのような表紙のデザインになったのでしょうか。
津田:『デザインのひきだし』では毎号、特集や取り上げる記事内容に合わせて表紙を作っています。今号は「箱・袋・シール・包装紙・紙タグ」など“梱包・包装に使う紙もの・刷りもの”の特集となっているので、「箱」っぽい表紙にしようと決めました。
――雑誌も梱包物という新しい概念ですね。箱のように見える表紙のデザインはどういう手法で作られているのでしょうか。
津田:本体(中ページ)とは別に、表紙となる箱パーツを作り、それをでき上がっている本体と合体させていいます。「箱」といっても、一般的な箱のように1枚の紙を型抜きして折ったり、のり付けしたりして組み立てているものではなく、原料であるパルプを金型を使って成形してつくる「パルプモールド」という手法でつくっています。
――パルプモールドとは。
津田:紙製の卵パックや、ダンボールに入ったりんごの下に敷いてあるお椀状のシートです。家電の輸送時の四隅の緩衝材としてよく使われています。私はこの質感がすごく好きで、いつか自分でもオリジナルのパルプモールドを作ってみたいと思っていました。今回、栗原紙材さんに多大なるご協力をいただいて、この表紙が作れたことは本当にうれしく思っています。
――素材はダンボールではなかったんですね。津田さんのTwitter(@tsudajunko)では、「箱に本と付録を入れた状態で雑誌を流通させるはことが難しい」と言うようなお話もありましたが。
津田:2009年に発行した『デザインのひきだし7』では、本誌と付録をダンボール箱に入れた仕様にしたのですが、その際に、取次先の1社から「こうした箱に入れた本は『書籍コード』では流通できない(※)」といわれてしまい、弊社内が大混乱となりました。幸い他の複数の取引先で流通させることができましたが、以降とにかく全ての取次先から「流通OK」をもらえる仕様にすることが、自分の中での命題のひとつになりました。
(※)編集部注:日本図書コード管理センターに問い合わせたところ、書籍の形状などによって取次先の事情により、流通を断られるケースは考えられるが、厳密に「箱に付録と書籍を入れた状態で流通させてはいけない」と決められているわけではないとのことでした。
印刷やデザインをテーマに「目で見て、手触りで読んで」と、さまざまなアイデアで読者を楽しませてくれる『デザインのひきだし33』。紹介されている手法で制作した場合のコストや、少数ロットを請け負ってくれる業者なども紹介しているので興味のある方は手に取ってみてはいかがでしょうか。なおネットでは売り切れが相次いでいますが、書店ではまだ取り扱いのあるお店が多いようです。
(戌田港)
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