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警察庁が「仮想通貨マイニングツール」に注意喚起 「法的根拠が示されていない」と批判も(2/2 ページ)

法的な線引きがあいまいなままに摘発が行われる状況に批判や懸念の声が。

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若林弁護士:
 本件では、当該Webサイトを閲覧した人に対して、電子計算機を使用するに際して、マイニングツール「Coinhive」が設置されていることを明示していないため、閲覧者は自己の使用するPCなどがマイニングに使用されることを認識していないと考えられます。そのため、その意図に反する動作をさせるべき指令を与える電磁的記録であるとはいえそうです。

 では、その指令は「不正な」指令なのでしょうか? 何をもって、「不正な」指令といえるかにつき、現状具体的な指針はありません。

 立案担当者によると、「不正な」指令であるかどうかは、その機能を踏まえ、社会的に許容し得るものであるかといった観点から判断するものだとされています。

 「不正指令電磁的記録に関する罪」がコンピュータウイルスを念頭においたものであることからすれば、Webサイト閲覧者が使用したPCなどの機能を害するものだとか、PC内の個人情報が集められるものだとかそのような機能を有する指令が典型的な「不正な」指令だといえます。このようなコンピュータウィルスが社会的に許容し得るものでないのは明らかでしょう。

 本件が裁判になれば、その指令が、社会通念上許容できるようなものかどうかが、その機能のほか、Webサイト閲覧者に与える不利益の大きさ、Webサイト閲覧者がその不利益を予測できるか、回避できるかなどの観点も加味して判断されることになるのではないでしょうか。

 今回問題になったマイニングツール「Coinhive」では、Webサイト閲覧者の使用するPCなどのCPUを使用することが問題視されているようですが、このような機能が社会的に許容し得ない「不正な」指令であって、違法なものだとの捜査機関の判断には疑問が残ります。

 マイニングツール「Coinhive」は、コンピュータウイルスのように閲覧者の使用するPCなどの機能を害したり、個人情報を流出させたりなどの機能はないからです。CPUが使用されるだけでは閲覧者に与える不利益は大きいものだとはいえないのではないでしょうか。

 また、本件が違法なものであるとされれば、サイトを閲覧した際に閲覧者のPCなどのCPUを閲覧者の意図にそわずに使用するようなものは他にも多くありそうですが、それら全てが違法になってしまう可能性があります。Web広告などがその一例でしょう。

 いずれにしろ、何が「不正な」指令にあたるかの基準が不明確なままでは、捜査機関による恣意的な捜査が可能になってしまい、仮想通貨やブロックチェーン等の先端技術の開発を萎縮させてしまいかねないため、しっかりとした基準を設け明示していくことが必要だと思います。


「解釈がめちゃくちゃアバウト」摘発を受けた側からも懸念

 今回摘発を受けた1人、モロさんも12日に自身のブログで一連の出来事を報告していますが、その中で、警察から「事前に許可(もしくは予感させること)なく他人のPCを動作させたらアウト」という説明を受けたとしており、「解釈がめちゃくちゃアバウト」と指摘。このようなアバウトさをほぼ警察の独断で裁けることになってしまうと懸念を示しています。

 モロさんは罰金10万円の略式命令を受けましたが、異議申し立ての裁判を行うと表明。おーぷん2ちゃんねるなどで知られる矢野さとるさんがモロさんをCoinhiveで支援するサービスを立ちあげるなど、支援の動きが起きています。



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