14歳の娘と、8年ぶりにプリキュア映画を見に行ったお話:サラリーマン、プリキュアを語る(2/2 ページ)
2018年のプリキュア映画は、女子中学生をも劇場に呼び戻す力がありました。
娘とプリキュアの思い出
娘が生まれたときはまだプリキュアは放送していなくて、
娘が1歳半のときだったかな。プリキュア初めての映画が公開されて、そのときは自分1人で見に行って、
「もうちょっと娘が大きかったら一緒に見れたのになー」って思っていて、
もちろんそのときはプリキュアがこんなにも続くとは思ってもいなくて、
それでもプリキュアはずっとずっと続いていてくれて、
娘は、「HUGっと!プリキュア」のはぐたんのように、はいはいができるようになり、歩くことができるようになり、しゃべることができるようになり、パパとママとお話することができるようになり、どんどん成長していって、
いつのまにか一緒にテレビでプリキュアを見るようになって、
「これならば、すぐにプリキュアの映画を一緒に見られるようになるかも」って思ってたら、
本当にその夢はかなって、
毎年、プリキュアを映画館で2人で見るようになって、
いつもポップコーンはLサイズのカップを、2人のシートの間に置いて食べて、
ポップコーンの味は「塩味とキャラメル味のミックス味」が大好きで、いつもそれを頼んで、
「パパ、ポップコーン食べすぎ」っていつも怒られて。
一生懸命、ミラクルライトでプリキュアを応援して、
そしたらプリキュアはいつも勝って、
ニッコニコで手をつないで映画館から出て、
映画を見終わったらプリキュアのガチャポンをやって、
映画の日は、特別に3回ガチャポンをやって。
それはとってもとっても幸せな時間で、
それはプリキュア映画が続く限りずっと続くのだろうと勝手に思っていて、
あるとき、娘が「もう映画は行かない」と言い出したときには、
ほんのちょっぴりそんな予感はしてたのだけど、
当然のように買ってあった「親子前売りチケット」は半分しか使うことができなくって、
「そうかープリキュアは卒業かー」と平静を装いつつ、
「まあ、1人で見るのも気楽だよね」と強がって劇場に行くと、
前の席の親子連れがLサイズのポップコーンを食べていて、
それがとってもうらやましくなってきて、
やっぱり寂しくなってきて、
ちょうどその映画は「映画スイートプリキュア♪ とりもどせ! 心がつなぐ奇跡のメロディ♪」で、
それは「父と娘の物語」で、
なんだか、全然関係ない親子の会話のところで泣けてきちゃって、
きっと、周りには不思議がられていたんだろうなって思います。
その後は、プリキュア映画をまた1人で見るようになって、
7年間、1人でプリキュア映画を見てきて、
その間にも娘はどんどん成長していって
中学校に入学して、なんとなく父娘関係もギクシャクしてきて、
会話とかも少なくなってきて、
それでも僕は頑張って生きてきて、娘も頑張って生きてきて、
その間もプリキュアはずっと続いていてくれて、
2018年になって、
2018年はプリキュア15周年で盛り上がっていて、
「映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュアオールスターズメモリーズ」が公開されて、
これだけのお祭り映画なんだから「娘が見に行きたい、とか言い出さないかな」って思ってたら、
本当にその奇跡は起きて、
こうしてまた娘と一緒に、プリキュアの映画を見ることができました。
8年前の娘は、精いっぱいの声で「プリキュアー」と叫んでミラクルライトを振っていました。さすがに今はもう振ることはないだろうな、と思いながらも隣を見ると、ひざの上でそっとミラクルライトを点灯させていました。
8年前の娘の姿と、今の娘の姿が、ミラクルライトの小さな明かりでつながって、楽しかったことも、つらかったことも、うれしかったことも、娘と過ごしたたくさんの思い出が一気によみがえり、涙をこらえきることが出来ませんでした。
娘と映画を見なくなってからの「8年分の自分の強がり」が一気に押し寄せ、こんな奇跡が起きたこと、そんな機会を作ってくれたこの映画に、そしてずっと続いてくれたプリキュアに、ずっと見守ってくれていた妻に、そして一緒に映画を見ている娘に、ただただ「ありがとう」って思って泣いていました。
「あのときはかけ算すら出来なかった娘が、今では連立方程式だって簡単に解けるようになりました。すごいでしょ! ウチの娘。自慢の娘なんです」
なぜだか分からなかったのですが、そんな娘自慢をプリキュアにしていました。
キュアパインの思い出
娘は「フレッシュプリキュア!」のキュアパインが大好きで、クリスマスに買った「フレッシュプリキュア!」の武器の玩具「キュアスティック」は、いつもキュアパインの専用武器パインフルートにしていました。
パインフルートの玩具でずっとフルートを吹くまねをして遊んでいた娘は、今、中学校の吹奏楽部で本物のフルートを吹いています。
あのときのプリキュアが、キュアパインの勇姿が、優しさが、今の娘の夢にほんの少しでも影響を与えていたのかな、って思うと、娘がプリキュアと出会えたことには、とても大きな意味があったのだと思います。
そして、そんな思いが通じたのでしょう。
スクリーンの中ではプリキュアが見事に復活します。
8年ぶりに娘と一緒に見たキュアパインは、当時と全く同じ姿です。一生懸命走ってキュアパッションからハピネスリーフを受け取り、プレアーリーフをセットし、キュアベリーへとつないでいました。
何も変わっていません。「フレッシュプリキュア!」4人で完成させた「ラッキークローバーグランドフィナーレ」は「フレッシュプリキュア!」の最大の決め技です。大きな四角いクッションに乗ってラッキークローバーグランドフィナーレごっこをしていたあのときの娘。
スクリーンの中のキュアパインはあのときと同じ姿。グランドフィナーレごっこをしたクッションもあのときと同じ大きさ。
娘だけが、どんどん、どんどん大きくなっていくのです。どんどん、どんどん僕から離れていくのです。
娘にとってのキュアパインは憧れのお姉さんだったのに、今ではキュアパインの年齢を追い越してしまいました。
もちろんそれはとても良いことなのですけど、成長していく娘と比べ何も変わっていない自分が少しだけ寂しくなってまた泣けてきて、それでも涙をこらえ、なんとか頑張って一生懸命生きてきて娘がここまで大きくなったこと、そしてこの場所まで来ることができたことを、今日だけは、少しだけは、自分を褒めて良いのじゃないかって思ったのです。
「映画に行って良かった。パインちゃんにまた会えた」
映画が終わって(もう手をつなぐことはないのですけど)一緒に劇場を後にします。
「最近のプリキュアってお化粧するんだ……。あのお化粧する変身、めちゃくちゃかわいい」。
「小さくなったプリキュア超かわいかった!」。
「パインちゃん出番少なくない? でもちっちゃいブロッサムとマリン、かわいかった!」。
「キュアマシェリ? あの小さい子。めっちゃかわいい。好き」。
隣で真っ赤に目を腫らしたパパのことなんかまったく気にせずに、娘が8年ぶりのプリキュア映画の感想を言っています(娘の感想の主体は“かわいい”なのです)。
映画館を出た先ではカプセルトイの機械が視界に入ります。
お子様連れで映画館に行ったことのある人ならば分かると思いますが、「映画の行き帰りの導線」には巧妙にカプセルトイの機械が置いてあって、子どもはそこに吸い寄せられていくじゃないですか。
娘が小さいときもそうでした。カプセルトイが大好きで、「買って良い」ってなったら、いつもいつも「どれにしようか」とずっと悩んでいました。
そうだ。久しぶりにやろう。昔のように。
娘は「いや、別にいらないよー」などと言うのですが、今回はパパがどうしてもやりたかったのです。
当時は散々娘のワガママを聞いてきたのですから、今日くらいはパパのワガママを聞いてもらいました。
200円を入れて出たのは「キュアエール」。映画でも大活躍した元気のプリキュアです。
これを見た娘。
「あ! まだ昔のやつ、家にあるかも!」と言っていました。
家に帰って部屋を探すと出てきたのはまさに娘が大好きだった「キュアパイン」。
キュアパインは、娘の部屋でずっと娘を見守ってくれていました。
「うわ、なつかしーーこういうのたくさん集めてたよねーー」などとおどけている娘。
「いいよ、これパパにあげる」と、今回劇場でもらったミラクルライトとともにこれらはパパがもらい受けることになりました。
そう。娘にとってのプリキュアは「子どもの頃に大好きだったアニメ」なのですよね。たまに思い出すことはあるだろうけど、プリキュアに対する思いは当時と同じではないのです(ずっとプリキュアを見続けているパパの方が少数派なのです)。でもパインフルートがフルートに変わったように、確かにプリキュアは娘の心に今でも残っているのだろうなって思っています。
「映画に行って良かった。パインちゃんにまた会えた」。
娘が言った言葉に、全てが集約されている気がしました。
ミラクルライトの奇跡
「映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ」。
僕にもう一度、娘とプリキュア映画を見る機会を与えてくれてありがとうございます。
娘にもう一度、キュアパインの姿を見せてくれてありがとうございます。
僕の心に、ずっと「つっかえていたもの」が取れたような気がしています。
これから先、娘は高校受験も控えているし、その先の人生はもっともっと可能性に満ちた世界が広がっているのだと思います。
娘の人生は娘のものなので、僕はただサポートする事しかできないのですけど、この先、つらいことも楽しいこともいっぱいあると思います。でも最終的には楽しいことの方が上回ってニッコニコで生きていく、そんな人生になるように願っています。
そんな人生を送るのは、これからの厳しい世の中、奇跡的なことなのかもしれません。
でも大丈夫。だって当家にはミラクルライトがあるのだから。ミラクルライトはその名の通り奇跡を起こすものなのです。
いつの日か、娘が人生最大のピンチに陥ったときに、颯爽(さっそう)と娘の元に駆け付けて、今日娘からもらったミラクルライトで応援しようかって思っています。
「がんばれーーー娘ーー」ってぶんぶんミラクルライトを振ってやるのだ。
毎週日曜8時30分より
ABC・テレビ朝日系列にて放送中
(C)ABC-A・東映アニメーション
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