【デメリット】乗客案内の手段とイメージダウンのリスク
一部有料指定席には欠点もあります。前述した混雑の話に通じますが「同列車他車両の混雑度が上がる」です。
Qシートの座席は45人分です。普段の通勤車両ならばつり革、手すりなどの立ち席を含む定員は155人です。混雑率140%とすれば、217人が乗れます。Qシートに乗らない乗客172人分の移動を受け入れる分、他の車両が混みます。
さらに重大な欠点もあります。「乗客案内に人手が掛かる」です。
今はまだ周知段階ですが、Qシート車両には車掌が2人乗車しています。車内のきっぷ販売だけではなく、有料座席とは知らないで乗車する人や、降車専用駅で乗車する人を制止する役割もあります。駅のプラットホームにも駅員や警備員が2〜5人待機しています。Qシートの料金収入よりも「Qシートを維持する人件費」の方が多い印象です。
一方、全車指定席の列車ならば、改札口やプラットホーム階段付近などに近い乗降口だけを空けて、ここで車掌が案内する程度で済みます。扉が一斉に開かないので、一般客も「あ、これはふだんの列車と違う」ということが暗に伝わります。Qシート車両も片側4つある扉のうち、1つだけ開閉すればかなりスムーズかと思われます。
特に懸念するのは「間違って乗車してくる人」への対応です。普通車両だと思って乗車しようとする人に対して、毅然とした態度で制止する必要はあります。しかしどんなに丁寧に対応したとしても「(知らなかったのに)乗ろうとしたら断られた。チェッ」というような不快感が生まれます。本当は「これがQシートか、いいな。快適そうだな。次はチケットを買って乗ってみよう」となってもらいたいのに、敬遠されてしまう原因になりかねません。
これには乗務員の対応だけでは難しいものがあります。ホームドアの告知、乗降扉を限定するなどのさまざまな工夫も必要だと思われます。
筆者は東急田園都市線沿線に住み、既に何度かQシートを利用しています。大井町線の旗の台駅付近で友人が営む飲み屋に行った帰り、ふだんは旗の台からは座れない急行に座って帰れました。
この他、地方取材で疲れて帰宅するとき、東京メトロ大手町駅から半蔵門線に乗って直通できるのに、わざわざ京浜東北線で大井町駅に出てQシートで座って帰ったこともあります。上記の欠点は、筆者が実際に見た印象です。
東急電鉄は、そんな利点と欠点を加味してQシートを導入したはずです。「確実に座れる列車」は、利用者にとってはとてもありがたいサービスです。利用者としては継続してほしい、対象列車を増やしてほしいと思います。
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